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15.たくらみの底

 彼の父親は漫画家だった。こっそり仕事場に忍び込むと、少年ハクダ・イッセイを出迎えてくれるのはいつも夢一杯のストーリーの数々だった。その中で、彼の一番のお気に入りは『ヒロシとロボ太』と題されたものだった。主人公の少年ヒロシと笑いあり涙ありの物語を展開していくロボ太は、ロボットでありながら表情豊かで、さながら人間のようだった。ハクダ少年はそれを読みながら思った。ロボ太のような……人間くさいロボットと友達になりたい……

 それから、ハクダ少年は勉強に励んだ。待っていても、ロボ太のようなロボットに出会えるかは分からない。それなら自分で作れば良い……そう考えた彼は、いつしかロボット工学の道に足を踏み入れていた。二度の浪人を経験したものの、大学にも入った。工学博士号も取得した。アイネス・システムという企業にも入社した。少年の頃思い描いた未来を歩んでいた。しかし、いつしか、ロボ太のことも忘れていた……

 そんなある日、会社に出勤した彼は、自分の開発チームに所属する部下の青年に一枚のスケッチを見せられた。チームが開発したロボット『MGRシリーズ』の新型のデザインを考えてきたらしい……それを見て、ハクダは雷に打たれたような衝撃を受け、そして、遠い昔に見たあのロボットのことを思い出した。円筒状の体の上にちょこんと乗った小さな頭……単一電池のような姿……部下のスケッチはロボ太そっくりだった。


『ロボ太のような、人間くさいロボットと友達になりたい』


 ハクダはスケッチのロボット『MGR−87』の開発、そして、かつての夢を叶えるべく、人工知能プログラムの開発を始めた。会社でチームのメンバーとロボットを造り、家に帰ってはパソコンに向かい、ひたすらモニター上に浮かんだ文字列と格闘する日々……

 そして、MGR−87が完成してから一年後、ハクダはついにそのプログラムを完成させた。MGR−87の方は、既に新型機にそのポジションを奪われていたが、しかし、ハクダにとってそんなことはどうでも良かった。お払い箱にされたその電池のようなロボットを家に連れ帰ると、ハクダはついに夢を叶えた……

「お前の名前はライアンだ。」

 自分が好きな映画スターの名前をとって、彼はロボットにそう名付けた。


 …………

「夢……?」

 暗い部屋の中で、ハクダは目を覚ました。そこはアイネス・システムの地下にある一室。ヒサエからフウマに引き渡された後、彼はこの部屋に監禁され、毎日のように尋問をされていた。人工知能プログラムについて……今日もまた殴られ、蹴られるのか……そんなことを思うと、ハクダは溜息をついた。

「ん?」

 しかしその時、ハクダの耳は外から聞こえてくる物音を聞いた。遠くの方で、ドタバタと誰かが騒いでいるようだった……


「銀河治安維持機構調査官18351890号だ。これより、この施設を調査させてもらう。」

 アイネス・システムのエントランスに大声が響いた。仕事をしていた社員達は「何事か?」とそちらを振り返る。そこにはプラチナ色のアーマーが輝いていた。

「あの〜……」

 突然のことで驚いたが、しかし仕事なので、受付嬢をしていたOLは恐る恐るTMの方へ近付いた。そんな彼女の目の前に、TMは一枚の書類を提示した。『捜査令状』と書かれている……

「この会社、アイネス・システムと社長のフウマ・ジンには『略取の罪』の容疑がかけられている。」

 それだけ言うと、TMは受付嬢の横をすり抜け、ズカズカと建物の奥へ踏み入っていった。

「それじゃあ、私達もハクダさんを探しましょう。」

 TMを見送ると、ミホはブルボンとライアンに向かって言った。しかし、ブルボンは無理矢理連れてこられただけに、いまいちやる気が起きない。

「探すと言ってもな……この会社はかなり広そうだぞ? 隅から隅まで探すとしたら一苦労だ。私はその辺で適当に時間を潰しているから、貴様らだけで探してこい。」

「何言ってるんですか!」

 服を掴んで、ミホは立ち去ろうとするブルボンを引き止めた。

「悪者がいるんですよ? 私とライアン君だけじゃ危ないじゃないですか! 陛下も一緒に来て、私達を守ってください!」

「なぜこの皇帝が貴様らのような下僕を守らねばならんのだ。冗談じゃない!」

 ミホの腕を振り払い、ブルボンは出口に向かって歩きだした。しかし、数歩目を踏み出した時、ブルボンは後から何かに衝突され、思い切り床に転んでしまった。見ると、そこにはライアンの姿があった。ロボットなのでその表情は変わらないが、しかし、胴体から伸び出たドリルの回転する甲高い音が、明確な怒りを匂わせていた。

