epilogue:2060年7月15日
今日、片瀬さんが死んだ。
猫みたいに、一人で死んだ。
死に場所を探すように、死期を感じたらオレの前からいなくなった。あの人は、とことん猫みたいなヤツだ。
今一番思うのは、あの野郎、何もかも矛盾してやがる、ということだ。
オレの為に死ね、と言っておきながら、そう育てておきながら、結局オレにそうさせなかった。
片瀬さんは、いつでもオレを置いて行く。
今、ここにいる片瀬さんはあの時の猫に似てる。
小さい頃に見た、あの猫の死体。
オレは片瀬さんに何にもしてやれない。あの時の猫に何もしてあげられなかったのと同じように。
オレはあんたを、片瀬さんを失ったことを嘆くことしか出来やしないんだ。
すいません、片瀬さん。
片瀬さんはオレに生きる道を残して置いてくれた。彼の銃が入っていた棚に、一枚のメモ用紙が入れてあったのだ。
何から何まで“残す”ことの好きな人だ。そんなにも、自分のことを忘れて欲しくないのか。何もかも、嫌になる。
忘れないよ、忘れられないさ。
だってオレの命の恩人だ。昔からの憧れの人だ。片瀬さんの生き方を真似するように、オレは生きて来た。多分、これからも。
これから何をして生きて行こうか。
もしかしたら、オレみたいなガキを拾ってしまうかもしれない。もしかしたら、前に片瀬さんにやられた組織から仇討ちで命を狙われるかもしれない。もしかしたら、思ったより早く死んでしまうかもしれない。
なんだっていいや。これが猫に拾われたオレの生き方だ。
初めて連載を完了することが出来ました。今までお読み下さった皆様、ありがとうございました!もしよかったら、評価感想よろしくお願いします!




