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青薔薇の少女  作者:
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始まり

【世界の背景】

 魔法と宗教、さまざまな種族が生活をしている世界。

 属性の種類は主に色で分けられている。

 聖女限定の結界を扱う透明、光や雷を扱う黄色。炎、攻撃力上昇を得意とする赤色。闇、召喚の紫色、土地を操る茶色。草、風と仲が良い緑色。呪いや解毒に特性を持った黒色。回復を扱うオレンジ色。その中でも回復は青、緑、橙、黒の順で強くなっていく。水、氷を扱う青色。最後に神獣、聖獣が知っており、幻の魔術と呼ばれる神聖魔法の計10種類。

 次に人が持つ属性は2種から3種。多くても4種持ちの人はあまりいない。逆に無属性や1種のみの人は滅多にいない。

 種族は妖精、精霊、人、猫人と犬人を合わせた獣人、巨人、人魚、竜人、神獣、聖獣の計10種族。

 その他として、様々な場所で秩序を保って国を治めているところもあれば、暴力で市民を従えているところ、滅亡寸前の国もある。

 それから、ハーフの人は相性によって不利になる場合もあるが、古代文字で書かれているのが殆どのため、知っている人は少ないだろう。その文字を読めるものもいるが、少数であり、そのほとんどは古代文字に興味がある学者や先生と呼ばれる人だ。

 対象のメリアの特徴として、精霊族と人族のハーフであり、獣人とは動きが鈍くなる。そして「王子」「王妃」など王国の主要人物に対するトラウマを抱えている可能性がある。スキルが『生命の子の信用と正直』。内容として、無意識のうちに本音を話してしまう。しかし、自分で無意識のうちに発動してしまうため、制御不能。基礎はできているが、練習を積ませる必要がある。その他の情報は随時提出する。


 神は部下から提出された文を読みながら次にここへ来る人の情報や考えを読み解く。

「なるほど」

 神は納得したように部下が書いた紙の束を机の端に押し寄せる。そして、体が震えている紺色の髪とボロボロの聖女のような服を着た女性に声を掛ける。

「落ち着きなさい、メリア」

凛とした声ではっきりと、心の奥に響くように丁寧に話す。

 ここからは僕の力でその子を笑顔にさせ、その子自身が成長できるよう。そして、さまざまな世界を保つために、思いを持つものたちの為に。

 昔々、ある国が大穴でなかった時代。そこにはそれはそれは美しく、可憐でお優しい女性がいたそうな。女は聖女として国に嫁ぎ、王子と暮らすことになった。王子は成長するにつれ、身勝手で傲慢になっていった。殆どは嫁いできた聖女への劣等感や嫉妬で行動がどんどん過激になっていったらしい。その王子は非道な行動や裏切りを行い、その国はある国からとても恨まれてしまうようにになってしまった。それを改善しようと聖女は尽力したが、信用が戻ることはなかった。

 ただ、聖女は皆に優しく、困っていたらたとえ敵であろうと助け、守っていた。そして強大な魔力と神からの恩恵である属性のすべてに適応していたのにも関わらず、学びを怠らず、辛い顔を見せなかったという。

 ある国と戦争中の時、聖女と王子、兵隊が戦にでていた。その戦は勝利に終わったが、死傷者を双国ともに何万もの人数が出た。聖女は怪我人や戦いで魔力をいつも以上に消耗してしまった。

 それを男がチャンスとばかりに不意をついて聖女を殺そうとした。だが、聖女の友人が庇い、その友人が聖女の手当ても虚しく亡くなってしまった。聖女は男を平手打ちし、初めて人々の前で涙を流した。

 男は聖女の平手打ちに怒りが湧き、子どもを人質として聖女を言う通りにしようとした。聖女は人々をとても大切にしていたのは皆が知っていた。

 聖女は想像通りに手出しができずに投獄された。

 それから王子は反撃されないように動きを制限した。

 その1週間後、聖女は胸に弓矢が貫かれて亡くなった。住民たちが牢の窓から聖女が落ちたところを見た人がいるが、その人たちは皆、同じ事を言ったそう。

「その姿はまるで天女が空から舞い降りるかのようにゆっくりと紺色の長い髪をなびかせながら落ちていった」

 人々は国が一望できる高い場所に聖女の遺体を埋め、その隣に手紙と聖女が大切にしていた杖や本を大きな箱に入れた。それを人々は「知恵の箱」と言い、毎年、命日にはそこに集まり、黙祷をした。

 男は「あいつが悪いんだ!」と言い訳をブツブツを呟きながら、数分後に来た衛兵に捕らえられた。裏話として、その男の正体は王子なのだが、それは時期が来ればお話しよう。その王子がいかにして聖女を恨んだのか、そして殺したのか。

 それからは50年ほど王のいない国として栄えていたが、聖女の命日にその国に住んでいる精霊や使い魔たち、魔力を探知できるものが人々を「急いで国を出ろ」と口を揃えて言った。

