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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第80話 続・とあるギルドの鑑定士見習い

お待たせ致しました!

 ズークがいつも通りアホな日々を送っている頃、ローン王国では平和な日々が続いていた。

 一時期危うい事件もあったものの、今では特に問題は起きていない。現在はアテム大森林の現状を知る為、幾つかのAランクパーティが他国から呼び戻され調査中だ。

 騎士団と冒険者達が合同で調査を行い、他に異変が起きていないか調べている。調査は数ヶ月に渡って行われる予定で、規模の大きな戦闘が続いていた。


 その結果王都であるキャッシュの冒険者ギルドには、大量の素材が何度も持ち込まれている。

 騎士団が得た素材は国で管理され、冒険者が獲得した素材は冒険者ギルドに送られ換金を行う。

 当然その鑑定を行うのは鑑定士が中心となっており、見習いのレオンは連日忙しそうに働いていた。


「おいレオン! 次が来たぞ!」


「ちょっと待って下さいよ、マーク先輩!」


「のんびりしている暇はないぞ!」


 レアな鑑定の魔法が使えて魔力も高めなレオンは、どうしても主力メンバーとして扱われる。

 鑑定士としてはまだ見習いの身分だが、こうも大量の素材が送られては休む暇もない。

 次々と馬車で素材が送られて来ており、いつまで経っても鑑定と換金の作業が終わらないままだ。

 10を超えるAランクパーティがアテム大森林に留まり続ける間、こうして毎日の様に素材が送られて来る。


 現在最もホットなダンジョンから呼び戻された彼らは、とにかくお金を稼ごうと必死なのだ。

 広大なダンジョンの攻略が進めば進む程、良い物が市場に並ぶようになる。欲しい物が出回った際に、お金が無いと最悪手に入らない。

 全てが大量に入荷されるとは限らず、一点ものであればとんでもない値段になる事も。

 呼び戻されたAランクパーティ達は、Sランクを目指して良い装備を集めようとしている。それ故に資金調達には余念がない。


「ここからは次のパーティ、『狂戦士の集い』の分だ! 間違って前のパーティと混ぜるなよ!」


「は、はい先輩!」


「これが終わったら俺も手伝うから、もう少し頑張ってくれ!」


 大量に届くアテム大森林の素材と、通常の処理として渡される素材の両方を捌かねばならない。

 こうなる事を見越して、増員はされているのだが如何せん数が多い。通常時の3倍以上の作業が行われており、冒険者ギルドは大忙しだ。

 ダンジョン攻略の最前線を走る様なパーティであれば、こうしてバリバリと討伐を続けられてしまう。

 生態系を大きく破壊しない程度に手加減はされているが、念の為にと広範囲に渡る間引きを行う目的も含まれていた。


 ファウンズ支部長の想定を上回るペースで討伐が続き、受付と鑑定は暫く落ち着きを取り戻す事はなさそうだ。

 どうにかこうにか作業を続けたレオンだったが、忙しさのあまりミスを犯してしまう。2つのパーティが提出した素材を、取り間違えてしまったのだ。

 何とか問題にはならずに穏便に事が済んだものの、運悪くファウンズ支部長が受付に居たタイミングだった。


「忙しいのは分かっておるがな、こういう時こそ注意せねばならんぞ」


「はい……すいません」


「まだ見習いでも鑑定士は鑑定士だ。しっかりしろよ」


 確かに悪いのはレオンであったが、周囲のフォローが不足していたのも原因の1つだ。

 一部の職員はそれを理解していたが、自分まで怒られるのは気が引けた。直接的にミスをしたのは自分ではない、そんな意識はどうしても働いてしまうもの。

 もしもカレンがこの場に居たら、フォローに回った場面であったが運悪く席を外している。1人怒られてしまったレオンは、自らを責めつつ職務に戻った。

 やはり自分の様な存在では、迷惑を掛けるだけではないか。そんな思考がレオンの中で渦巻いている。その日の業務が終わるまで、レオンの気分は沈んでいた。


「ねぇレオン、叱られちゃったんだって?」


「あ、カレンさん。その、はい」


「1回のミスで随分暗いじゃない? はぁ、良いわ。ちょっと付き合いなさい」


 冒険者ギルドのベテラン受付嬢であるカレンに連れられ、レオンは仕事終わりに彼女と食事をする事になった。

 身長こそは平均的ながら、スタイルは抜群に良い30歳のお姉さん。右目の下にある泣きボクロが印象的な、茶髪の似合う美しい上司。

 そんな存在に誘われて、断る理由なんて先ずないだろう。ましてやレオンにとっては、憧れの女性でもある。

 2人だけで食事を共にするなんて、憧れのシチュエーションでしかない。しかし今のレオンは凹んでおり、手放しでは喜べない状況であった。


「そんなに凹まないの。それとも私と居ても、つまらない?」


「い、いえ! カレンさんと食事なんて、願っても無い機会ですし」


「ふぅん。いつも女性にはそう言っているのかしら?」


「ち、違いますよ! カレンにしか言いません!」


 まだまだ女性との経験が浅いレオンは、カレンに揶揄われた事に気付くのが遅れる。

 お酒を片手にクスクスと笑うカレンを見て、自分が何を行ったのか漸く理解した。しかしそれは本心であったので、嘘ではないと弁明する。

 そんな彼を見たカレンは、特別に慰めてあげても良いかなと少しお酒の入った頭で考えた。

 元々可愛らしい後輩だと思っていたし、ズークとは違って真面目で誠実な青年だ。印象は悪くないし、異性として見る事も出来た。

 その後の2人がどうなったのか、知っているのは鑑定士見習いとベテラン受付嬢の2人だけだ。

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