act.5:終結
「おい」
肩に大きな袋を抱えた片瀬が索に言った。うなだれていた索は静かに顔を上げた。片瀬を見ると、嬉しそうに笑った。
「あ、片瀬さんだ」
「……お前、ひでェ怪我だな」
「こんなの、なんてことありませんよ」
索の左肩、右脚から血が溢れていた。片瀬は索の隣にしゃがんで、タバコに火を付けた。
「片瀬さん、それがマリーですか?」
「おう。美人だろ」
「オレにゃ、分かりませんよ。それよりどうするんスか、それ」
「そんなの、決まってんだろ。サツに売り飛ばす」
「だから面倒な奴に目ェ付けられるんですよ」
索は頭をポリポリと掻きながら、ズルズルと壁に寄り掛かった。片瀬は索の腕を掴んで立ち上がらさせた。索は少し痛がったが、それでもユックリと立ち上がった。
「ガキの癖にムチャするからだ」
「片瀬さんには負けます」
「うるせ」
片瀬さんは元は警察の人間だった。
しかし自由に動きすぎたせいでクビになって、そんな時にオレを拾った。
片瀬さんは黒い噂のある組織に必ず首を突っ込む。
悪を許しておけない質なのだ。
だからいつも危ない目に遭う。
いつ命を落とすか、分からない。
オレはいつ片瀬さんに置いてかれるか、分からない。
「片瀬さん。マリー、どうなりました?」
「お前の食ってるそのメシ」
「あー……ちゃんと金になったんスね。良かった」
「金にならねェ仕事はしないからな」
索はフッと笑った。
「嘘ばっかり」
「文句あんのか、コラ」
片瀬はパシッと索の頭をはたいた。




