換装 -超近距離戦仕様-
「こりゃまた随分ごつくなったもんだな」
「無理矢理付けようとしたら案外いろいろ装備出来るんでな。他の機人に装備できないような試作品も搭載させてもらったぞ」
アーセナルは初めて見た姿から随分変わっていた。
メインカメラ―目の部分―が双眼タイプだったのだが、今は上にバイザータイプ―横一文字―のカメラを被せている。視野を広げるためだという。
肩と腰には見たことの無いモノがくっついていた。肩には鮫の背ビレのような形のモノが左右に一つずつ。腰の左右には薄い箱のようなモノが一つずつ。
「あの肩と腰に付いてるの、なんなんだ?見たこと無いぞあんなもの」
「あれは一時的に機体を加速させるブースターだ。今までは搭乗者の手動でないと制御がきかなかったんだが、ゼロックがアシスト可能だそうだ」
「アーセナルに装備できるとはな」
ブースターは主に飛行機人や飛空挺に搭載されているもので、陸戦型のアーセナルには無用の長物だったのだが、一時的な加速に流用するとはアインは思ってもみなかった。
「それと、エリスから聞いたが散弾砲を使うらしいな」
「まあな。で、散弾砲はどこだ?」
アインがアーセナルを見回していると、後ろにいた研究員が前に出てきて説明を始めた。
「それなんですが、腰にブースターを付けているため腰の後ろに手を伸ばすのは戦闘に支障が出ると思われたので…」
「まさか、装備できないのか?」
アインがそう言うと、研究員は首を横に振り、アーセナルの腕を指差した。
「両腕部のバインダーに直接装備しました。初めての試みだったのですが、バインダーに装着されたままでも発砲可能だということが判明しましたので」
アーセナル腕をよく見てみると、前見た時より一回り太くなっていて、腕の手の甲と手のひらの側に砲口が見えていた。
「カッターとワイヤーガンは?」
「どちらも肘の側に収納されているので問題なく使用できます」
どうやら初期装備は外されていないようだ。
「師匠、エリス、何か外した方がいいとか、そういうものがあったら言ってくれないか」
アインは二人に意見を求めたが、言い淀んでいるようだった。
「正直、こいつの性能をこの目で見たわけではないから何とも言えないな」
「あたしも散弾砲を腕に装着しちゃうなんて無茶苦茶だ、って思ったけど、このアーセナルの性能自体無茶苦茶ならいけるんじゃない?」
アインも、前回の戦闘ではナイフで相手の攻撃を受けただけだったので性能は把握していないが、アーセナルならば出来るんじゃないかとも思っている。
もし、戦場に出て動きに支障を感じたら追加装備をパージ出来るそうなので、ひとまずこの改造結果を承認しておいた。
アインが二人と再び総合訓練所へ向かい歩きだしたその時。
『索敵範囲内に以前の敵が進入しました。数は47。ただちにこれを迎撃してください』
警報が鳴り、格納庫内の人々は出撃準備を始めた。
「私たちも出るぞ」
「ああ!」
「はい!」
アインはアーセナルへ、ディーグはダーク・レイヴンへ。
前回出撃しなかったエリスだが、今回はディーグに出撃を許され、紫の専用機へと向かった。