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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第77話 マージャン大会1回戦

 カーロ共和国の首都アディネラードには、複数の地下空間が広がっている。

 かつて戦場だった頃に、地下から侵略を狙った者達によって生まれたトンネルがベースだ。

 そこから更に深い位置に、後ろ暗い事をしている者達が縄張りを広げている。その一部を買い取ったモノ好きがおり、彼の指示で多目的施設を建築した。

 何故そんなものを作ったかと言えば、人には言えない趣味を持つ者達が欲求を満たす場として利用する為だ。そこではマルサボールと呼ばれる集会が行われている。

 時に奴隷たちの闘技場を開催したり、人身売買のオークションが開かれたり。様々な悪意ある催し物が開催されて来た。


 その中ではかなりマシな部類なのが、この裏レートマージャン大会である。裏社会に生きる者達が大金を巡って、威信をかけた争いを繰り広げる。

 シンプルに代打ち達の手腕を楽しむも良し、誰が勝つかの賭けに乗っても良し。敗北者となった者達の、折檻される様子を楽しんでも良い。

 様々な楽しみ方が人それぞれにある。そんな闇のゲームは現在1回戦が行われており、ズークもまた参戦中だ。


 予選では400人以上いた参加者達は、200人までに絞られている。ここから更に対戦を進めて、最後の1人になるまで争い合う。

 その様子はモニターで確認出来る様になっており、観客達はお酒を片手にバーで飲みながら観戦している人達が殆ど。

 現在ズークの居る卓は(とん)2局、彼の持ち点は25000点のまま。北家(ぺーちゃ)からスタートして現在は西家(しゃーちゃ)である。開始時点で西(しゃー)を2枚持って居たズークは、早い段階で仕掛けた。


「ポン」


 西が3枚になり自風牌(じかぜはい)の役が成立する。他にも三元牌(さんげんはい)や東などが重なれば、より高い手に組み上げて行く事が可能だ。

 現状は手配(てはい)(はく)が1枚残っているので、2枚目を引ければ美味しい展開に期待出来る。残る手配は筒子(ぴんず)が中心であり、混一色(ほんいつ)に持って良ければ理想的だろうか。

 更に赤五筒(あかうーぴん)も1枚抱えているので、伸びれば満貫(まんがん)も見えて来る。3巡目でこの状況ならば、期待値はかなり高い。

 結局は運次第なので、普通ならば五分五分と言った所か。しかしここで打っているのは一般人ではない。


 Sランク冒険者という人並外れた存在故の動体視力と、無意味にギャンブルでだけ発揮出来る高い記憶力。それらがあれば望んだ通りの展開に持って行くのは難しくない。

 ズークは残る3枚の白がまだ山に残っているのを記憶しており、どこにあるかも牌の傷で把握している。

 ギャンブルでのみ使えるズークのオリジナルスキル、【完璧完全記憶(パーフェクトメモリー)】は本日も健在だ。

 もっと他の事に使えと言いたい能力ながら、その効果はしっかりと発揮していた。4巡目で2枚目の白を引き当て、3枚目を引く為に2回目の鳴きを入れる。


「チー」


 上家(かみちゃ)の捨てた七筒(ちーぴん)を鳴いて、赤五筒を含んだ五・六・七を晒す。他家(たーちゃ)から見えている情報は西と筒子の3枚のみ。

 捨て牌はまだ一九字牌のみであり、この時点で混一色と決め込む事は出来ない状況だ。そのまま進んだ7巡目、3枚目の白を引き当てて聴牌(てんぱい)

 八筒(ぱーぴん)2枚を頭に一筒・四筒の両面(りゃんめん)待ちに構えた混一色が形となった。予定通りの展開であり、牌を入れ替える様なイカサマも必要では無かった。

 1巡目で7・8割の牌に刻まれた傷を覚えきるという離れ業は、ある意味で一番のイカサマかも知れないが。

 ともかく順調に手を完成させたズークは、後は和了(あが)るのみである。更に対局は進んで10巡目、ズークは次に引く牌が何かを既に把握していた。


「ツモ」


「クッ……」


「自風牌、白、混一色、赤ドラ。満貫だ」


 現在の東家が恨めしそうな視線を向けるが、ズークは気にせず淡々と進める。33000点となり早速トップに躍り出た。

 ただのマージャン大会であれば仕方ないと流せる事も、大金が懸かった本戦ではそうもいかない。

 背後に居る組織に重宝されている打ち手ならともかく、ただ金の為に参加した半端者なら敗北は許されない。


 そんな者達が敗退すれば折檻は確定で、最悪は命の危険にも晒される。だからこそ彼らは必死であり、勝つ為になら何でもやる。

 例えそれがSランク冒険者という、ある意味危険人物の目前であったとしても。東3局が開始されてから暫く経った時だ。

 ズークの前にある山から牌を引いて、自分の下へと対面が手を戻していた最中にズークが腕を伸ばす。


「それは流石に下手過ぎるだろ?」


「な、何の話だ! 離せ!」


「河と入れ替えるなら、もっと上手くやりな」


 以前にズークも見せていた、河の牌と引いた牌を入れ替えるというイカサマ。定番中の定番であり、誰もが警戒しているやり方だ。

 ズークぐらい自然に素早く行えるならともかく、あまりにも下手過ぎる遅い動作では簡単にバレる。

 予選までなら通用したかも知れないが、本戦にまで進出して来る猛者達を相手にあまりにも迂闊だ。   


 他の3人にも見抜かれており、言い逃れは出来なかった。この大会ではイカサマがバレた場合、最初に見抜いた相手に10000点の罰符を支払うルールになっている。

 つまりこの時点でズークは43000点という頭一つ抜けた点数となった。逆に対面の男は絶望的な表情を浮かべるしか出来ない。

 これで完全に流れが出来てしまい、ズーク1回戦で圧勝した。

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