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~魔学師のゲーム~

入学式の電車の中で出会った不思議な女性、……彼女はいったい何者なのか……。



大学に着くと、僕は入学式のパンフレットに書かれている通りに第3体育館へと向かった。


               ●


体育館に着くと、入口には短いながら列ができていた。


「……なんだこの列?」


僕が呟くと、


「あら、あなたも魔学科?」


と、後ろから声がした。


僕が振り向くとそこには、スーツ姿の女性がいた。胸にある名札から察するに、大学関係者のようだ。


「あ、はい。」


僕が答えると、女性は少し微笑み、


「そう、じゃあこの列に並んでくれるかしら?

……あなたも知ってるでしょうけど、この大学に魔学師の方が講師をされるの。だから形式的なものだけれど、体育館に入る人には全員検査をさせてもらってるの。……ごめんなさいね。」


と、言うと、彼女は少し申し訳なさそうな顔をした。


「いえ、わざわざありがとうございます。」


と、言うと僕は列へと並んだ。


               ●


五分ほどたち、僕の番が来た。


まぁ、危険物なんて持っていないので余裕で検査を通過できた。


体育館に入ると、ズラリとパイプ椅子が並んでいた。前のほうから入った順に座っているようだ。


(僕も座るとしよう。)


               ●


開始時間になると、館内に放送がかかった。


『間もなく、入学式を行います。席に着いていない学生は直ちに席に着きなさい。……繰り返します――』


放送が終わると、壇上に数人の教授らしき人が現れた。


(……あの中に魔学師がいるのかな……。)


と、思っていると、壇上の演台に設置してあるマイクのスイッチが入り、一人の女性が挨拶を始めた。


「ようこそみなさん、ご入学おめでとうございます。みなさんはじめまして、わたくしは天王大の学長、天王院てんおういん 露姫つゆひめと申します。」


白銀のショートヘア、スーツ姿のよく似合うすらりとしたスタイル、スーツの襟には蒼色のバラのブローチがあり、気品の良さを引き立たせている。


しかし、その姿には見覚えがあった。


(あ、あの人はさっきの人だ……。)


そう、先ほど体育館に入る時、列の前で出会った女性だ。


僕がそう思っていると、話は魔学の話へと変わった。


「この大学では日本で初めて、魔学を新たな学科に加えました。

……魔学とは本来、西洋から中心的に伝えられている学問、不思議な力を操る人々のための学問でした。」


……そう、かの有名な西洋に伝わる錬金術、鉛を金にかえる秘術だ。日本にも不老不死の研究もされていた。


「そう、そしてその力を使える者、それが魔学師。……そう!この世の遺産!!

その魔学師様が、「あの」お方が……!!あのお方がこの大学に!!

……、あぁ!!なんて素晴らしいんでしょう!!」


学長のテンションが上がるにつれ、周りがざわつき始めた。


「……、おっと、話がそれてしまいましたね。ともかく、この大学に魔学師様が来られる……、」


(ついに、魔学師が誰なのかわかるのか……。)


