表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
64/133

第64話 マージャン大会予選

 アディネラードで行われる闘技大会の準備が進む裏側で、裏社会に生きる者達もひっそりと動き始めていた。

 今回行われる裏レートマージャン大会は、大陸中から参加者が集まって来る大きな大会だ。

 闘技大会を隠れ蓑に、アディネラードの地下で繰り広げられる代打ち達の闘牌。その規模は過去最大になりそうな程に、参加者が続々とカーロ共和国に集まって来た。


 大金と名声は、何時だって誰だって欲しいもの。欲に塗れた小悪党達も当然ながら群がって来る。

 だからこそ話にならない腕前の有象無象は、事前に行われる予選で振るいに掛けねばならない。

 大規模組織であるロ・コレクトからの参加とは言え、初出場のズークも予選免除にはならなかった。Sランク冒険者である事と、マージャンの腕前別物だからだ。


「ポン!」


「チー」


「ロン」


 予選は既に始まっており、広い地下空間に用意された100以上のマージャン卓で男達が奮闘している。

 多少は女性の参加者も見受けられるが、比率としては圧倒的に少なかった。そんなごく僅かな女性の代打ちが、ズークと同じ卓に座っている。

 西家(しゃーちゃ)で始まったズークの下家(しもちゃ)北家(ぺーちゃ)の位置に妖艶な大人の女性が堂々とマージャンを打つ。漆黒のドレスに真っ黒な長髪、そんな出で立ちながらも瞳だけは黄金色。


 赤く塗られた口紅が、大人の色気を醸し出す。生地が大きく開いた胸元では、少々過剰な程に胸の谷間が強調されていた。

 東家(とんちゃ)の中年男性は、その妖艶な魅力に完全にやれらてしまっている。こい言った場で下心に負けている様では、勝ち残るのは難しい。

 そして肝心のズークだが、言うまでもなく狙っていた。もちろん女性の方を。


「ねぇお姉さん、名前は何て言うの? あ、ちなみに俺は」


「ズーク・オーウィング、知っているわよ。有名だものね」


「へぇ、俺の事を知ってくれているんだ。あ、それポン」


 対局中に会話をしてはいけないルールはない。ズークはマージャンを打ちながら、女性とのコンタクトを図る。

 同じ様にお近づきになりたい東家の中年男性も、どうにか気を引こうと頑張っているが微妙なリアクションだ。

 やはりズークがSランク冒険者で有名だから擦り寄ろうとしたのか、それとも篭絡するつもりなのか。

 真意は分からないものの、女性はズークに対して好意的な態度を示していた。異性として興味があるのかは、現状では何とも言えない。

 ただ色気で釣って蹴落とそうと考えているのかも知れないし、全く違う意図があるのかも知れない。


「ねぇ、名前ぐらい教えてよ」


「予選を勝ち抜けたなら、教えてあげても良いわよ」


「オッケー、じゃあ後で教えて貰おうか」


 会話を挟みながら打っている3人とは対照的に、南家(なんちゃ)のやせ細った男は全く会話に参加しない。何故なら彼は今、確実に流れが向いていたからだ。

 今も高い手で聴牌に向けて手が伸び続けている。先程から連続で和了(あが)っているので、このまま得点を伸ばしたい所。

 萬子(まんず)と字牌の混一色(ほんいつ)が、一度も鳴かずに面前で揃いつつあった。このまま南家のペースになるかと思いきや、ここで動き出すズークと黒いドレスの女性。

 チーとポンを交えて、ツモ順を巧みにズラしていく。すると南家の男性が掴みかけた流れに、暗雲が立ち込み始める。

 引いて来るのは不要な牌ばかりで、急激に手配の進みが遅くなった。せっかくの面前手だっただけに、鳴いて聴牌(てんぱい)を目指す道へと気持ちが傾く。

 東家の捨てた八萬(ぱーわん)をチーして鳴きを入れ、聴牌となる。余った二索(りゃんそう)を河へと放流した。


「ああ、それロンで」


「私もよ」


「なっ!? バカな!?」


 ただどうでも良い会話を話していただけだった筈の2人から、ダブロンを貰ってしまったやせ細った男。

 確実に流れを掴んだ筈が、突然流れが変わってしまった。ズークの方は30符2翻で2000点、女性の方は30符3翻で3900点の和了りだ。

 下らない日常会話に見せかけて、2人は機会を伺っていたのだ。ちょうど今の山はズークの目の前にある山。

 そして当然ながらズークは、山のどこに何の牌があるか全て覚えている。以前トランプでも使っていたオリジナルスキル、【完璧完全記憶(パーフェクトメモリー)】はマージャンでも十分な効力を発揮する。

 恐らくは似た事が出来る女性が、ズークの作戦に乗っかった形だ。高い実力を持つ打ち手は全てを口にせずとも、こうして分かり合う事が可能だ。

 この大会では、裏でコンビ打ちをしてもルール違反にならない。そこからの流れは一変してズークと女性が場を支配し始めた。

 予選では半荘(はんちゃん)戦を2回行い、1位と2位が2戦目に向かう。合計3回の予選を勝ち抜いた者が、本戦へと出場する権利を手に入れる。


「それ、ロンだ」


「あら失礼、ツモよ」


 ただ2人が和了り続ける展開が続き、一方的な展開がただ続いていく。点差が開いてから東家と南家がどうにかしようと行動した所で、打ち手としての地力が違い過ぎた。

 トントン拍子で点数を伸ばすズークと女性は、共に3万点超えで1回目の半荘を突破。

 続く2戦目でもこの流れは変わらず、ズークと女性が1位と2位で予選1回戦を余裕で勝ち抜くのだった。

 以降2人が同じ卓になる事は無かった。しかし予選が終了して本戦出場者が発表される場で、2人は再開を果たすのだった。

異世界麻雀やろうって軽い気持ちで始めたら、ルビ打ちが凄く面倒な事に今更気付くという。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