表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/26

10.カントリーロード大激戦

 カシャンカシャンと金属音を響かせながら、そのロボットは突進してきた。そして、その角ばった腕を振りかぶると、ボクサー顔負けの動きで拳を突き出す。

「痛ッ!」

 脚のスネを殴られて、ミホは一瞬、顔をしかめた。


 なぜ、ミホがロボットに殴られなくてはならないのか? 話は二日前にさかのぼる……

 その日、ミホはアマゾノ探偵事務所を訪れていた。以前払えなかった探偵の報酬を支払うためである。と言っても、全額そろった訳ではなく、分割払いにしてもらったうちの一部を支払いにきただけなのだが……

「確かに受け取ったよ。でも、完済はいつになることやらね……」

 ミホから封筒を受け取って、中身を確認すると、ヒサエはタバコの煙を吐きながらそう言った。

「すみません……給料の良いアルバイトがなかなか無くて……」

「フーン……」

 ヒサエは関心無さそうに、また一口タバコを吸ったが、しかしその時、彼女はあることを思い付いた。

「なんなら、うちの事務所でバイトしてみるかい?」

「え?」

「いやね、実は昨日、大口の依頼が入ってね。ボロイ仕事の割りに、報酬がなかなかのもんだったんだよ。その仕事を代わりに引き受けてくれるって言うんなら、あんたらの未払い分はチャラにしてやっても良いんだけど……」

「本当か?」

 ヒサエの言葉を聞くと、それまで隅の方で黙っていたブルボンが、二人の間に割って入ってきた。

「つまり、我がブルボン帝国の領土を返還しても良いと言うのだな?」

「あぁ……仕事さえしてくれりゃあね。」

「そうか、分かった!」

 ブルボンは嬉しそうに笑うと、ミホの背中をバンと押して、ヒサエの方に突き出した。そして、二人の方に背中を向けると、扉の方に向って歩き出した。

「そいつは好きにこき使ってくれ。じゃあな……」

 それだけ言って、ブルボンは扉のノブに手をかけた。しかし次の瞬間、ぬっと後から腕が伸びてきて、ブルボンの首に絡み付き、彼の体を事務所の中に引き戻した。驚いてブルボンが見ると、それはヒサエだった。

「ボロイ仕事だけど、面倒臭い仕事でもあるんだよ。ってことで二人で頼むわ……ブルボンちゃん?」

 そう言って、ヒサエはブルボンの顔にタバコの煙を吹きかけた。


 ミホは車窓から、流れ行く景色を見た。濃淡の様々な緑が、ミホに向って手招きをしているようだった。山、森、広がる田園……暮らしている人には悪いが、『ど田舎』という言葉が最もしっくりくる。そして、ミホを乗せた電車は、そんなど田舎のど真ん中にある駅に停車した。駅員のいない改札をくぐって、切符を回収ボックスに入れて、駅舎を出る。そこで、ミホは一枚の写真を取り出した。ボサボサ頭で無精ひげを生やした、だらしない男が写っている。

「まったく、なんでこの皇帝が、こんなへんぴな所で、こんな小汚い男を探さねばならんのだ……」

 ミホの後から写真を覗きこみながら、ブルボンはブーブーと不満を漏らした。

 二人がヒサエに任された仕事は人探し。写真の男『ハクダ・イッセイ』を見つけることだった。

「この町は、ハクダさんの故郷らしいです。ここにいる確証はないらしいですけど、『とりあえず』ってことみたいですね……」

「無駄足だったら殺すぞ、あの女探偵め……」

「まあまあ、とりあえず、誰かに聞いてみましょうよ。」

 イラついた口調のブルボンをなだめつつ、ミホは周りを見た。しかし、話を聞こうにも……

「ははっ……誰もいないですね……」

「やってられるか! 私は帰るぞ!」

 遂にブルボンは怒り出した。そして、引き止めようとするミホを振り払いながら、来た道を引き返して、駅舎に向ってずんずん歩く。そうやって帰るの帰らないのと二人が揉めていると、その時、駅舎から一人の男が出てきた。

「あ〜……故郷は久しぶりだな……」

 薄暗い駅舎から外に出てくると、男は眩しそうに目を細めながら呟いた。見ると、ボサボサ頭で無精ひげを生やした、だらしない男である……

「あぁ、いた!」

 ミホは写真と男を見比べながら大声を上げた。間違いなく、その男は二人が探している男だった。

「ハクダ・イッセイさんですか?」

「ん? あぁ、俺ぁハクダ・イッセイだ。」

 尋ねると、二人の望んだ答えが返ってきた。

「私達、あなたのことを探してたんですよ!」

 予想外に早く見つけられたことが嬉しく、ミホは興奮気味にそう話した。しかし、そんなミホとは逆に、「探していた」という言葉を聞いたハクダの表情は険しいものへと変わった。

「探してた? 俺を?」

「はい。」

「さては、お前達ぁ組織の刺客だな!」

 終いにはそんな言葉が飛び出した。いきなりのことで、ミホとブルボンは目を点にして固まってしまった。しかし、ハクダはそんなことはお構いなし。背負っていたリュックサックをあさり始めると、中から小さなロボットとラジコンのコントローラーを取り出した。

「行け! バトルロボ!」

 こうして話は冒頭に戻る……ミホは、ハクダの操作するバトルロボに殴りつけられてしまった。しかし、言っても小さなラジコンロボット。殴られても、ダメージなどたかが知れている。どうしたものかと、ミホは、せっせと拳を振るうロボを困った顔で見つめていた。しかしその刹那、ロボは突然横から出てきた手によって鷲掴みにされると、ひょいと持ち上げられてしまった。

