~魔学師の弟子たち~
僕と魔学師を恋人と言った女子生徒、彼女の名前をまたしても魔学師は当てた。
「ふぇ~……びっくりしたぁ。」
(さっき、魔学師に名前を当てられた女学生……、確か……。)
「……千歳……さん?」
僕はつい声に出してしまった。
「ひゃっ……!!」
いきなりのことで彼女は驚いていた。
「あ……、ごめんなさい。驚かせてしまって……。」
「あ、えと、大丈夫だよ!!」
おろおろしながら、彼女は僕に『大丈夫!!』と、いったように胸の前で小さくガッツポーズする。
くりくりした大きな丸っこい目、髪型はフワフワした栗色の長い髪をポニーテール風にしていて、桃色のワンピースにカーディガンを羽織っている。身長はヒールのサンダルをはいているが少し小さめの身長。魔学師は誰でもが振り返りそうな美人だが、彼女は誰にでも好かれそうなかわいらしさがあった。
「えと、あの、何か用かな?」
「あ、いえ、すみません。あの人があなたの名前を言っていたので……。」
「ううん大丈夫、魔学師さんの恋人さん。」
「あ、いや違いますよ、あの人とはこの間あっただけですし。」
「え?そうなの?」
「はい。僕もあなたと同じで名前を当てられたんです。」
「へぇ~、そうなんだ。……、えっと……。」
「あ、僕は八重ヶ崎真です。」
「……真、真……か。」
彼女は僕の名前を確認するように繰り返す。
「じゃあ、真だから、『マーちゃん』だね!」
僕はずっこけた。
(まぁ、確かに小さい頃は言われてたけど……。)
「え、えっと、できれば呼び捨てか、君付けがいいな。」
「真……君?」
彼女は首を軽く傾げて僕をじっと見る。
(……なんか、恥ずかしくなるな……。)
赤くなる僕を見て、彼女は、
「え、えと……、大丈夫……?」
「あ、いえ!!大丈夫です!!なんでもないです!!」
「あと、えと、じゃあよろしくね!真君……!!私は千歳だよ!!」
『千歳ちゃんって呼んでね、あ、それから敬語なしね!!』と付け加えて千歳ちゃんは言った。
「うん、よろしく。千歳ちゃん。」
と、その時、僕達に魔学師が、
「……、おいそこの青春共、早く体育館に入れ。」
●
『さぁ~て、合格者の諸君おめでとう。』
魔学師は壇上からマイクで僕たちに向け、言葉を送ってきた。
(まぁ……、僕を含めて『6人』しかいないけど。しかも5人女の子……)
内心女の子達の中に放り込まれて困っている。
『さて諸君、まずは自己紹介でもしてもらおうか。……まずは――』
ちらり、と僕のことを見てくる魔学師、僕が視線をそらすと、『ニィ』っと音のしそうな彼女の得意な『あの』笑い方をしてきた。
『――八重ヶ崎、頼むぞ♪』
(……うっ……。)
僕はしぶしぶパイプ椅子から立ち上がり、
「……八重ヶ崎 真です。えっと……、」
と、何を言おうか考えていたその時、僕の3つ左隣にいた学生が、
「おぉ!!あんたが噂の魔学師さんの恋人さんかぁ。なんやけったいな人やねぇ。」
と、独特のイントネーションの女子学生がケラケラ笑っていた。すると千歳ちゃんが、
「ちょっと、『ま』いこちゃん……!真君に失礼だよ!!」
「あぁ?ちぃちゃん、『ま』いこやなくて、ま『い』こやっていつもいっとるやろ?『い』にアクセント付けぇな。」
「あ……!ご、ごめんね……。」
『まいこ』と呼ばれた彼女は千歳ちゃんに指摘をした。
大きな丸眼鏡、猫のようなアーモンド形の目、ショートカットの髪の毛、格好はパーカーに半ズボン、頭にキャップ帽をかぶってまるで男の子のような格好をしている。
『あ~、もう八重ヶ崎はいいぞ、さっきの奴自己紹介しろ。』
と、新しいおもちゃを見つけたような子供のような目をする魔学師。
「んん?ウチ?はいは~い」
と、言うと元気に立ち上がり、
「はーい、ウチの名前は新守 まいこです。さっきも言いましたけど『ま』いこやなくてま『い』こやからそこんとこ間違えんといてくださいねぇ。せんせぇ♪」
『あぁ、よろしく頼む。……フフン、先生……先生か……♪』
先生と言われたことが気に入ったのかニヤニヤしている。
(僕もそう呼ぼう。)
『んー、次はそこのもう一人の眼鏡の奴、頼む。』
「……。」
先生に指名された女子学生は無言で立ち上がった。
「凪ノ原 雪――以上です。」
と、だけ言うと彼女は席に腰を下ろした。
鋭く細い目、細い淵なしの眼鏡、ツヤのある黒髪を後ろで束ね、スーツを着込んでいる。まいこちゃんとは真逆で凛とした雰囲気をまとっていた。
するとまいこちゃんが
「ユッキー、もっとなんか言おうやぁ、つまらんでぇ?」
と、ツッコミの手をしながら言っていた。
「……いつもその呼び方やめなさいって言っているわよね。いい加減学習してくれないかしら?」
「えぇやんユッキー。かわいらしいあだ名やろ?」
