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インパルシブ・コンフリクト  作者: 肉付き骨
15/19

決闘 -実力- (前編)

 ついに来てしまった決闘当日。

 戦う順番は以下のようになった。


 先鋒 エリス


 中堅 クロト


 大将 アイン


 三人と三機は決闘場の端にある巨大な控え室にいた。


「一番手、頼んだぞエリス」


「まかせといて。絶対勝つわ」


「クロト、ほどほどにな」


「兄さんの手は煩わせませんよ」


 相談の結果、このような順番になったのだが、アインは本当は一人で三回全て戦うべきだと思っていた。

 結局二人には負けた際のペナルティを伝えずに当日を迎えてしまったため、当然のことだと思ったのだが、相手側はそれを許してはくれなかった。


「じゃあアイン、行ってくる」


「ああ、頑張れ。無理はしないでくれよ」


 素早く愛機へと乗り込むエリス。ショット・リリィの武装は、長距離仕様ではなく中近距離仕様へと換装している。

 ショット・リリィは、リリィの名の通り機体の各部にユリの花を模したハードポイントが肩に二個、肘に二個、腰に六個、背中に二個、膝関節の外側に二個の計十四個付いている。装備できる数はX・テルミナに比肩するやもしれない。

 腰には散弾砲、小銃二挺、各種グレネードを装備。背には小型ガトリングと大口径キャノンが一挺ずつ。両腿には弾が切れた時のためのナイフが一本ずつ。

 重いように見えるが、その分ショット・リリィの疑似筋肉も速い移動と自重に耐えられるように調整されているため、一般的な機人同様の動きができる。

 しかし、全弾が切れたり装備を落とされたりして機体が軽くなると、バランスが崩れて思うように動かないという欠点もある。そのため、短期決戦が望ましい。ナイフは非常用、というより気休めに近い。