「おい、我々は貴様とラジコン遊びをしている暇などない。大人しく、一緒に来るんだ。」

 ブルボンは高圧的な態度でそう言った。しかし、ブルボンの手の中でもがくロボを見ると、ハクダはニヤリと黄ばんだ歯を覗かせて、そして、コントローラーについたボタンを押した。

「馬鹿め、かかったな。」

「なんだと?」

 ブルボンがその言葉の意味を探ろうとした時、突然ロボの体から白いガスが噴射された。すると、ミホとブルボンの目から涙が溢れだす。

「クソ! 催涙ガスか!」

「陛下、それ、早く捨ててください!」

 ゲホゲホと咳をしながら、二人はガスが引くのを待った。しかし、ようやく落ち着いたところで目を開くと、ハクダの姿はもう小さくなっていた。

「逃がすか!」

 二人はその背中を追いかけた。幸い、ハクダの脚はさほど速い訳ではない……

「疲れた。後は任せたぞ。」

「えぇ! 早いですよ、陛下!」

 しかし、ブルボンの体力と根気の無さも負けていない。ブルボンは道端にどっかりと腰を下ろすと、ミホに向って、手をヒラヒラと振って見せた。

「皇帝は汗をかくような仕事はせんのだ。お前はがんばって追え。」

「もう……」

 こうなっては、何を言っても無駄だと言うことは分かっているので、ミホはブツブツ言いつつも、再びハクダを追いかけ始めた。それを見送ると、ブルボンは目の前に広がる田畑や山を眺めながら、大きく息を吸い込んだ。呆れるほどの田舎だが、その分、空気は美味しい……

「何してんだ? おめぇ……」

 そうしてブルボンが田舎を堪能していると、突然男が声をかけてきた。道端にしゃがみ込む、見慣れぬ男を不審に思ったらしい。「皇帝がどこで何をしようと勝手だ!」と、ブルボンはそう答えようかと男の方を向いたが、しかしその時、男が乗っている軽トラックが目に入った。


 懸命にハクダを追いかけながら、ミホは先日のことを思い出していた。あの、パーティに参加した日のことである。

『このまま、私と一緒にマグニテ帝国まで来ていただけませんか?』

 それは、パーティが終わった後にルドルフに言われた言葉だった。しかし、ミホは首を横に振りつつ、こう返した。

『私はあの家にいないといけないんです。出て行った父が、いつか戻ってきた時、見知らぬ暴君がいたら驚いちゃうでしょう?』

 ミホはクスッと笑った。その言葉を聞くと、ルドルフは残念そうな表情を浮かべたが、しかしすぐに紳士的な笑顔を作り、「また会いに来ます」と言って去っていった……

「こんなことなら、ついて行けば良かった……」

 後悔先に立たず……『暴君の下僕』と『シンデレラ』。我ながら馬鹿な方を選択してしまったものだと、ミホは思わず笑ってしまった。が、その時、何かがミホの横を物凄いスピードで走り抜けた。見ると、それは軽トラックだった。しかも、荷台にはブルボンが乗っている。トラックは猛スピードでハクダを追い抜くと、その車体で進路を塞いでしまった。

「外国人のあんちゃん! こいつかい?」

「そうです! この男が私の荷物をひったくりました!」

「えぇ〜!」

 いきなり目の前をトラックで塞がれた上、突然『ひったくり』扱いされたので、ハクダは思わず素っ頓狂な声を上げた。しかも、それと同時に彼は、トラックから降りてきたガタイの良い男に胸倉を掴まれてしまった。

「この野郎! 俺の田んぼの目の前で、ひったくりなんかさせないぞ!」

「ち、違う!」

「言い訳は聞かん!」

 弁明しようとしたハクダだったが、その瞬間視界が反転し、体が中に浮いてしまった。

「ダイナマイト・農夫・パイルドライバー!」


「お疲れさん。大変だったようだね……」

 二人から「ハクダを見つけた」と連絡を受けて駆けつけたヒサエは、缶コーヒーを差し出しながらそう言った。特にミホはクタクタになっている……そんな様子を見ながら、ヒサエはハハハと笑ってタバコに火をつけた。

「それより、忘れてないだろうな?」

 しかし、その時ブルボンが歩み寄ってきて聞いた。

「ブルボン帝国の領土返還の話だ。」

「あぁ……その話ね……」

 ヒサエはタバコの煙を吐くと、思い出したように呟いた。そして、ハクダの首に巻かれたギブスを見た。

「クライアントからさ、『くれぐれも怪我をさせないように』って依頼だったんだけど……怪我してんじゃん……」

「いや、アレは『ダイナマイト・農夫・パイルドライバー』のせいで、我々の責任じゃ……」

 事情を説明しようとしたブルボンだったが、しかし、ヒサエはその言葉を遮るように、タバコの煙を彼の顔に吹きかけた。

「知らないね……まあ、半額免除ってことにしといてやるよ……」


 ブルボン帝国、領土問題……解決せず……



続く




遂に記念すべき10話です。

イエーイ!

やったー!


そんなこんなで……

バレンタインも終わりましたね。

皆さんはチョコを贈ったり、もらったりしましたか?

そうですか……

私はクッキーをもらいました(義理)

まあお菓子大好きなので、義理だろうがなんだろうがもらえれば嬉しいですね。


ありがと〜!


ってことで、バレンタイン。

2月14日……

一説に煮干の日だという話を聞いたんですが

本当ですか?


そうだとしたら……

女性の皆さん!

来年から煮干を贈ってみてはいかが?


日本人ハ、カルシウム不足デース。


これ、誰の言葉でしたっけ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