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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第97話 ありがちな悪党の末路

 デモニオは過去最高潮にイライラしていた。裏レートマージャン大会での敗北もそうだが、一番問題だったのは若造に負けてしまったという事実。

 散々邪魔をしてくれたラドロンに、こうして大きな大会で負けてしまったのだ。メンツという物は、裏社会で非常に重要な要素である。

 最近特にラドロンにはやり込められており、今回の件で周囲の組織達も距離を取り始めた。

 デモニオと同様に義賊として活動しているラドロンを、疎ましく思っている組織は他にもある。


 しかしデモニオほど明確にやり合っておらず、マージャン大会で負けたぐらいは大きな問題ではない。

 だがデモニオはそうではない。ここ数年でラドロンの妨害にしてやられた活動は群を抜いて多い。

 明らかに狙らわれている状況でありながらも、その殆どが対処できずにいた。当然周囲の評価というのも下がって来る。


「チクショウ! 何だアイツら! 急に掌を返しやがって!」


 資金的にまあまあな損失が出てしまい、バカにならない資金を失った。大会での点数は最終的な支払額に影響する。

 賭け金を失うだけではなく、点数によるマイナス分は更に引かれてしまう。元々25000点スタートの30000点返しのルールである以上、25000点どころか20000近いマイナスは追加料金が発生するのだ。

 ズークとアンナの行動により、想定以上の打撃を与えていた。今すぐ組織が壊滅する様な金額ではないが、活動資金が大きく削られた事は変わりない。

 募る苛立ちは増していく一方で、デモニオは大きなストレスを感じていた。そんな彼の下に、更に悪い報告が届く。


「デモニオ様、大変です!」


「うるせぇ後にしろ!」


「いえ聞いて下さい、マルコット子爵が失脚致しました」


 それはデモニオの後ろ盾になっている、とある貴族の家名だった。強欲の螺旋にとっては非常に重要な存在であり、彼の家を捜索されると裏取引の記録が複数見つかってしまう。

 人身売買や暗殺依頼なんて当たり前で、他の貴族に対して行った不正なども含まれている。

 もしそれらが発見されると、デモニオは確実に国際指名手配をされてしまう。もし迅速に国が動いていた場合、デモニオが本拠地に戻る頃には既に制圧されている可能性が高い。

 カーロ共和国からデモニオの本拠地まで、最低でも3日は掛かる。しかもそれは資金に余裕があり、魔動車などを使えた場合の話でしかない。

 マージャン大会で受けた損失を思えば、帰国までに1週間は掛かるだろう。


「一体何がどうなってやがる!」


「王族の前で大きなヘマをした様で、そこから芋づる式に」


「クソっ! こんな時に余計な真似を!」


 デモニオと組む様な貴族であるからには、相応の野心や欲望を持っている。更なる飛躍を求めて活動し、大失態をかましてしまった。

 そもそも元から目を付けられていたのだが、そんな事を彼らは知らない。彼らの住む国の王族が、非常に優秀だったというだけだ。

 泳がされていたのに調子に乗って、まんまと撒き餌に食い付いた。結果失脚するという、貴族社会では良くある粛清を受けただけに過ぎない。

 欲望に狩られ過ぎれば、いつかは必ず破滅する。そしてそれは、デモニオとて同じ事だ。

 このままでは巻き添えで破滅していまう。今まで隠せていた本拠地も、これでバレてしまうだろう。


「良いか、俺達だけでも逃げ出すぞ」


「ですが、一体どこに?」


「良いから! 先ずは逃げるんだ。この国に居ると、いつかは追手が来る」


 大会に出場する為に、カーロ共和国に正式に入国してしまっている。ここに来ている事も、マルコット子爵は知っているのだ。

 取り調べを受ければ、ここに居る事はすぐに分かるだろう。そうなると今度はカーロ共和国まで、デモニオの確保に動き出すのは確実。

 それが分かっているのだから、今すぐにでも逃げ出す必要がある。下手をすれば本日中に追手が迫って来ても不思議ではない。

 急いで逃げ出す為に、デモニオ達は動き出す。マージャン大会に連れて来た部下達は、10人もいない。少数精鋭で全力の移動をすれば、すぐに他国へ出国出来る。


「荷物は最低限で良い! 急げよ!」


「はっ!」


「クソっ! とことんツイてねぇ!」


 取引のあった組織達は、現在距離を取られており頼れない。下手に助けを求めて売られてしまったら、捕まって斬首刑になるだろう。

 誰も信用出来ない状況で、迅速な逃亡を求められている。このまま捕まってたまるかと、秘密裏に出国を目指すデモニオ達。

 しかし彼らは大切な事を忘れてしまっている。この国でそれなりの規模を誇る義賊集団ロ・コレクト。

 彼らもまた誇大な情報網を持ち、様々な所で活動を続けている。そんな彼らがデモニオと親密な貴族が、失脚した情報を知らない筈も無く。


 むしろここで叩けるのならば、徹底的に妨害に回るに決まっている。逃亡の先々で妨害行為を繰り返し、出国を送らせ彼らの情報を国に報告。

 最終的にはカーロ共和国から送られた部隊により、デモニオ達は潜伏先で確保された。

 大量の犯罪を行って来たその首魁が、軽い罪になる筈も無く。複数の重大な罪により、デモニオは絞首台に送られるのだった。

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