第1章 赤眼の少女
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――ふと、青年の意識が覚醒した。
目覚めの理由はよくわからない。
何かきっかけがあった訳でもなく、誰かに起こされたわけでもない。
ただ、急に目が覚めたのだ。
そんな起き方をした所為か彼の頭は何処かぼんやりとしていたが、寝覚め自体は悪くない。
けれどそんな目覚めたばかりの頭でも分かる事が二つ程あった。
一つは彼が重い瞼を開けて見える景色が元々寝ていた自身の部屋ではない事。
そしてもう一つは青年が今正に起きていると思っていても、現実の彼はまだ夢の中と言う事である。
「またここか……」
何処か知らない、しかしここ最近何度も目にした青のない空を見上げる目に浮かぶ感情は落胆と憂鬱。
仰向けに倒れていた体を起こして見えたその『世界』は、どこまでも続く白と黒のコントラストによって構築されたもの。
白く霞がかった景色の中には壊れた建物にも見えるデタラメな形をした構造物や、墓標にも似たオブジェが乱立していた。
誰がどう見ても異常で、おおよその人々が知っている世界とかけ離れた光景。
そこからこの後我が身に降りかかるだろう災難が予測出来た彼の口から深い溜め息が落ちる。
「これで四回目だっけか。ホンット……なんなんだろうな、ここ」
睡眠の余韻を頭を掻きつつ立ち上がる事で振り払い、準備運動代わりに己に問いを一つ。
しかしここを訪れる度に自身に問い掛け、一度も答えの出なかった疑問が同じ条件下で解ける理由もなく。
動き出した思考は見事に空回りする。
そうしてやっと頭が動き出した事を自覚した青年は来るべき瞬間に備えて足を肩幅に開き、その場で腰を低く落とした。
彼ーー天原優希は自身をこう評している。
特に面白味のない。つまらない人間と。
つい先日卒業した高校では人の輪の中にはいたが、特に自己主張するタイプではなく存在感は普通。
部活も無所属で三年通して家かゲーセン直通の帰宅部員。
遅刻欠席は殆どしなかったものの、別にガリ勉と言う訳でもなく成績は可もなく不可もなくでおおよそ平均点。
趣味らしい趣味と言えば日曜朝の特撮鑑賞とラノベ的な物語を考える程度でそれ以外は特に興味もない。
ついでに補足すれば高校三年間どころか年齢=彼女いない歴の悲しい男である。
ここまでで使った「なく」「ない」の回数で分かる様に優生には現状特に誇れる事がない。
ついでに身長と体重も律儀に全国平均に近く、ここまで揃うと自身に面白味などを見出だせないのも無理は無いだろう。
彼も最早自分はそう言う運命なのだと思い半ば諦めの感情から納得してしまっていた。




