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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第1章 (借金が)10億の男
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第9話 頭がギャンブルの男

 ギルドのベテラン受付嬢であり、浅からぬ関係にあるカレンに夜のデートを断られてしまったズーク。

 しかし彼はめげる事なく、これからもアタックを続けようと決意していた。実に懲りない男である。

 仮にカレンが首を縦に振ったとしても、自分の支払う養育費と言う名の借金が増えるだけだ。

 脳と下半身が直結しているズーク(アホ)がギルドを出ると、知人にとある遊戯に誘われた。


 それはマージャンと呼ばれている異世界から流入した大人の競技である。

 パチンコと同様にギャンブルの一種とされているが、パチンコと違いこちらは参加者同士で金銭を賭ける点が少し違っている。

 店舗側は利用料や飲食代で収入を得る形で、賭け金との直接的な関係はない。そんなマージャンで大勝ちしたズークは、翌日とある施設に居た。


「うおおおお! 行けーーー! 差せー」


「頼むー! 逃げ切れーー!!」


「うああああああああああ!? 俺の全財産がっ!?」


 ズークが訪れた場所はケイバ場と言う、これまた異世界の文化から着想を得た遊戯施設だ。

 本来のケイバと言う競技は、普通の馬に男性の騎手が乗って定められたコース内を走るレースだ。

 レース順位を予め予想し、当たれば賭け金と配当に応じた払い戻しを受ける事が可能。

 それがこのケイバという競技の基本である。しかしこの世界で再現される際に、持ち込んだ異世界人がアレンジを加えたというのは有名な話だ。


 先ずこの世界におけるケイバとは、競走馬がレースを走るのではない。

 走るのは馬ではなくユニコーンとバイコーンだ。そしてわざわざこの2種を選んだ理由は簡単で、騎手を務めるのは全員女性だからだ。

 何故そんな事をしたのか、それは騎手がどちらであるか一目瞭然だからだ。ユニコーンは清らかな乙女しか背に乗せず、バイコーンは清らかな乙女を乗せない。


 その性質を利用して、ユニコーンの騎手しか出来ない女性と、バイコーンの騎手しか出来ない女性を観客に示す。

 言ってしまえば彼女達を、酒場の踊り子に似た存在としても楽しめる様にと魔改造したのだ。

 生娘を応援するのか、成熟した大人の女性を応援するのか、それは本人の好み次第。


「アリアーーーー! 頑張れーーー!」


「流石はリンディだぜ、今日も良いケツしてやがる」


「おい、あそこを見ろ! 見えそうだぞ!」


 1人の若い男が指を差した先では、何らかのトラブルがあったのかユニコーンが嘶きを上げて急停止し、前足を空中に上げた。

 1匹のユニコーンが激しく暴れ始めた事で、騎手の短いスカートがひらひらと舞いその中身が大衆の目前で晒された。

 そのユニコーンに賭けていた者達は絶望の叫びを上げ、ただ女性を見に来ているだけの男性達は歓喜の叫びを上げている。

 このケイバという競技では、騎手が異様に生地の少ない衣装を身に纏う。スカートは短くへそ出しで、胸元は大きく開いている。

 もちろん見えている下着は見せる目的で着用するものであるが、その真実については公表されていない。

 仮に例えそうであったとしても、彼らにとって大事なのは見えるかどうかだ。それが普段から着用している私物であるかなど、彼らには関係がない。

 金と女性、男達の欲望が詰まったこの世の地獄……男の夢が詰まった素晴らしい施設がケイバ場なのだ。

 そんな施設にズークが訪れた理由は1つで、前日にマージャンで入手した10万ゼニーを更に増やすつもりだった。


「サンダーサイレンスが堅いって嘘じゃねーか!? 俺の10万ゼニー返せよ!!」


 見事に全額をスッてしまった様だ。本当にどこまでも懲りない男である。

 普通の冒険者ならば、10万ゼニーで少しでもマシな装備を購入する。もっとも10万ゼニーで買える装備では、ズークの全力に耐えられないのは確かだ。

 しかしそれでも、現在所持している初心者用の貸し出し品より遥かにマシなのだから。

 何よりギルドを介していない、せっかくの現金だったと言うのに。それにも関わらず、ズークは再び一文無しに戻ってしまった。


 とにかくギャンブルで増やそうと考えるのは、ギャンブル好き特有の行動原理だ。

 長期的に見たら損失の方が大きいのに、目先の増減に囚われて破綻する。なまじ成功体験があるだけに、上手く行くと考えてしまう。

 それはズークも同様で、すぐギャンブルで増やそうとしてしまう。ズークが良く通っていた、高級カジノに行けるだけの現金が無いだけ今は幸いと思うしかないだろう。


「ったくさぁ~~~。あの予想屋、二度と信じねぇからな」


 辛うじて褒められる点があるとすれば、ズークはその力を利用して他人を脅す様な男ではない所だ。

 そこら辺のゴロツキであれば、予想屋に文句をつけに行くだろう。酷い者であれば、暴力も辞さないだろう。

 だがズークはその様な真似はしない。自分が選んだ予想屋が悪かったのだと、飲み込む事が出来る。


「あ~あ。しゃーない。またモンスターでも狩るか」


 しゃーないも何も最初からそうしろ定期。ズークの職業は冒険者なのだから、ダンジョンアタックでもして来いという話である。

 一応借金を返さねばならないとは思っているらしいが、いちいちギャンブルを挟むのはズークだからなのか頭が悪いからなのか。

 それともその両方なのかも知れない。もう昼になってしまっているにも関わらず、やれやれ仕方ないかと頭を掻きながらケイバ場を後にするズーク。

 この男が真面目に働く様になる日は…………永遠に訪れないのかも知れない。

■現在の収入:0ゼニー

■借金総額:8億8500万ゼニー



やれやれ系主人公の実績を解除

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