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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

告白されてました

作者: 白石結衣

 三波くんは不良だ。それもただの不良じゃない。この学園のトップであり、この地域を束ねる不良チーム、AKANAMIの総長だ。喧嘩においては誰よりも強く、頭も良い。不良なのに、授業だって出席はしても聞いちゃいないように見えるのに、テストの成績は常に一位。見た目だって、男でも見惚れるほどの美形で、背も高く、男女問わずにモテる。たとえ同じクラスだとしても、ただの平凡な俺と彼の接点はないに等しく、話をしたこともなければ、目を合わせたこともない。

 なのに何故俺がこうして彼についてつらつらと語っているかというと、その誰からも恐れられている三波くんが俺の前に無表情で立ちはだかっているからだ。つまり軽い現実逃避。今朝、下駄箱に入っていた手紙に乗せられて、放課後の体育館裏にやってくれば、背後から声をかけられた。逃げ道を塞ぐように立ちふさがった三波くんは、声をかけたきり話そうとはしない。怖い。もしやここは彼らのたまり場なんだろうか。うっかりその中に飛び込んでしまったのでしょうか。


「好きだ」


 そうそう。手紙をくれたのは誰なんだろう。几帳面そうな字で、放課後、体育館裏に来てください、とだけ書いてあった。宛名は間違いなく俺だったけど、差出人の名前はなかったな。いやぁ、期待してないと言えば嘘になるけど、もしかして告白されちゃったりして。こんな平凡の俺にもついに春がやってくるのか。長い冬だった。なんせ、彼女いない歴=年齢だもんなぁ。


「おい、聞いてるのか?」

「え?」



 鼓膜に心地よく響く低音に思考を中断され、顔を上げれば三波くんが、眉間に皺を寄せて俺の顔を覗きこんでいた。近いっ!

 ずざざっと後ずさって距離を取る。睨まれた!怖い!そうだここが彼らのたまり場ならばすぐに立ち去らねばなにをされるかわからない。



「あああの、お邪魔してすみません!すぐすぐ立ち去りますのでー!!」



 三波くんの横をすり抜けて駆け出そうとすれば、がしっと腕を掴まれた。うそー!もう手遅れなんですか!



「それが返事か?」

「え?いやあの返事とかじゃなくってとりあえずすみませんお邪魔してすみま」

「俺の告白聞いてなかったのか?」

「いえいえなにも聞いてません!俺はなにも聞いてませんとも!」


 掴まれていないほうの手を、顔の前で激しく左右に振って、とりあえず否定をしておく。なんの話なのかはわからないけど。



「好きだ」

「そうですねっ!俺も好きです!いいですよねっ」



 あ、ヤバい。身体が恐怖で震えてきた。目は合わせてないけど、最強の不良に腕を掴まれて、強い視線を感じる。ヤバいよなんとか逃げ出さないとリンチ!?痛いのはいやだー!



「…お前が好きだ」

「…おまえ…おまえ?」



 お前ってだれ?お前ってなに?近くに誰かいただろうかとキョロキョロ視線を巡らせれば、植え込みの向こうにこっちを見ている人達がいた。ひっと声にならない悲鳴を上げる。不良だ。カラフルな頭髪の不良たちが植え込みの陰からこちらをうかがっている。え?もしや囲まれているパターンですか?逃げ場はどこにもないんですか!



「山村陽太が好きだ」



 やまむらようた…って俺?いやいやまさか。同姓同名さんですか。そうですよね。



「陽太」



 そっと頬に手を伸ばされ、強くない力で上を向かされる。ぱちっと視線が合わさる。強い視線で絡めとられ、逸らすことが出来ない。身体が動かない。怖い。光の少ない黒の瞳が、探るようにじっと見ている。そのまますっと近づいたかと思うと、唇にちゅっと口付けられた。え?



「え?」

「好きだ。何度でも言う。陽太が好きなんだ。俺と付き合って?」

「え?え?」



 ぎゅっと抱き締められた肩越しに、再び息を潜める植え込みの向こうの人達が目に入った。みんな怖い顔でこっちを見ている。思わず三波くんの身体にしがみついてしまった。



「陽太?いいの?本当?」



 べりっと身体をはがされても、視線は植え込みの向こうに釘付けだ。襲われそうになったらすぐに逃げられるように、動きを伺う。ん?みんなが、こっちを見てゆっくり頷いている。たくさんの不良が同時に頷く様は結構シュールだ。促すような意図を感じて、俺も首を縦に振ってみる。あ、親指を立てて笑ってる?なにやら良い仕事をしたらしい。

誤字等ご容赦ください。

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