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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第90話 やっぱり学ばない男

 代打ちとして雇われているズークに、大会とは別の小規模な対局が舞い込んだ。

 大会の方に支障をきたさない日だったので、引き受けたズークは普段通り快勝を決め報酬を受け取った。

 300万ゼニーも手に入れたズークが、先ずどこに向かうかと言えばカジノである。4回戦までまだ2日あるので、これを機にもう少し稼ごうという魂胆だ。

 返済する意思はあるのだが、あまりにも頭の悪い返し方を選ぶ。こうして学ばないからこそ、ギャンブル好きを続けられるのだろう。

 大きな建物の入り口には、重厚な扉が設置されている。その中に入れば、金色をふんだんに使った煌めく空間が広がっていた。


「おお、久しぶりだなこの感じ」


 大きな金のシャンデリアがあちこちにぶら下がり、警戒な音楽と共にスロットマシンの音が響いている。

 肌色の露出が多い衣装を身に纏った若くて美しい女性達が、高級なお酒のボトルとグラスを持って場内を歩き回っているのが見えた。

 客層の多くはそれなりに稼いでいるらしい傭兵達や、やり手の商人を思わせる身なりをした男性達が大半を占めている。

 中には若い男性を侍らせたマダムや、若い女性客もそれなりに居るらしい。華やかな空間ではあるのだが、やっている事はギャンブルに過ぎない。

 自信満々に豪遊しておきながら、翌朝には身ぐるみを剥がされて表に転がされる者も少なくない。


「お客様、一杯如何ですか?」


「ありがとう、貰うよ」


「こちらをどうぞ」


 ズークもドレスコードぐらい知っているので、ギルドから借りているスーツ姿で来場している。

 見た目だけなら完璧な紳士であり、給仕係の女性からワインを受け取る姿だけは良く似合っていた。

 スッとチップを支払ったズークは、ワインを片手にポーカーの卓についた。先程の女性もそうだが、ディーラーの男性もズークの存在には気付いている。

 先日行われたエキシビションマッチの効果で、ズークが今ここアディネラードの街に居るという情報を知らない者はいない。

 しかし彼ら彼女らはプロであり、いちいち客を相手に余計な発言をする事は無かった。


「参加しても?」


「ええ、どうぞご参加下さい」


「ありがとう」


 この卓で行われているのは、通常ルールのポーカーであった。手元に配られた5枚と、2回の交換を挟んで手札を公開し合う。

 その時点で最も強い役を揃えていた人が、賭けれらた賭け金を総取りするという内容だ。

 最初の5枚を全員が確認し、ビッドの宣言と共にそれぞれが順番に賭ける金額を指定していく。


 前者と同額を賭けるコールか、それ以上の額を出すレイズか、棄権を表明する為のドロップのいずれかを宣言していく。

 そして1回目の手札交換が始まる。不要なカードを捨て、ドローする枚数を告げる。ディーラーから配られた新しいカードと手持ちを確認し、再び賭け金の確認が行われた。

 2回目の手札交換が始まり、最後の賭けが始まった。ズークの手はスリーカードとまずまずな手だったので、賭け金は吊り上げず現状維持を選択。


「俺コールだ」


「ワシもじゃ」


「では皆さん、よろしいですね?」


 ズークが初参戦したこの1回目では、ディーラーの勝利で決着した。それからも勝ったり負けたりを繰り返し、ズークの資金は大きく動かないままだ。

 微減という微妙な成績のままだったが、暫く続けていると徐々にズークが勝ち始める。言うまでもなく、使われているトランプの大半を覚えたからだ。

 僅かな傷の付き方や、色味の違いなど微妙な違いで判別をしている。この様な真似を出来る者が殆どいない為、全部に一切の違いもない完璧なカードは中々売られていない。

 どうしても個体差は出てしまうし、対策をするのは非常に難しい。魔法で自動修復する魔道具としてなら作成可能だが、それはそれで保有魔力量などから判別が出来てしまう。

 異様に目や勘が良い相手への対策は、基本的にイタチごっこになり易い。


「フルハウスだ」


「けっ! 兄ちゃん調子が良いみたいだなぁ」


「お見事です」


 カジノで勝ち過ぎると良くない事はズークとて知っている。300万ゼニーでスタートし、450万に増やした所で撤退した。

 裏レートマージャン大会とは違い、法的に認められているギャンブルを久し振りにズークは堪能してホクホクだ。

 400万を借金の返済に回し、50万で娼館に行こうかなとウキウキ気分でカジノを出たズーク。

 残念ながら彼の楽しい時間はこれで終了だ。ズークが居るのはこの街に住む全員が知っているのだから、どこかに行けばそれだけで目立つ。

 そしてそれは表の世界であれば、何処に居るか誰でも知る事が出来ると言う事。一般人が知らない地下の会場で、代打ちをするのとは状況が違う。


「最近私の応援に来ていないなぁって、思っていたのよねぇズーク?」


「ああいや、これはその……返済の為に稼ごうと思ってさ」


「言い訳は後でたっぷり聞いてあげるわ」


 カジノで遊んでいた事が、リーシュにバレない筈も無く。相変わらず頭の使い方がズレたマヌケな男は、ズルズルと引き摺られながら冒険者ギルドへ連行された。

 入手した450万ゼニーはしっかりと返済に回されて、娼館に遊びに行く資金は無くなるのだった。

■ギャンブルでの収入:450万ゼニー

■借金総額:5億3640万ゼニー

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