act.4:マリー
「おい」
タバコの煙を吐き出しながら、片瀬は黒いつば付の帽子を被った男に話し掛けた。男はフッと鼻で笑った。
「……片瀬か。お前も懲りない男だな」
「お褒めに預かり光栄だな。で? “美女”は何処にいるんだい」
「まぁ、そう焦るな」
男は椅子からユックリと立ち上がった。そして振り返ると、その手には小銃が握られていた。
「フン」
片瀬もユックリと銃を握った。
―ドンッ
同時に銃声が響き渡る。片瀬と男は銃弾を避けるように転がった。片瀬は入口の壁に寄り掛かり、ジッと様子を見ていた。
「片瀬さん」
「うわっ!!」
ボソリと索が声を掛けた。片瀬は肩をビクリとさせた。
「おまっ、索!ビックリさせんじゃねェ!!」
「オレ、謝りませんよ。あんた、またオレを置いてったんだから」
「邪魔になるからだ」
「片瀬さん……女ってクスリですよね」
「決定かよ」
索はハァ、と大きく溜め息を付いた。片瀬はシレッとしたまま、様子を見ている。
「通称“マリー”。最悪のドラッグ」
「……知ってるのか」
「えぇ、調べたんスから」
「用意がいいことで」
「片瀬さん、ここはオレに任せて下さい」
「はぁ?」
「オレはあんたの為に命懸けれるように育てられたんスよ。あんた自身に」
ジッと片瀬を見る索の目には強い光があった。片瀬は黙ってそれを見た後、目を細めて笑った。
「オレはマリーを探しに行く。頼んだぜ?」
「はい!」
索はニコッと笑って、男の方を向いた。片瀬は部屋から出て行った。




