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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第78話 エキシビションマッチ

 カーロ共和国が誇るアディネラードの闘技大会。その開会式が行われている。カーロの代表議員が挨拶をし、開会を宣言した。

 集まった観客達は大盛り上がりで、闘技場周辺の屋台も大繁盛。近隣で飲食店をやっている店舗では、闘技大会の映像が流れるモニターを設置している店が殆どだ。

 一番人気は当然闘技場の観客席だが、チケットが取れなかった者達はそれらの店舗に向かう。

 普段はお酒を提供しない様な店舗でも、闘技大会の期間中は朝からお酒を解禁している。

 アディネラードでは最も稼げる期間である為、どこの商人も全力で乗っかる一大イベントだ。


「うちの串焼きは大陸一だぞ!」


「東方名物たこ焼きはいかが~」


「そこの兄さん! エールでも1杯どうだい?」


 商店や屋台の客引きがあちこちで行われ、街中がとても賑やかだ。騒いでいない所がどこにも無いのではないか、そう錯覚してしまう程にあちこちで人々が騒いでいる。

 それもその筈で、これから開会式の名物が行われようとしていた。アディネラード闘技大会のエキシビションマッチ。

 開会式が行われる1日目の夜、様々なイベントが日中に行われた後に締めくくり。

 それは伝統の一戦であり、毎年人気のある有名な戦士達が激闘を繰り広げる。

 夜空に大量の花火が打ち上がり、闘技場のリングに向かって2人の男達がゆっくりと向かっていく。


 1人目は旅人風の衣装を着た、茶髪の渋い30代の男性だ。幻影剣の異名を持つSランク冒険者であり、現時点でSランクモンスターの討伐数が第2位の有名人。

 ルーカス・エルマーが登場した事で会場は大盛り上がりだ。そしてもう片方は漆黒のマスクとマントを纏った謎の剣士。

 元々はこのスタイルにする事で、途中まで相手が誰か分からないという楽しみ方がされていた。

 戦闘中に偶然被弾した風に装い、仮面が吹き飛んでしまい正体が露見するという演出だ。


 しかし現在では宣伝効果が最優先であり、集客目的で正体が誰か分かっている。一応かつての伝統を守る意味も少々保つ為、仮面の剣士が誰とまでは明言されてはいない。

 分かるでしょう? ね? という名目だけは守っているのだ。そんな2人の戦闘が始まり、光り輝く筒状の刀身が夜のリング上で煌めく。

 巨大な照明に照らされた薄暗い会場では、観客達が本日1番の盛り上がりを見せている。


「おいおい今年もすげぇな!」


「生で幻影剣が見られるとはな」


「最高位の魔法剣士同士で対決なんて、早々見れるもんじゃねぇよ」


 周囲に4本の生成した幻影の刀身を浮かべたルーカスが、積極的に斬りかかる。

 一般の観客にも目で追える程度の速度で行われた攻防が続き、射出された刀身が漆黒のマスクを弾き飛ばした。

 演出としてのノルマは達成し、謎のマスクを被った剣士の正体が露呈する。言うまでもなくマスクの下にあったのは、赤髪の無駄に顔だけは良い男。


 借金まみれのSランク冒険者、ズーク・オーウィングその人である。もちろん観客達は借金の話を知らないので、今ホットな男の登場に大きな歓声を上げた。

 皆が分かってはいたけれど、それはそれこれはこれ。たまに運営がフェイクを混ぜる時があるので、ズークを見せかけてリーシュでしたという説も一応は残っていた。

 それでもやっぱり8割方はズークだと思われていたので、サプライズ感はそう高くない。けれども観客達はそんな事を気にしてはいないのだ。


「まあ素敵なお方ですわね」


「実物は映像よりカッコイイわね!」


「キャー! ズーク様―!」


 今回のエキシビションマッチは、女性客が非常に多い。30代の若さと渋さを併せ持つイケメンと、今をときめく話題の美丈夫が揃うと言うのだ。

 是非ともこの目で見たいと願った女性が、沢山集まっている。いつから生まれた文化なのかは不明だが、世の女性達が陰で楽しんでいる秘密のお楽しみ。

 BLという暗号で呼ばれている、女性専用の特別な冊子が裏で販売されているのだ。

 内容としては美しい男性同士のロマンスが描かれているという噂だが、その真実は女性しか知らない淑女の嗜みである。


 その文化を知っている者達にとっては、このイベントは極上の映像でしかない。後に判明する事だが、イベント終了後には気絶している女性客が多数発見される。

 何かの犯罪かと思われたが、誰一人として被害を届け出なかったので捜査は早々に打ち切られて終わった。

 そんなこの後で起こる謎の事件は良いとして、ルーカスとズークの戦闘は徐々にテンポが上がって行く。

 ここからは強者のみが目で追える、出場者向けのパフォーマンスだ。一般客向けの時間は終わりを迎えた。


「何だ今のは!? 2属性の魔法剣を同時使用だと!?」


「あ、あれが本当の幻影剣か!?」


「魔法で作った盾!? これがズーク・オーウィングの才能か」


 暫くは最高位の冒険者に相応しい激戦が繰り広げられた。素人には何が起きているのか良く分からないが、とにかく激しい攻防が起きているのだけは分かる。

 多種多様な魔法と魔道具の剣から発生するエフェクトが、あちこちで煌めいて幻想的な光景を作り上げていた。

 最後はお互いの首元に刀身を突きつけ合う形で決着。引き分けで終了となったが会場の盛り上がりは十分過ぎる程だった。

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