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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第84話 賭博に走る者達

 地上で行われている闘技大会がそうである様に、地下で行われているマージャン大会でも賭けが行われている。

 この裏社会の祭典で、優勝を勝ち取るのはどの雀士か。代打ちを用意出来ない規模の組織や構成員等を対象に、運営が公認で行っている優勝者予想。

 ケイバから着想を得たルールで、1位を当てる単勝と3位までを当てる3連単まで用意されている。


 当然後者の方が配当金は高額になり、高倍率のダークホースが優勝した時にはお祭り状態になる事も。

 過去に大どんでん返しを的中させた者がおり、そこで得た高額の配当金で自分の組織を作り上げるまでに至った。

 この大会では有名な話であり、自分もそうなろうと目論む者達が後を絶たない。会場内に用意されたバーの中で、そんな賭けに興じる者達が大勢集まっていた。


「やっぱり緑のゲンゾーだろ」


「バカ、今回は捲りのジョーさ。ゲンゾーはもう歳だ」


「俺はマライア姉さんに賭けるね!」


 有名な代打ちに賭ける者達が居る中で、倍率が高い者に賭ける者も少なくない。

 例えばこの代打ち業界で、それほど実績が多くない者は基本的に倍率が高く設定されている。

 そういう意味では、現状ズークの倍率はそこそこ高い方だ。ただし完全に無名という訳でもないので、初出場にしては高いとは言えない。

 どうにも微妙なラインであり、賭けている者はあまり居なかった。むしろ今回ダークホースと言えるのは、アンナの様に事前の情報が少ない者達だ。

 毎回そう言った無名の代打ちが登場しており、賭博の盛り上げに一役買っている。一発逆転を狙う者達は、毎回そういう相手に夢を託す。

 とあるテーブルでは、そんな無名に賭けた男が自慢げに語っていた。


「俺は無名の3連単に賭けるぜ」


「バカじゃねーの? そんなの当たるかよ」


「いやいや待て待て、このタカシってヤツは結構凄腕だったぞ」


 毎回起きるこの様なやり取りは、最早風物詩と言えるだろう。いつか自分がボスと呼ばれる日を夢見て、代打ち達に託すのだ。

 ただしここは、裏社会であるという事を忘れてはいけない。そんな美味しい話が、そうそうある訳が無いのだ。

 一発逆転に成功した者が、何の妨害もなく無事に会場を出られるだろうか? 荒稼ぎをした碌にバックボーンも無いチンピラを、運営がニコニコと笑顔で送り出す?

 そこまで考えれば答えは明白で、最初からそんな人物など居ないのだ。ただマヌケから金銭を徴収しているだけであり、大きな成功は得られない。

 もし万が一成功した物が現れたとしても、怖いお兄さん達に囲まれながら別室送りだ。


「誰だよタカシって、聞いた事ねーよ」


「本当だって! 1回戦を見たんだ!」


「そんなヤツに賭けるぐらいなら、俺はこのアンナって姉ちゃんにするね。美人で良い体をしてやがる」


 現在会場の方では、3回戦が行われている。対局を映しているバーのモニターには、アンナの姿がアップで表示されていた。

 全身真っ黒な美女が、美しい所作でマージャンを打っている。出自は不明で実力も不明、されども確かな存在感があった。

 彼女は本来高位の貴族であった為、亡くなった夫と様々なテーブル競技に触れて来た。チェスやオセロ、ショウギにイゴとマージャンもそうだ。


 中々に高い地位に居た彼女の夫は、身分に相応しい知性を持ち戦術指南に長けた男だった。

 とある国で軍の副指令を任されており、いずれは総司令官になると思われていた。しかし裏社会の者に命を奪われ、残されたアンナは家名を捨ててまで復讐者に転身。

 かつての夫に教わった様々な戦術を駆使して、こうして代打ちとして勝ち上がって来た。


「見ろよ、今の打ち筋は天才的だぞ」


「…………やっぱタカシは辞めようかな」


「頭も良いなんて最高だぜ。あんな美女と一晩楽しめねぇかなぁ」


 優勝を予想する賭けでは、準々決勝開始前までなら賭ける対象を変える事が許されている。

 ただし確定が遅くなる程に、配当金にマイナス補正が掛かってしまう。1回戦の開催中に賭ける対象を確定すれば、配当金は100%の換金率で払い戻される。

 しかし準々決勝開始前のギリギリまで粘ってしまうと、払い戻される配当金が50%まで落ちてしまう。


 大損を避けるリスクヘッジとしては良いかも知れないが、そこまでしてギャンブルに賭ける意味があるのかどうか。

 そんな判断が出来るのであれば、こんな場所で燻ってなどいない。最低でも代打ちの立場を目指した方が幾らかマシだ。

 それにも関わらず、こうして賭けに走る者が減らないからこそ成り立っている。ビッグドリームを掴む日を夢見て、こうして賭博に勤しむのだ。


「悪い、1万ゼニー貸してくれねぇか?」


「はぁ? お前絶対返せねぇだろ」


「頼む! もう1万だけ賭けたいんだ!」


 また別のテーブルでは、友人にお金を借りようとしている者も居た。ギャンブルに使う金を他人から借りる様な者に、返済能力は先ず無いだろう。

 事実としてここに居るのは、傭兵として上手く行かなかったチンピラやゴロツキばかりだ。

 Sランクなのにどうしようも無い、バカでアホな高額債務者とは全く前提条件が違うのだから。そんな男達の集団は、一晩中賭けの話で盛り上がるのだった。

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