「……あなたにそう呼ばれること自体が不快だって言ってるのよ。……少しは考えてくれない?」
「なんやって……?」
いきなり険悪な雰囲気になる二人、
『おぉ!?喧嘩か?やれやれ!!』と、言わんばかりに先生はニヤニヤしている。
その時、
「二人ともやめてよ!!」
千歳ちゃんが目に大きな涙を浮かべて立ち上がった。
「こんな日に喧嘩なんてしないで……!!」
まいこちゃんと雪ちゃんは、千歳ちゃんが泣きだしたため、戸惑っていた。
「ちょっ!!ちぃちゃん大丈夫!!大丈夫やから!!チョイ調子にのっとっただけやから!!」
ちらりと、まいこちゃんが雪ちゃんのほうをみた。
「……!そ、そうよ千歳。よくあることじゃない!?」
まいこちゃんの意図を読み取った雪ちゃんが話を合わせた。
「そ、そやそや!ウチがボケて、ユッキーがツッコんで……って。」
「……、ほんとに……?」
二人は、うんうんと頷いていた。
「……、そっか、よかった……♪」
目をこすりながら千歳ちゃんは言った。
『……、フフン、青春だなぁ……、次の奴は……さっきの奴だ。』
「あ、ハイ!!」
元気よく千歳ちゃんは立ち上がった。
「朝倉 千歳です!!先生、真君よろしくね!」
と、言うと僕に向かって手を振った。
『よろしく頼む、では次の奴は……っと、そこのお前だ。』
「……。」
先生に指名された女子学生は反応しなかった。
『ん?……おい?どうした?』
「……、ぅん?ふぇ~……?」
『……、寝てたのか……?』
「……!寝てませ~ん、お母さ~ん!!」
その時、場の空気が止まったように感じた。
『…………。』
「…………。」
『……、寝てたんだな……。』
「……、ハイ~……すみません~……。」
『まぁいい……、改めて自己紹介してくれ。』
ハイ、と言うと彼女は立ち上がった。
「お、音無~ 朝日です~……。」
長い長いロングヘアー、髪色は淡い灰色。マキシ丈のスカートのワンピースにビーチサンダル。海岸沿いにいたら間違いなくナンパ男が声をかけるだろう。
と、その時、朝日ちゃんは突然倒れた。そして『ガツン!!』と、大きな音を立てて頭を打った。
『お、おい!?大丈夫か!?』
先生が声をかけた時、朝日ちゃんは何事もないように立ち上がった。
しかし、
「……いってぇ~!!朝日の野郎また倒れやがったな!!」
いきなり朝日ちゃんの口調が変わったのだ。
『……、大丈夫か?朝日?』
「あぁん!?朝日だぁ!?オレとあんな奴を一緒にすんな!!」
彼女は先生に右手の中指を立て、
「オレの名前は音無 夜月!!おっとり朝日じゃねぇからな!!」
と言うと、バーカ!!バーカ!!と、あっかんベーをしながら先生に叫んでいた。
見た目は変わらないのだが、口調が全く違う。……先ほどのナンパ男は夜月ちゃんによってボコボコにされただろう。
『……もしかして二重人格者か……?』
先生は壇上に登ろうとする夜月ちゃんを抑えながらそう言った。
「……、えぇ、音無朝日/夜月は二重人格者なんです。」
答えたのは雪ちゃんだった。
「……その子達、頭を強く打つと人格が変わるらしくって……。」
『……なるほど。……おらっ!!』
先生はちゅうちょなく夜月ちゃんの頭をグーで殴った。
「うげっ!!」
うめき声と共に夜月ちゃんは倒れた。
「……あいたたた~。」
頭をさすりながら入れ替わった朝日ちゃんは起き上った。
「また夜月ちゃんがお騒がせしたんですね~……。すみません~。」
『……まぁいい、早く座れ、……次の奴――』
「遅いですわ!!」
先生の言葉をさえぎって小柄な女子学生が立ち上がった。
「全く……!!いつまで待たせますの!!この私を最後に回すなんて……!!どうかしてますわ!!」
ウェーブのかかった金色の長い髪、気品あふれる服装、偉そうに腕を組んでいるが小柄なため威厳が全くない。
口を膨らませながら怒る彼女にまいこちゃんが、
「まぁまぁ、ミキっち。最後の執りを任されたんやで?ビシッっと決めたって!!」
「……、そうなんですの?……では……。」
コホン、と、咳払いをして、彼女はしゃべり始めた。
「私の名前は天王院 美姫ですわ。……学長の天王院露姫の娘ですわ。」
『……マジか!!あいつの娘!?……よく見りゃ目つきが似てんな!!』
(学長って何歳……?)
『そーかそーか、まぁ、これからよろしくな!』
「……フン!」
美姫ちゃんはそっぽを向き腰を下ろした。
『さて、これで自己紹介も終わったな。……では、教室に移動するぞ。』
そう言うと先生は壇上を降り、出口へと向かう。
いかがでしたでしょうか?
今回は新キャラを出しまくりですみません!!
さて次回は魔学師とその弟子(学生)達の話です!!
またいつかお会いいたしましょう!!
ではでは(^^)/~~~