第7話 多分この人何も考えていないと思うよ?
ズークがオーク達の砦に侵入して10分程経過し、辺りはオークの死体だらけになっていた。
装備が心許ないとは言え、ズークはSランク冒険者だ。ただのオークが30匹程集まったとて、物の数ではない。
サクサクと処理を進めたズークは、最後の戦いを始めようとしていた。
「ったくよぉ~支部長も剣ぐらい残してくれたらもうちょい楽だったのに」
「グオオオ!!」
敵から奪った棍棒が壊れるまで使用し、次の武器を奪う。それを繰り返してオークの集団を次々に討伐していった。
そして最後に残ったオークキングが、ズークと対峙していた。4メートルほどの巨体に、薄緑色の肌。
大きな牙が生えた醜悪な王が、巨大な鉈を手にズークへと向かって来る。しかしオークキング程度ではズークの相手にもならない。
オークキングの目では追い切れない素早さでズークは駆け抜け、オークキングと交差する瞬間に抜き放った借り物の銅の剣を振るう。
「ライトニングエッジ」
「グオ……ォ」
紫電を刃に纏わせる中位魔法剣を使い、正面から縦にオークキングを真っ二つに切り裂いた。
高電圧により焼け焦げた肉の匂いが周囲を漂う。中古品の安物では耐久力が足りず、ギルドから借りた銅製の剣は砕けて地面にバラバラと落ちて行く。
ズークは一応最低限の体術も使えるので、素手で戦えなくはないが彼の本職は魔法剣士だ。
どうしても剣を使う方が戦い易い。最初の1匹と対峙した時の様に、ただの蹴り技でオークの腕を砕く程度の事は可能ではある。
だがオークキングレベルだとやや決定打に欠ける為、ギルドで借りた安物の剣を使用した。
ズークの借金返済を思えば、オークキングでもギリギリ足しになる程度の獲物でしかない。
こんな手間を掛けてまで戦うメリットなど本来全くないのだが、ズークにはそれでも戦う理由があった。
「さて……」
ゴブリンやオークの様なモンスターが人間等の女性を攫う場合には、基本的に繁殖目的である。
つまり村から攫われた女性達は、あまり気分が良い話ではない目に遭った可能性が高い。
村の女性が攫われたとズークは聞いているが、全員が生存しているかを先ず確認せねばならない。
オーク達が作ったと思われる倉庫の様な建物の中には、10人の女性達が居た。
誰も死亡していなかったのを幸運と取るか、不運と取るかは人によるだろう。
手前にいる5名の女性達はまだ服を着たままなので、彼女達は無事だったと思われる。
しかし奥で暗い表情をしている5名は、被害に遭ったのだろう。服がボロボロになっていた。
「あ、貴方は?」
「俺はSランク冒険者のズークだ」
「えっ!? あのズーク様!? うそっ!?」
「オークは殲滅したから安心してくれ」
オークメイジから奪った杖を使い、全員に中位聖属性魔法のクリンリネスをかけて回る。
生活魔法であるクリーンの完全上位互換であり、全身を清浄な状態にする魔法だ。
これは体内も含めて綺麗にする事が出来、毒等も一瞬で消し去る。
しかしこれだけでは解決とは言えない。幸いにも最上級のアイテム袋と、高く売れない品々は没収されておらず現在もズークは所持している。
彼はその中から5本の薬品が入った小瓶を取り出し、奥に居る女性達5人に手渡す。
この薬は妊娠を防ぐ効果を持つ魔法薬で、基本的にこの様な事態が起きた時に使用される物だ。
1週間以内の行為であれば、完全に無かった事に出来る。暴漢に襲われた場合にも有効である。
だがそれによって負った心の傷までは癒せない。
「もう……私たちは……うっ……嫁に行けない……」
「うっ……ぐすっ……」
5人の女性達は涙を流す。助かった安堵と、残酷な現実の両方が彼女達を襲う。彼女達は村でも人気の高い容姿に優れた女性達であった。
ゴブリンやオーク達に人間がどう見えているのか分からないが、人間に似た美的感覚を持っているらしい事は判明している。
つまりなるべく美しい相手を求める。その結果犠牲に遭うのは、いつも見目麗しい者からと決まっている。
この5人は王都では上位に入れない容姿ではあっても、農村や田舎町では十分通用する見た目をしていた。
だからこそ、こうなってしまったのも無理は無い。ズークは冒険者をやっているだけあり、こんな光景を見るのは初めてではない。
そしてズークは、いつも決まってこう言うのだ。
「だったら俺が貰うよ」
「…………えっ?」
「5人共さ、相手に困るっていうなら俺の所に来ればいい」
ズークが生活費を払っている村娘の3人は、こうやってズークに助けられた者達だ。
汚されてしまった相手であろうと構わない、そんな事を見た目だけなら赤髪のイケメンであるSランク冒険者が言うのだ。
これで首を縦に振らない者はそうは居ない。涙を流しながら頷く5人を助け起こし、ズークは10人の娘達を村に連れて帰った。
どうせアテム大森林には稼ぐと言う目的で来たのだから、ついでにオークやゴブリンを間引く事にしたズーク。
ただ無暗に殲滅すると、生態系が変わって逆に面倒な事になり兼ねない。その後の様子を見るのも含めて、ズークは2週間ほどこの村に滞在した。
当然ながら例の5人には手を出すので、結果は言わずもがなである。この様な男ほど遺伝子が強いのか、後日無事に5人の妊娠が発覚する事になる。
見ようによっては美談に見えなくもないが、単にズークが節操なしで馬鹿なだけである。
これによりズークが毎月支払う生活費が50万円分追加となった。
ズークのハーレムは更に追加となり、村娘が8人に増えて1人当たり10万なので合計月80万。
街娘が3人で1人当たり20万の月60万。そしてAランク冒険者と元貴族が総勢14人であり、1人当たりは50万で合計が月700万。
つまりトータル合計額は840万へと増加した。
この男、ただのアホである。これで月の支払額が900万ゼニーに近付いた。この調子で増えて行けば、いつかとんでもない額になりそうだ。
もちろんズークはそんな事を気にもしておらず、今日もズークはズークであった。
■返済生活9日目~22日目の収入:1500万ゼニー(査定予定額)
■借金総額:9億8500万ゼニー(8億8500万になる予定)
無料でハーレムは維持できない。
そしてBSSを喰らうアブサー村の男性達。
いやあ不条理だなぁ。