「逃ゲルナ。一緒ニ来イ、コノクズ野郎。」

「は、はい……」

 鼻の数センチ先で回るドリルの先端を見つめながら、ブルボンは仕方なくミホ達に付いて行くことにした。

 しかし、そうは言っても広いアイネス・システム。そう簡単にハクダを見つけることはできない。もっとも、人目に付くような所にいるはずはなかったが……

「陛下、悪者が人を監禁しそうな所って分かりませんか?」

 ゴミ箱の中を覗きこみながらミホは聞いた。

「なぜ私に聞く……」

「いや、陛下も悪者だから、同じ悪者の考えなら分かるかな〜って。」

 そこまで言うと、ミホの頭をゲンコツが襲った。頭を押さえながら見ると、目の前でブルボンが拳を握り締めていた。

「まったく、貴様は最近この皇帝に対して失言が多いぞ。」

 しかし、ブルボンは拳を下ろすと言葉を続けた。

「そうだな……私もマグニテの皇帝だった頃は良く人を監禁したが……」

「ひどい皇帝ですね。だからクーデター起されるんですよ。」

「うるさい、黙れ。……まあ、何だ? まず人が出入りできるような場所には監禁しなかった。監禁用の秘密の施設を作らせてな、そこにぶち込んでおくんだ。」

「秘密の施設か……」

 ブルボンの言葉を聞くと、ミホは考えた。そうすると、会社のオフィスや会議室として機能している場所はまず除外される……物置やトイレも、人の出入りは自由だ……ミホは建物の見取り図に目を落とした。用途不明の部屋がないか……そうやって探していくと、ミホは奇妙なことに気が付いた。見取り図の中に、僅かだが正方形の空白があるのだ。そして、それは一階、二階、三階……と、どの階にも同じように存在した。まるで、何かが建物を貫いているかのように……

「でかい柱か何かじゃないのか?」

「にしては、この空白は広すぎるような気がします……」

 ミホは、それが何なのか知るべく、もう一度見取り図を凝視した。一階からずっと見ていく……そして、最上階の図を見ると、その空白は、ちょうど社長室の隣に位置していた。


『社長は人口知能プログラムを悪用しようとしている……』


 ミホの頭に、ライアンから聞いたハクダの言葉が響いた。ひょっとしたら、この空白がフウマの企みと何か関係あるのかもしれない……そう考えて、ミホは社長室に向かうことにした。


 …………

「そうか……分かった。」

 フウマはそう言って、受話器を置いた。MGR−87を回収するために送った部下の一人が捕まったと聞いていたので、いずれは来るだろうと思っていたが、しかし、昨日の今日でさっそく捜査のメスが入るとは……電話で報告を受け、彼は大きく溜息をついた。銀河治安維持機構の調査官……まだこの社長室には来ていないが、あれが来たら何と言って追い帰そうか……フウマはそれを考えつつ、部屋の隅にある本棚を見つめた。


「おい、小悪党! 入るぞ!」


 それは突然の言葉だった。同時に社長室の扉が開く……来たか……フウマはその招かれざる客の方を見た。

「ん? 君達は……」

 しかし、そこにあったのはフウマの予想とは違う姿をしたものだった。プラチナ色の輝きは無く、代わりに、長身の外国人、十五・六歳の少女、そして、電池のような姿をしたロボットがそこにいた。MGR−87と、そして部下からの報告にあった、その同居人二人だとフウマはすぐに分かった。そして、同時に彼は閃いた……

「ハクダさんはどこですか?」

 ミホがずばり聞く。

「あぁ、ハクダ君の知り合いかね? そうか、彼を心配して探しに来たのか……」

「良いから吐け。私はこんな場所には一分も長くいたくないのだ。」

「分かった、分かった……ハクダ君なら元気だよ。会いたいかね?」

 フウマはそう言って椅子から立ち上がると、三人の返事を待たずに本棚に歩み寄り、そして、そこに並べられているうちの一冊を奥の方へ押しこんだ。すると、ガタンと音がして、本棚が回転し、そこにエレベーターが現れた。

「彼なら地下の秘密工場にいるよ。このエレベーターでしか行けない……どうした? 彼に会いたいなら一緒に行こう。」

 手招きをするフウマ。あからさまに怪しかったが、しかし、ミホ達は意を決した。が、ブルボンだけは背を向ける。

「後は任せたぞ……」

「オ前モ来イ!」


 社長室に、ドリルの回転音が響いた……



続く




お久しぶりです。

企画小説も書きあげたので、ミホを再開しました。

ってことで……


なんか、やる気が出ません……

すごくダルイんです。

あぁ、もう〜ダルイな〜

本当に、だるいなああああああああああ


ぎゃあああああああああああああああ


ってくらいダルイです。

春だからでしょうか?

春はいけませんね。

雪や氷と一緒に脳味噌まで蕩けてしまいます。

これを打開するには……


……桜でも見てこよう。

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