序章 -始まり-
はじめまして。この作品が初投稿の初心者、インフロント荒野です。
始めに注意しておきますが、本作はロボットがメインの作品です。ロボットはちょっと…というかたはここで引き返していただいても構いません。
また、処女作なので至らぬところも多いと思いますが、どうぞ暖かい目で見守っていただけると幸いです。
鈍い痛みに顔をしかめながら青年、アインは目を開いた。目の前の敵を逃がさないように。
「ぐっ…まだだ…!」
敵は一人、いや、一機と言うべきか。黒をベースにした配色の《機人》と呼ばれるそれは身動ぎしたアインの機人を振り返った。
『まだ意識があったか』
敵はアインの機人に歩み寄りその首を掴み、絞め上げるようにして持ち上げた。
「がっ…かはっ!」
アインはまるで直接首を絞められたかのようにもがき、苦しんだ。
どうにかしてこれから逃れようと、自分の機人に装備している小剣を展開したホルダーから引き抜きがむしゃらに振り回した。しかし、敵は器用に弾き一撃も食らわない。
『ふん…』
敵はアインの機人を地面に叩きつけ、両肩と股関節に短剣を投げつけて可動部を断ち切った。
「ッ!ぐあっ!」
アインの機人はその痛みをそのままアインに与えるため、アインに激痛が走る。
そこで、アインの機人に機械的な音声で通信が入った。
『演習終了。搭乗者は機人を停止してください。』
「ダメだったか…」
アインはコクピットを開放して機人との《接続》を切った。相手もコクピットを開放して外に出たため、その姿を見ることができた。
「まだまだだな。そんな腕ではお前を前線に出すことは許可できんな」
名はディーグ・ベルツ。今年で52歳だっただろうか。額の右側に縦の傷があり、厳つい顔は未だ威厳を衰えさせない。髪は黒く、頭の後ろでその少し長い髪を結っている。髪の色から東の国『アズマール』出身であることが容易にわかる。肩幅が広くがっしりしているが、無駄な筋肉がついていないためスラッとしている。
「師匠!俺だって《専用機》さえあれば勝てるはずなんだよ!」
対するアイン・ノーツ、17歳。髪はディーグと同じく黒。戦闘の際邪魔にならないよう適当に短く切っている。ディーグと同じくアズマール出身だ。ディーグほどではないが、身体は鍛えている。
「アイン、わかっているな?専用機持ちはその腕があるからこそ専用機をもつことを許されているのだ」
「でも師匠!」
「しつこい。格納庫へ戻るぞ。早くしないとまた…」
ディーグがその先を言おうとしたところで、20メートルほど離れた場所に巨大な何かが落ちて―いや、おそらく跳んで―きて土煙に包まれた。
「遅かったか…」
「ああ…そうだった…」
ディーグが自分の額に手をあててうんざりしたように下を向き、アインが溜め息をつくと、巨大な何かから大音量の声が聞こえた。
『先生!アイン!もう演習は終わったはずなのにいつまでそこにいるの!?』
「エリス、師匠は悪くない。俺が言い訳をして長引かせただけだ」
「いや、私がアインの機人の四肢の関節を切ってしまったから遅くなった」
「いや師匠!俺が!」
「いや私が…」
二人がこんなにもかばいあう理由は、土煙が晴れて目の前に見えた紫色の機人の搭乗者、アインの妹、エリス・ノーツにある。彼女のお小言は最悪2時間にも及ぶため、互いに罪を打ち消そうとしているのだが、
『じゃあ二人とも後でお説教!逃げたら明日からお弁当が無くなるからね!』
最初の頃はこの罪の打ち消しあいでエリスを混乱させてうやむやにできていたが、最近は二人まとめて制裁、ということに落ち着きつつある。
『わかったら返事』
「はい…わかりました…」
「ああ…わかった…」
二人は項垂れてそれぞれの機人の方へ歩いていった。
『アインが乗ってればすぐに《再生》するんでしょ?』
「まぁそうだけど…」
『じゃあ駆け足!』
「はいぃ!」
エリスの機人が足を踏み鳴らしたので、アインは急いで先ほどの自分の訓練用の白い機人と再び接続した。
「痛っ…!」
接続して感覚が逆フィードバックされた痛みに耐えながら、切られた箇所に意識を集中すると、切断面が光り、再生が始まった。
(何度見てもこの再生速度は恐ろしいな)
ディーグが感心したように、しかし恐れるようにその光景を黒い機人の目で見ていた。光は5秒ほどで消え、白い機人は立ち上がった。
「ふぅ…再生完了!」
白い機人は再生したことを確かめるように肩を回したりジャンプしたりしてから黒と紫の機人に追従して格納庫へと走った。
批評、もしくは何かお気付きになった点がありましたら是非コメントをお願いします。そこからよりよい作品を書けるように善処していきたいです。