act.2:二人の出会い
「おい」
まだ若い赤茶色の髪をした男が、路地裏で小さくうずくまっている男の子に声を掛けた。男の声に気が付いた男の子はゆっくり顔を上げ、男の顔を見た。
「お前、そんなトコで何してんだ?」
「ぼく? すわってる」
「……確かに座ってんな。間違ってねェ」
男は少し気まずそうに頭を掻いた。男の子はボーッと座っているのみだった。
「父ちゃんや母ちゃんは何処行った?」
「いない」
「つまり孤児か。まぁ、今の世の中フツーになっちまったしな」
「……」
「……お前、死ぬのは恐いか?」
「ぼく、しぬの、こわくないよ。だっておねえちゃんがしんだときもぜんぜんこわくなかったもん」
「そいつはいい。お前、オレに付いて来い」
ニヤリと笑って、男はタバコに火を付けた。男の子は少しの間、キョトンとしていた。男は男の子の頭に手を置いて、ワシャワシャと髪を撫でた。そしてぶらっきぼうに言った。
「お前をそこから立ち上がらせてやるって言ってんだよ」
「いいか。オレはオレの為に死ねる奴しかいらねェ」
男の子は慎重にコクンと頷いた。よし、と男は男の子の頭を軽く撫でた。
「お前、名前は?」
「……索」
「オレは片瀬だ。片瀬さん、って呼べばいい」
索ははい、と小さく言った。その幼い顔は微かに笑っていた。
「索、オレの為に強くなれよ?」
片瀬の微笑んだ顔はやけに優しく見えた。片瀬が歩き始めると、索はそれにチョコチョコと付いて行った。




