もう一つの決着
「‥‥‥ちゃんと手加減するのよっ!」
言い放って、彼女は白と黒の翼を広げた。
手を振って答えながら、僕は飛ばしていた機動兵装に発砲を命じる。
荷電粒子の弾丸が放たれ、彼女のかつての同僚達が、八人落ちた。同時に、四基の機動兵装を飛ばし、障壁を展開して彼女が飛びこんだ通路を塞いでやる。
「手加減、だってさ。良かったじゃないの、最後まで気を遣ってもらえて」
我ながら、冷やかな笑みだと思う。それを向けられて、そいつは哀れなほど顔を青ざめさせた。やたら豪奢な白装束が、今はひどく滑稽だ。
「き、貴様、私が誰か分かっているのか? 私を手を出せば」
「二四四起爆」
その指示を飛ばすと、白装束の背後で、爆発が起こった。外壁に大穴が空いた。白装束は、その大穴と僕を見比べ、
「き、貴様の仕業かっ」
「何を今更」
本当に、何を今更だと思う。
ここの連中は、〝侵入者〟に対して無防備すぎる。姿を見せないだけで、全然警戒されなかった。はっきり言って、ここの警備は警備としての機能を失っている。長い平和に浸っていたおかげで、彼の危機感は腐りきっていたらしい。
「さて」
僕は、たくし上げていた風防を下ろした。思考手順を、〝準待機〟から〝臨戦〟に切り替える。
「どうする? 僕としては、さっさと退いてくれた方が、色々と手間が省けて助かるんだけど」
とは言っても、実際のところ、白装束に選択肢など無いだろう。
「う‥‥‥」
彼にしてみれば、今死ぬか、後で死ぬかの違いなのだ。それを回避するためには、
「うおああああああああああっ」
剣を抜いて、白装束は突進してきた。
勇気ある行動──と、僕は思う事にした。白装束の発したそれは、悲鳴ではなく、雄叫びと思っておこう。
そう言えば──思考手順を〝迎撃〟に引き上げながら、僕はふと思った。
ちょっと前までは、彼女もこいつとどっこいのボンクラだった。
機動兵装を飛ばしながら、僕の脳裏は数日前に飛んだ。