 アインが機体の観察をしていると、相手も準備が整ったようだ。

 決闘場は巨大な円形で、直径五百メートルほど。アインは双眼鏡で相手を確認した。


 一回戦の相手は、サムライという機人。

 左腰に一振りの太刀を装備しているが、他には武器を装備していない。


「よほど太刀に自信があるようだな」


 装甲の形はパラデイオンのそれに類似している箇所が多々ある。ただこちらは赤と黒を基調に塗装されている。


「相手が近距離仕様だからって油断するなよ」


『わかってる。安心して待ってなさい!』


 気合い十分、ショット・リリィは決闘場の中央へと歩きだした。


 決闘のルールは主に七つ。


 一、両者決闘場中央から試合開始。


 ニ、降参するか気を失ったら敗北。


 三、場外からの援護、妨害は禁ずる。


 四、相手を殺してしまった場合は敗北。


 五、決闘開始からの順番変更は禁ずる。


 六、制限時間は一時間。


 七、制限時間を過ぎた場合、後日仕切り直し。



『これより決闘一回戦を始める!』


 審判がカウントダウンを始める。


『三』


『二』


『一』


『始め!』


 戦いの火蓋は切られた。





 合図と同時に、サムライは大きく踏み込み、太刀を鞘ごと取り外し柄に右手をかけた。


「そんなの予想済みっ」


 ショット・リリィは小銃で牽制しつつ後方へ大きく跳ねた。

 サムライは踏みとどまり、鞘に納めたままの太刀で弾を弾きながら後退する。


『飛び道具か。武士道に反する』


 サムライが太刀を一振りすると、鞘が後方へと飛び、その刃を現した。その太刀を両手持ちにして再び大きく踏み込む。


「さっきより速い!?」


 太刀が右下から斬り上げられる。

 ショット・リリィはさらに地を蹴り後方へと跳ぼうとしたが、小銃が斬られ爆発してしまった。


「っ!」


 右手に爆風を浴び、損傷を報せる警報が鳴り響く。反撃しようとするが、相手はすでに後退している。

 ショット・リリィは左右に跳びながら再生で右手を修復をした。表面が焦げた程度なので、すぐに再生は終わり、痛みも消えた。


「今度はこっちから…」


 ショット・リリィの背中に装備しているキャノンが左肩へと移動する。

 照準を合わせて、発砲。

 轟音が響き、サムライへと飛来する砲弾。動きださない相手に命中を確信する。


 しかし、それは相手に命中することなく二つに割れて相手の後方に着弾した。


「嘘でしょ…」


『いくら威力があろうとも、大きな(まと)は拙者とこの斬鉄剣(ざんてつけん)には好都合』


 小さな弾は弾かれ、大きな弾は斬られる。

 どうすればいい。打開策が見つからない。


 このまま、負けるしかないのだろうか。


 何か、何か無いか。


 迫り来る相手に、エリスは無意識に考え方を変えた。


 アインだったらどうする?


 そこであることを思い出した。



『なかなか使えるな…』



 そうだ、ああすれば相手も迂闊に動けないはず。


 試しに散弾砲を地面に放つ。


 着弾した場所から砂煙が舞い上がった。


『どうした?もうこちらに得物(えもの)を向けることすらできぬか』


 違うに決まってるじゃない?

 あたしはまだ、諦めない。


 エリスは足に力を込め、最大出力で跳び上がった。





自暴自棄(じぼうじき)にでもなったか」


 侍の搭乗者は、跳び上がったショット・リリィを見上げて太刀を構えた。


「陽光を背にするかと思うたが、反対側ではないか」


 ショット・リリィが最高点に達して落下し始めたとき、上空から連続した発砲音が響いた。


「無駄だ」


 侍は太刀の腹を左手で支え、降り注ぐ弾丸を全ていなしていく。弾かれた弾丸が次々に地面へと突き刺さる。

 すると、そのうちの何発かが音を立てて爆発し始めた。


榴弾(りゅうだん)か。当たらなければ意味もあるまい……む、何事か」


 そこで初めて異変に気づいた。視界がどんどん狭くなり、空まで見えなくなる。

 地面を振り返ると、いつの間にか辺りは砂煙で覆われていた。


「最初からこれが狙いだったか。しかし落下地点は見切れている…覚悟」


 砂煙に紛れ落下地点に先回りし、守りを捨てて太刀を突きの型に移行する。


「一点集中…落下速度を加えればひとたまりもあるまいて」


 不殺のルールに従い、刺突位置を相手の足に合わせる。

 そこで、一際大きな爆発音が響いた。


「あの大弾か」


 サムライは神経を集中させて辺りの音を探った。しかし、着弾する音は聞こえない。


「どういうことだ…?」





「あの太刀使いはバカなの?」


 先回りされることを予想していないとでも思った?


 ショット・リリィは目眩ましの弾をばらまいた後、そのまま空中で姿勢制御し、左肩のキャノンを場外、人のいない場所に照準を合わせ発射した。

 当然、地に足が着いていないこの状態で高威力の大砲を撃てば、反作用で機体が押されて着地点がずれる。


「ついでにこれもっ」


 着地音を隠すために、強い音を発して爆発するグレネードを四個、砂煙を吹き飛ばさないように投擲。


 一つ目の炸裂。と同時に着地。


 二つ目の炸裂。と同時に地を蹴る。


 三つ目の炸裂。と同時に弾切れしたガトリングにリロード。


 そして…



「これでっ、おしまい!」



 四つ目の炸裂と同時に相手の背中に一斉射撃を浴びせた。

 四つ目の炸裂音に気を取られていたサムライは、なすすべもなく体中に弾丸を食らう。

 キャノンで防具が吹き飛び、散弾とガトリング弾が次々に突き刺さった。

 サムライは、三発目のキャノンを食らったところで前方に大きく吹き飛んだ。


『ぐ…悔しいが…もう、動けそうにない…降参だ…』


「やった!」


『第一回戦勝者、アズマール国、ショット・リリィ!』


 なんとか一勝もぎ取れた。


 クロト、勝って。


 あんたが勝てば、アインはX・テルミナに乗らないで済むんだから…

 ここまで読んでくださった皆さま、いつもありがとうございます。

 この通り拙作ですので、批評等、何かお気付きになった点がありましたら、コメントをいただけるとありがたいです。

 それを参考にしつつ、よりよい作品を書けるように善処致します。

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