 皆は危機迫るような声を聞き、急いで国を出た。全員が国を出たとき、大きな地震が起き、地面が落ち始めた。

 その地震が落ち着き、国を見ると、すべてが亡くなっていた。家も国の象徴だった銅像や城、公園すらも大穴に飲み込まれていた。そこにはたった一つだけ、知恵の箱の半径1メートルだけは陥没を逃れていたが、大穴の中は下が見えないほど深く、もう誰もそこには行けそうもなかった。

 人々は聖女が自分に囚われずに幸せに生きて欲しいと考えているのではないかと考え、子供達には物語として伝えていった。


 ここはどこだろう。なぜ私の服はこんなにもボロボロなのだろう。さまざまな疑問が浮かんでは消えていく。私は周りを見渡しながら考える。

 周りは真っ白な空間だ。ただ、奥の方に何かがある。まずは記憶の欠落を戻さないと何も出来ない。私は今までの記憶を辿る。

 目を瞑り、思い出していると映像が頭に流れ込んでくる。そうか。さっきまで牢の中で私はあの人に…。

 そこまで記憶を辿った時、体全体に震えと恐怖が現れ、呼吸がままならなくなった。

 友人を亡くしてしまったショックと民たちにトラウマを残してしまった。そして、私に囚われてしまうのではないか、という不安。とても申し訳なくなった。私があそこで泣かなければ、私があそこで死んでしまわなければ、そんな後悔が脳裏に浮かんだ。

「落ち着きなさい、メリア」

 自分の名前が聞こえ、顔を上げる。声のした方に顔を向けたが、何もいない。

「いいかい?ここには君の敵はいない。大丈夫。落ち着いて深く息を吐いて」

その声に合わせて呼吸をすると、だいぶ楽になった。

 突然、目の前にだぼっとした真っ白なタキシードを来た金色の髪と目をした男の人が現れた。年齢は20代後半ぐらいだろうか。

「落ち着いてよかった。それじゃ、本題に入ろうか」

「落ち着かせていただき、ありがとうございます」

「いいんだよ」

その人は間をたっぷり開けて言った。

「わかってるだろうけど、君は死んだ」

 男の人は悲しそうに眉を下げて言っていたが、「死んだ」と言われて合致がいった。やはり殺されたらしい。まあ、弓矢で胸を撃たれてしまえば死ぬだろう。

「…やっぱり。ということはここは地獄ですか?意外ときれいな場所ですが…」

「ちがうよ。ここは神がいるところっていえばわかるかな」

「神様が…」

「そう。君には天界警察として働いてほしいんだ。お願いできる?」

「警察…?」

「あぁ。要は護衛とか、犯人の確保とか、君のわかる言葉で言うと、色々やってるし、冒険者とかに近いかな」

 どうしてそれを私にお願いするのだろう。私は人々を守ることが出来なかった愚か者なのに。

 神と言った人物が手をこちらに向け、心を読んだように話した。

「君が良いんだ。ここでは自由にしていい。誰も君のことを知らないのだから。それに、君の人々を守り、笑顔にしたいという考えが僕らにとって重要なんだ。勿論、すぐに決めて欲しいとは思ってない。でも、早めに決めて欲しいとは思う」

「…はい」

 神は手を胸に置き、金色の瞳でメリアのことを見た。メリアは絞り出すような声で返事をする。

 私が冒険者として働いていいのだろうか。人々を、友人をあの人から守れなかった。でも、少しでもそれを償えるのであれば償いたい。それに守れなかった人々に謝りたい。

 それから数分後、メリアは言葉を発した。

「…わかりました。私でいいなら働かせて下さい」

 メリアは深々とお辞儀をした。

「…うん、よろしくね」

神は笑い、嬉しそうにしていた。

「あ、そうそう。口調も姿も好きなようにしていいからね。僕に敬語は不要だよ!それから、明日から働いてもらう。いいね?」

「わかりました」


 その後、メリアは神にアパートに案内された。

中に入ると玄関の隣に靴を収納できるスペースがある。そして、右側にトイレ、洗面所とお風呂があった。左側には洋室。玄関から真っ直ぐ進むとリビングとキッチンがあった。死ぬ前の自分の部屋より少し小さいぐらいの大きさだった。

「…」

「王族の君じゃ小さいかも知れないけど、ここ好きに使っていいから。それと、洋室のクローゼットの中に服入ってるから好きなの着て」

「わ、わかりました」

「また明日」

 そう言って神は消えた。

 メリアはまず洋室に向かった。ベットや鏡、タンスもあるが、それより先にクローゼットを開け、服を見る。着物やパーカー、ドレスにスーツまでさまざまな種類が置かれていた。だが、どれも真っ白で胸元に青い薔薇が刺繍されている。それに全体的に紺や青がどこかに使われている。

 メリアはシャツとズボン、ベルト、青色のネクタイを取る。

シャツの袖と襟の端にはシダの葉の模様が刺繍され、ズボンと裾にも同じものが施されていた。シャツをズボンの中に入れ、ワンポイントとして金色の羽根が描かれた黒のベルトをする。そして、ネクタイをし、邪魔にならないように星がついたネクタイピンで止め、鏡の前に移動する。

