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インパルシブ・コンフリクト  作者: 肉付き骨
9/19

疑念 -違和感-

 次々とエレベーターから打ち出された機人は、予め指示された位置へと急行した。

 今回アインの役目は、ブラッドナイブスの無力化。騎士団は最終防衛ラインへ。その他の機人78機の役目は残り46機の敵機人の破壊、もしくは捕縛。ディーグは今回の作戦の指揮をとることになっている。


『いいか、数ではこちらが有利だが油断するな。一瞬の油断が命取りだ』


『『『はっ!』』』


 ディーグが全員に向けて通信をすると、全員、各々の敬礼のしかたでこれに答えた。

 作戦内容は、まずアインが敵陣へ走り出す。それを迎撃しようとする相手を後方支援班の遠距離攻撃で牽制。その後、前衛に出る機人を前に出す、というものだ。


『作戦開始だ、アイン』


「了解だ」


 アインが走り出すと同時に、後方支援班が装填と照準合わせを始めた。しかし、相手は予想に反し、何故かアインを避けるように左右に展開した。

 アインが不思議に思いつつ走り続けていると、ディーグから全員に向けて指示が出された。


『作戦変更。アイン、すぐに退け。第二波、銀色の機人の退路の確保を』


「何かあったのか?」


 方向転換した後アインが呟くと、ゼロックがこれに答えた。


『敵の狙いは恐らくアーセナルの孤立です。まずこちらの主力と思われるこの機体から潰しておこう、という作戦だったのでしょう』


「じゃあ急いで抜けなきゃな。ゼロック、一気に抜けるぞ」


『了解です。ブースター点火』


「まだ敵にバレないようにな」


 アインはブースターを起動し、走るタイミングに合わせて少しずつ加速した。

 アインが包囲網を抜けてしばらくしてから敵は包囲網を完成させた。もちろん包囲網の中には誰も残っていない。


「……なんかおかしいぞ」


 敵の部隊を改めてよく見てみると、機人の種類も、製造国もバラバラだった。そこもおかしいと感じる一つの要因だが、それより気になるのは敵の部隊の動きだった。


「なんであいつら、俺が包囲網から抜けたのにわざわざ包囲網を完成させたんだ?」


『敵からは、ブラッドナイブス一体を除いて、生体反応は察知出来ません。AIの自動操縦です』


「なんだって?自動操縦だけで前回みたいな戦いが出来るわけない。それに信号弾だって使ってた」


 ガロンも言っていたが、現代のAIは単純作業しかできないはずだ。包囲網を作ることは出来ても戦闘になればすぐさま破壊されてしまうだろう。

 しかし前回は、一体も倒せず撤退を許してしまった。しかも撤退の際には信号弾で合図を送っていた。


『恐らく、戦闘の際には一時的に遠隔操作に切り替えて、戦闘以外の作業には自動操縦に任せているのではないでしょうか。信号弾を使った意図は私にはわかりません』


『話は聞かせてもらったぞ』


「師匠!?」


 どうやら一部始終を聞かれていたらしい。伝える手間が省けてよかったが。


『無人機が信号弾を使う理由があれば恐らく、中に人間がいると思わせて手加減させるためだろうな』


 なんとも手の込んだ仕掛けだ。敵を捕らえて情報を聞き出すために、コクピットを狙わないように、など、手加減を誘うためにそこまでやるとは。


『取り巻きが無人機だと分かれば話は早い。全力で叩き潰すぞ。アイン、ブラッドナイブスは頼んだぞ』


「ああ、任せろ」


『前衛部隊、敵は無人機だ。捕獲と手加減の必要は無くなった。銀色の機人の援護も頼む』


『『『了解』』』


 アイン達は再び敵陣へと突っ込んだ。取り巻きの殲滅は仲間に任せ、アインはブラッドナイブスの反応があるポイントへ急行した。しかし、途中に立ちはだかる敵機人数機を確認。


「肩慣らしにはちょうどいい」


 最初に斬りかかってきた大剣装備の重装甲機人には、かわすと同時に地面を削りながら足払いをかけ、胸の中心-コクピット-に掌を突き入れ、動力源のOハートを握り潰し、一機目沈黙。

 大剣の機人を盾にしつつ、近くにいた槍使いの機人に突撃。


「規格外のパワーだな」


 槍を大剣の機人で受け流し、陰から散弾砲で全身を撃ち抜き、二機目沈黙。

 こうして三機、四機と破壊していき、遂にブラッドナイブスのもとへ着いた。ブラッドナイブスの武装は前回と変わらず大剣一本と長剣二本。


「っと、コクピットは避けなきゃな。だろ?ゼロック」


『…………………』


 いつものような応答がない。アインはそれを変に思い、何度も呼び掛けた。


「おいゼロック?ゼロック!」


『……イ…ル……』


「良かった…ゼロック、どうしたんだ?音量上げるぞ」


 ようやくゼロックが喋ったかと思ったが、音が小さくてよく聞こえないので音量をあげると。



『悪ノ意思ニ操ラレシ敵有リ。直チニコレヲ破壊スル』



「おい、本当にどうした!?俺達の任務は奴の無力化で、破壊することじゃない!」


 その声は普段のゼロックよりも無機質で寒気を感じる程だった。それに、本来の目的を見失っている。

 操縦がきかないが、ブラッドナイブスは止まらない。しかし、ブラッドナイブスの斬撃が命中する直前、紙一重の距離でアーセナルはこれをかわした。


「おいゼロック!どうなってんだこれは!」


『自動操縦ニ切リ替エマシタ。敵機体分析中。照合完了。神託兵デハナク、模造品ダト確認。生体反応ナシ。ダミーマシン搭載を確認。戦闘レベルヲ2カラ5ヘ変更』


「シンタクヘイ?ダミーマシン?おいゼロック!どこか壊れたか?」


 アインが呼び掛けるも、応答は無く、意味不明な言葉が羅列されていく。そして、遂にアーセナルが動き出した。



『コレヨリ目標物破壊。自動操縦レベル5ニテ殲滅スル』

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