と、僕が思っていると、


「――ハズだったのですが……、まだこられていないのです……。どうされているのでしょうか……。」


その時だった。


「いやぁ、悪い悪い。日本はまるで人の巣窟だなぁ!おかげで人の波にもまれてしまったよ。ははははは!!」


入ってきたのは一人の女性だった。


「あぁぁぁ!!!」


僕はつい、大声をあげてしまった。


そこには、黒っぽい藍色の長い髪にシャギーで革製レザーのスプリングコートを着込んだ女性がいた。

手には服と同じく革製の手袋、同様に足にも革製ブーツ。顔以外素肌を見せていない、何ともハードボイルドな格好をしていた。

顔立ちは、どこかの芸能人かと思うほど整った顔つきに、すごく背が高くモデル並みのスタイル。

頭には魔女の様な帽子……。


そう、電車で出会ったカトリーナと名乗っていた女性だった。


「ん?……おぉ!!」


僕の声に気付き、彼女は壇上を降りて僕のほうへと近づいてきた。


「おぉ!!さっきの若者じゃないか!!」


そう言いながら彼女は僕の背中をバシバシ叩いた。


「……、ゴホッ!!あ、はい……さっきはどうも……。」


「ははははは!!!なんだお前も魔学に興味があったのか!!」


彼女は大笑いすると、後ろから露姫学長がやってきて、


「アルティミア様!!いったいどうされていたのですか!!」


「あぁ~?普通に来るなんて面白くないだろ?だから二つ前の駅で降りて歩いてきた。」


「な、なぜそのようなことを!!あなた様は人類の遺産なのですよ!!」


「そんなこと知らないね。あたしはあたしのしたいようにするだけさ。」


クックックと、彼女は手の甲を口にあて、口の端を上げ笑った。


「…………。」


僕は少し引っかかった点があったので彼女をじっと見た。


「……ん?……あぁ、名前が違うことを気にしているんだな?」


「……えぇ、確か僕が聞いた名前はカトリーナさんだったハズですけど……?」


僕がそう言うと彼女は、ニヤリと笑い、


「偽名だよ。」


(言い放った……。)


「えっと……、では本当の名前は……?」


僕が聞くと彼女は、


「あたしの名前はなんだと思う?」


「そんなの分かるわけないですよ……。」


「ほう、ならなぜあたしが貴様の名前をわかったと思う?」


「え……?」


その時、


「もういい加減にしてください!!!」


僕と彼女の間を割って、露姫学長が入ってきた。


「ルーン・アルティミア様!!もういい加減にしてください!!」


「おいおい、何をそんなに怒っているんだよ?」


「怒りますよ!!貴方様には入学式のスピーチをしていただく予定でしたのに……!!」


「まぁ、そう言うな♪」


ギャーギャー叫ぶ学長をかわしながら魔学師は、壇上に戻りマイクをつかんだ。


「貴様ら!!よく聞け!!」


そう言うと先生は、指を鳴らした。すると、全員の目の前に長文の文字列のあるプリントが現れた。


「いいか貴様ら!!今から貴様らに配った千文字以上・・・・・のランダムに書かれた文字列を5分以内に覚えろ!!法則性はない!!」


その言葉に、館内がざわついた。


「アルティミア様……!!何をなさるおつもりなのですか!?」


「なぁに、ちょっとしたゲームだよ。

……、そうだな待つ間暇だからな、お前ともゲームをしようじゃないか。」


「……、ゲームですか……?」


学長が身構えると、魔学師はニヤリと笑い、


「なに、そう身構えるな。ただのじゃんけんだ。

……、そうだな何もなしではつまらんな……そうだな、10連続で勝ったら願いを聞くというのはどうだ?」


「……いいでしょう……。貴方様がそれで満足されるというなら……。」


「よし、じゃあ初めだ!!」


               ●


「おーし、あたしの173連勝だな♪」


「くっ……。一度も勝てないなんて……。」


魔学師と学長のゲームが終わったとき、ちょうど五分が立った。すると僕たちのところに現われていたプリントが消え、代わりにボイスレコーダーが現れた。


「よーし、五分たったようだな。じゃあそのレコーダーに覚えた文字羅列を録音しろ。」


僕たち学生は訳のわからないまま録音をした。


そして、全員の録音が終わると、レコーダーも消え去った。


「よし、終わったようだな……。」


(いったいなぜこんなことを……?)


僕がそう思っていると、


「……このゲームは、魔学の才能のあるものを調べるためのゲームだったんだよ。

そして、このゲームのクリア条件は『一千文字以上の文字の羅列を瞬時に記憶し、一度も噛まずに読み切ることができる』ことだ!!このゲームにクリアしていないものは、魔学科ではない学部に行ってもらう!!」


(……え!?)


僕たちは魔学師の言葉に驚愕した。


「な、何を言われているのですか!!そんなこと認められませ……。」


「お前はあたしの約束を忘れたのか?」


学長の言葉を魔学師はさえぎった。


「……なっ!!そんな……。」


愕然とする学長をよそに魔学師は、


「結果は明日の朝、家のポストを見ろ。

――じゃあ、あたしは帰るからな。」


そう言うと、《魔学師せんせい》は体育館の扉から出て行った。



いかがでしたでしょうか?

今回はかなり長文になってしまいました(汗)

読んでいただいた方、感謝感激です!!


ありがとうございます!!


感想などございましたらよろしくお願いいたします!!


それでは(^^)/~~~

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