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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第83話 リーシュの2回戦

 ズークが裏社会の代打ちを相手にマージャンを打っていた頃、リーシュは闘技大会に出場していた。

 大会運営からは予選を免除しても構わないと提案されたが、ちゃんと予選から出場するとリーシュは断った。

 隣国ローン王国でも最強格の剣士として名高い金髪の美しい女性、金色の剣聖が出場するとあって予選から満席という異様な盛り上がりを見せている。


 ここ数年でこれ程に盛り上がった闘技大会は無く、アディネラードの闘技大会としては鼻高々だ。

 ズーク達が見せたエキシビションマッチから始まり、話題性が抜群の予選が続き観客の満足度もかなり高い。

 そうして迎えた2回戦、リーシュの対戦相手は同じくAランク冒険者の男だった。


金色(こんじき)の剣聖と雷槍の戦いとは豪華だよな」


「2回戦で観られる様な対決じゃないぜ」


「なあ、お前らはどっちが勝つ方に賭けたよ?」


 リーシュの対戦相手は、有名なフリーの冒険者だ。リーシュの様に特定のパーティに属する事はなく、こう言った闘技大会へ頻繫に顔を出している30代の男性だ。

 派手な短めの金髪を逆立てた頭部は、二つ名に相応しく雷の様に見える。やや軽薄そうな顔立ちではあるものの、それなりに整ってはいる。

 女性のファンが多くおり、色々と有名である。同じ金髪という意味でも、2人は立場がそっくりだった。

 彼はダレンと言う名前の武闘派で、常に強い相手を求めて来た。武者修行や道場破りを繰り返しいる物好きでもある。

 Sランクにこそ至れてはいないものの、その強さは本物だ。高速で繰り出される槍と、雷の魔術を使い分ける猛者であった。


「おい始まったぞ!」


「いいぞやれやれ!」


「かぁー! やっぱ剣聖様は美人だよなぁ!」


 純粋に強者同士の戦いを楽しむ者や、容姿に恵まれた美男美女を観に来た者など客層は様々だ。

 闘技場の中央に置かれたリングの上で、2つの金色が戦う姿を大勢が見守っている。雷と槍を駆使して攻め立てるダレンと、風を操り大きな剣で応戦するリーシュ。

 スピード重視の戦闘スタイルのダレンに対し、重い一撃と正確さを重視したリーシュがぶつかり合う。


 連続で繰り出される突きのラッシュを大剣が捌き、強烈なカウンターが返される。一撃に込められた重みで、防御したダレンの腕に僅かながら痺れを生じさせた。

 見目麗しい金髪の女性ながら、成人男性すらも凌駕しうる強烈な剣戟を見せたリーシュ。場内に響き渡った大きな金属音が、その激しさを物語っていた。

 戦闘について詳しい事は分からなくとも、それだけで観客は大盛り上がりだ。


「おいおい見たかよ何だあれ!」


「あれが金色の剣聖か……」


「とんでもねぇお嬢ちゃんだな」


 カーロ共和国は傭兵業が盛んな国であり、こう言ったイベントを好む国民は多い。

 そんな中で見せたリーシュの攻防は、目の肥えた彼らを唸らせるだけの技量が詰まっていた。

 本来なら筋力で負けてもおかしくない男女の差を、こうも軽々と逆転してしまったのはとても大きい。

 強き者が好まれる国民性故に、リーシュを支持する観客達が一気に増えた。予選と1回戦では相手が弱すぎた為に、ここまでの力を出すまでも無かった。

 リーシュはAランクになってから、あまり闘技大会に出ていない。久しぶりの出場であり、彼女の戦闘を初めて目にした者は多かった。


「ローン王国最強格って噂は伊達じゃねぇな」


「この前倒された災害級モンスター、あのズークと一緒に戦っていたらしいぜ」


「Sランクの相棒までやってんのかよ、そりゃあ強いわけだ」


 噂話には色々と尾ひれがつくものだが、こうしてリーシュに関する誤解が生まれていた。別に彼女はズークの相棒をやっている訳ではない。

 ただ友人として行動をしつつ、ズークがサボらない様に監視役を任されているだけだ。

 今回も付き添いを兼ねて一度出てみたかった、この闘技大会に出場しているだけに過ぎない。


 なのだが事情を知らない観客達には、そんな風にはとても見えない。貴族位を持つSランク冒険者であるズークが、複数の女性を囲っているのは有名な話。

 昔からそう言った立場となる偉人達は多くおり、この世界では特に違和感を抱かれる事はない。

 ただ1人だけと添い遂げる事を尊ぶ文化もあるものの、どちらも全否定される程ではない。それ故に妙な勘違いが起きてしまったのは仕方のない事だ。


「またズークの女が増えるのかよ~羨ましいぜ」


「あんな美人まで囲えるなんて、Sランクは良いよなぁ」


「あれだけ強いんだ、そうなっても不思議じゃないさ」


 強者を尊ぶ国柄だけに、ズークのハーレム形成を否定するものはあまり居ない。

 他国から来ている者達ならばその限りではないが、どうしてもカーロ共和国の人間が多い以上は肯定的な意見が中心となる。

 戦闘が進めば進むだけに、リーシュがズークの相手に相応しいかどうかの話に移っていく。


 雷撃を防ぎ強烈な一撃を叩き込み、冷静に戦闘を続けていく姿は素晴らしいの一言に尽きる。

 最終的には見事なカウンターの一撃で、場外にダレンを吹き飛ばしたリーシュが勝利した。

 本人が知らない所で勝手にズークの嫁扱いをされてしまい、試合後に怒ったリーシュから文句苦情を言われるズークであった。

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