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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第66話 置かれた現状

 復讐に燃える未亡人、アンナと情報共有をした翌日。ズークはリーシュと共に行動していた。

 もちろんマリーの家に連行して父親をやらせた後での話だ。リーシュにとってマリーは親友であり、軽く扱うなど許されない。

 女性でありながら最前線で戦えるだけの剣技を持つ、素晴らしい友人であり良きライバルでもあった。

 そんな2人の間に割って入った形である、アホでバカでカスなズークは荷物持ちをしている。

 子育てで大変なマリーに変わって、買い出しに行こうとリーシュがズークを連れ出した結果だ。


「はいコレ、よろしく」


「待て待て、買い過ぎじゃない?」


「バカねズーク、まとめ買いで値切るのは基本よ」


 買い物に関する知識がガバガバ過ぎて、ズークは値切り交渉の知識が全くない。

 これだけの量を纏めて買うので、値段にその分を反映してくれ。この程度は初歩も初歩過ぎて、普通に生きて来たら知っていて当然の知識だ。

 けれども不運にも学ぶ機会が無かったズークは、そんな知識はまともにない。ただ強くなる事を目的に生きて来て、成功出来てしまっただけの男だ。


 経済的な学びを得る機会を逃し、言われるがままに装備を購入して来た。なまじ高報酬の依頼をこなす能力だけはあった悲劇と言える。

 銀翼の風として活動していた頃のズークは、パーティの稼ぎ頭筆頭であった事も影響した。強くなって復讐を果たす事が最優先だったズークは、それはもう精力的に依頼を受け続けた。

 たまには休めと周囲が静止するのも聞かずに、単独で討伐依頼をどんどん受けては倒して行く。その結果生まれたのが、この色々とアンバランスな男である。


「男が値切るのは、ハズレの娼婦を引いた時だけにしろってモーガンが言ってたぞ?」


「……あのバカ男ぉ~~!!」


「え? もしかして違うの?」


 モーガンとリーシュは、昔から知っている仲である。それこそCランク冒険者だった頃からパーティを組んでいた間柄だ。

 もちろん2人だけではなく、他にも数人のメンバーが居た。年齢層も大体は近く、当時の基準では若くてフレッシュな期待の若者達だ。

 年齢だけで言えば今でも十分若い方なのだが、現在の立ち位置的にはベテラン冒険者だ。

 彼らはBランクからAランクへと順調に上り詰めて行く中で、色々とあって最終的にはパーティを解散した。

 ズーク達が結成した銀翼の風が、頭角を現す少し前の出来事だ。キャッシュ支部で期待されていた若いパーティよりも、更に若いパーティが登場してこの話は忘れられて行った。


「何度も言ったでしょ! モーガンの価値観に合わせるなって!」


「でもアイツ、結構上手くやってるじゃん」


「そこがモーガンの質が悪い所なの!」


 モーガンは運に恵まれ愛された男なので、普通なら破滅する様な生き方を平気で出来る。

 もはやスキルと言って良い程に、何もかもがモーガンに都合の良い結果が訪れるのだ。

 賭けに出れば必ず勝利し、運に任せた際は最高の結果になる。そんな選ばれし一部の人間と思わせる程に、モーガンは何もかも上手く行く。

 同様の人種であれば、彼の真似をしても上手く行くだろう。しかし残念ながら、ズークは同じ人種ではない。

 同じ生き方、同じお金の使い方をすれば破滅するのは避けられない。だからこその現在であり、借金返済生活である。


「ズークは地道に働く方が良いわ」


「でも一攫千金はロマンじゃね?」


「ロマンとかどうでも良いから!」


 丁度復讐を果たして、燃え尽き症候群だったズーク。その当時は次から何をどうして良いのか、何も分からずに居た。

 幼き日に憧れたお姉さんと、住んでいた村の人々を喰い荒らした憎き相手。一度は敗北し、敗走するしかなくて逃げのびて。

 それまで培ってきた何もかもが無駄に見えた。もう全てがバカらしくなって諦めて、逃げ出そうとした時にカレンが動いた。


 姉みたいな存在だった人が、折れかけたズークの心を繫ぎ止めた。そして討ち果たしたSランクモンスター。

 冒険者やパーティとしてのランクなんてどうでも良くて、Aランクパーティでないと入れない所に行く許可が欲しかっただけ。

 最初はそれだけだった関係性が、それだけじゃなくなって。ズークがSランク冒険者になって、銀翼の風がSランクパーティになった。

 だけどズークはそこに興味が無くて、これからどうするか悩んでいた時に出会った。


「モーガンの真似はもうやめなさい!」


「いや、でもさ」


「やめなさい! 分かった!?」


 反論しようとするズークの意見を全て却下し、リーシェはモーガンの真似を辞めさせる。何故ならモーガンを真似て、破滅していった者達を良く知っているからだ。

 彼の様に生きるには、先ず大前提として十分な貯蓄と資産が必要になる。しかし現状のズークには、その担保が何一つない。

 仮にどこかで借金を作ってまで現金を得たとしても、返済額が今より増えてしまうだけの話だ。

 本来ズークが付き合うべきは、借金をは全く無縁の世界である。しかし時既に遅く、下手を打てば数十億の借金を抱え兼ねない世界にズークは足を踏み込んでいた。

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