「…かわいい」

 ポツリと出た言葉は押し殺していたメリアの本音のように小さく、温かかった。

 メリアは後ろ姿も確認し、周りを見渡す。それからメリアは新しいおもちゃを貰えた子どものように興味津々で丁寧にアパートを見回した。

 ある程度部屋を見回し終わったメリアは気絶したように眠りについた。


 翌日、玄関を出ると転移されたのか、神が目の前にいた。

「あ、意外とスカート嫌いだった?」

「いえ、嫌いというわけではないのですが、友人がズボンを履いていて、着てみたかったんです。だから、ズボンが履けて嬉しいんです」

「そっか、そっちも似合ってるよ」

「…ありがとうございます」

「この人が君のことを指導してくれるよ」

 神の後ろから30代くらいの銀髪の人が頭をひょっこりと出して笑った。そして、神の後ろから出てくるとメリアに目線を合わせた。

 その人の瞳は綺麗な黄色で、マントやマントの下に着ているシャツには猫のマークが右側に刺繍されている。

「こんにちは。俺はネコって言います。お願いします。あ、ネコっていうのはあだ名だから好きに呼んでくれてもいいよ」

 そう言った男の人は丁寧に深々とお辞儀をした。メリアもそれに習い、お辞儀をする。

「お願いします」

「うん、よろしく。好きなふうに呼んでくれて構わないからね。あと、敬語も外していいよ」

「わかった。メリアです。よろしくお願いします」

「うん。男の人が苦手なのかと思ったけど、大丈夫?」

「ネコさんは大丈夫です。いい人オーラが出てる感じがします」

「あ、本当?よかったー」

 ネコは胸に手を置き、ホッとして笑う。

「相棒として、よろしくね」

「相棒として?」

「あれ?聞いてない?俺、メリアの相棒として頼まれたんだ。だから、わからないことがあったら聞いて」

「わかりました」

「うん」

「……私は全属性が使えます」

 言ってもいいのかわからなかったが、嘘や誤魔化しをするより、伝えて仕事を早く教えてもらったほうがいい。どうせ仕事をしていると知ることになるなら先に伝えておいたほうがいいと思った。

「すごい…。けど、なにか辛そうだね。どうしたの?」

「え…?」

「多分、何かが辛いんじゃないかな?」

「何かが?」

「うん、たまにいるよ。昔に何かあって、一人称や名前を変えた人」

「でも…」

「名前は気に入っていそうだし、一人称だけでも変えて話してみたら?面白いよ」

「…一人称って…どんなのがあるんですか?」

「えっとね…。僕、俺、儂…後は、自分の名前とかもあるね」

 ネコがあごに手を当てて考えながら話す。

「それって…本当にいいの?」

「うん。自分がしっくりくるものを使いな」

「僕…俺…儂…メリア…。僕…僕…」

 声に出して一人称を言うと、なんだか面白い。

「決めた。僕にする!」

「うん」

ネコが子どもの成長をうれしく思うような目でメリアを見る。

「…僕の名前はメリア。よろしく、ネコ」

「よろしく、メリア」

「うん!」

ネコが手を出し、それに合わせてメリアは握手を交わす。

「それじゃあ、さっそく仕事に取り掛かろうか」

「はい!」

ネコが部屋を出るとメリアもそれを追うように部屋を出る。


 神は再び現れ、ホッとしたように息をついた。

「…この冥界では、幸せになれますように」

神はそう願った。

【報告書】

 メリアは何百年に一度の秀才だが、最初に書いた通り、王子に殺されたことで王族に関して警戒心が強い。

 だが、一度聞いたことは頭で理解して最短で行っている。また、相手の感情を読み取り、理解することにも長けている。これは聖女、王女として生前暮らしていたからだと考える。

 紺色の髪や青の瞳に穢れや汚れは見当たらない。見つかった場合は悪魔になることを防ぐため、直ちに浄化する。その他気になったことがあればまた報告する。

以上。責任者ネコ


「ふぅ…」

報告書を書いたネコは一息つく。そして、メリアに声を掛ける。

「メリアもそろそろ休んで」

「はい。これだけ終わらせてからにします」

「…見せて」

 メリアが資料を見比べながらなにやら書き出しているようだった。俺は資料と書いている紙を見る。

 必要な情報も確実に書かれているし、不必要だと思われるところは省けている。上手だ。

「あの…どうでしょうか」

メリアが不安そうに俺の顔を覗きながら聞いた。俺はにっこりと笑って満点だと話す。

 メリアは周りに花が飛んでいるかのような綺麗な笑顔で「ありがとうございます」と言った。

 俺はそこにも影が落ちていることを再確認した。

 今日観察しただけでも何箇所か影が落ちる、もしくは無理をしている点があった。例えば、喧嘩の仲裁をする際、そして地獄からの脱走者がいないか確かめる時、そして、笑顔の時。特に笑顔には仮面が貼り付けられているように見える。だが、これは天界警察として鍛えられたからわかるのであって、普通の人には気づかれないほどの些細な変化だった。

 俺はその理由を深く理解し、メリアが本当の意味での笑顔が出来るように相棒として支えていくと心に決めた。

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