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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第71話 ダンジョンのあるある

 カーロ共和国内にあるBランクダンジョンの1つ、ムーエルトの回廊を進み続けるズークとリーシュ。

 2人だけであっても格下が相手なので苦戦をする事は無い。ただしこの様な行為は、冒険者の規定によって制限が課せられている。

 より上位に居る者達が、格下のダンジョンで無双を続けて荒稼ぎ。そんな行為を許していたら、あまりに不健全な環境が生まれてしまう。

 故に認定されたダンジョンのランクより高いランクの冒険者及びパーティは、そのダンジョンに複数回挑んではいけない。

 というルールが世界共通の常識である。もちろんズークとリーシュはその規定を理解しているので、2周目なんて考えていない。この1周で出来る限り最高の結果を出すつもりだ。


「ちょい待ち! 俺の勘がここは怪しいと言っている」


「それ、もう5回目なんだけど」


「まあ待てリーシュ、今回こそガチだ」


 ギャンブルにハマってしまったズークは、こうして何事も勘で片付けてしまう。それ自体はそこまで悪い行為ではない。

 インスピレーションというモノは、馬鹿にならない重要な要素だ。全ては地道にコツコツと、それだけでは成立しない事はこの世に溢れている。

 直感を信じて行動する、ただそれだけで上手く行ってしまう事だって中にはある。ただそのやり方で成功した人達は、上手く行かなかった人達と比較してどうだろうか?

 それで必勝法を得られたのかと言えば、正直微妙なラインだろう。


「さあこれで! …………は?」


「うん、まあ。見つけはしたよね」


「いやなんで、こうなるんだ?」


 ズークが違和感を覚えて調べた壁、それは隠し扉であった。いざ開けてみれば、そこに広がっていたのは戦々恐々とした戦場。

 どういう経緯かは分からないが、幾つかのパーティが大量のモンスターと戦っていた。

 恐らくはトラップに引っかかってしまった人々だろう。津波の様に押し寄せるモンスター達は、容赦なく冒険者達に襲い掛かっている。

 多分誰かが不正解を引き当ててしまったから、この様な状況になっている。それは分かるとしても、このまま関わるのは面倒そうだ。

 ズークがそんな事を考えている間に、正義感の強いリーシュは既に駆け出していた。


「行くわよズーク!」


「ですよねぇ! 知ってた!」


「はぁぁぁぁ!!」


 混戦状態の戦場に参戦するリーシュとズーク。属性魔法が使えないリーシュは、弱点を突く形でアンデッド系のモンスターを攻める事は出来ない。

 しかしその圧倒的な剣技をもってすれば、Bランクのダンジョン出現するモンスター達では相手にならない。

 猛烈な勢いで大量に出現しているモンスター達を殲滅していく。遅れて参戦したズークが、聖属性魔法を使って順調に数を減らして行く。

 あまり乗り気で無かったズークの活躍以上に、リーシュの功績が大きかった。有利とは言えない状況を軽々と乗り越えて、どんどんモンスターを狩り取っていく。


「どきなさい!」


「え? あっ」


「戦えないなら下がっていろ!」


 苦戦している冒険者達を追い越して、リーシュとズークが戦場を駆け巡る。

 この中で誰がしくじったのかは分からないが、彼らが踏んだのはモンスターボックスと言われている有名なトラップだ。

 ダンジョンという謎の多い迷宮で、ほぼ必ず存在している。引っかかってしまえば、大量のモンスターが襲来するので危険度が高い。

 パーティが全滅してしまう原因として上位に位置する死因の1つだ。では大量の冒険者達が徒党を組んで、大人数で攻めれば解決か、というとそんな事はない。

 どういう理屈かは分からないが、必ずその人数で捌くのは厳しい数のモンスターが出現する。まるで試練であるかの様に。引っかかってしまった者達を攻め立てる。


「ズークあそこ!」


「ったく! 世話が係るな!」


「良いから!」


 ピンチに陥っていたパーティを見つけたズークとリーシュは、急いで救援に入る。

 ズークが聖属性魔法を放ち、生まれた隙を利用してリーシュが切り込む。

 あわや全滅の危機だったパーティが救われた。後で判明する事だが、彼らはCランクのパーティだった。

 Bランクのダンジョンに挑むにしてはやや未熟で、この状況でも全滅しないだけの連携は取れていた。

 それでも今では限界に近く、このまま継続して戦闘を続けるのは難しい。仕方がないのでズークとリーシュが彼らのフォローに入る事で、戦場は徐々に変わっていく。


 Cランクパーティを守る必要が無かったなら、もう少し早く掃討出来た。しかし現実はどう嘆いても帰られない。

 結局は最後まで面倒を見る戦いを強いられたズークとリーシュは、実力に反して結果がイマイチな形で終了した。

 それでもこの場において、2人の活躍を過小評価する様な愚か者いなかった。誰もが2人の救援活動に感謝し、生き残った事を喜んだ。

 ただの荒稼ぎだった筈の行為が、思わぬ形で多くの人々を救った。その結果かどうかは分からないが、モンスターボックスをクリアした事で出現した宝箱は豪華だった。

 倒されたモンスターの殆どが、ズークとリーシュによる討伐だったので美味しい所は貰って行った。

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