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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第60話 ズークとマージャン

ここから結構麻雀に振った内容が入ります。今なら雀魂とか流行っているので少々マニアックでも良いかなーと。

 裏レートマージャンに参加する事になったズークだが、実力も見ずに採用される筈がない。

 当然ながらラドロンの目の前で、腕前を見せて欲しいという話に発展する。

 ロ・コレクトの拠点内に用意されている遊戯室に場所を移して、マージャンを打つ事になった。

 ラドロンの部下達から特に優秀な3人が連れて来られ、マージャン卓を囲むズーク達。ルールは基本的なマージャンと同じで半荘(はんちゃん)戦を2回行う。

 点棒は2万5千点でスタートし、3万点返しのトビ有り赤ドラ有り。そしてもちろんイカサマだってOKだ。見抜く目とバレずに行う技術も評価対象だ。


「それで良いかな? ズーク君」


「ああ、構わないぜ」


「では始めて貰おうか」


 東南西北(とんなんしゃーぺー)の字牌4枚を伏せてシャッフルし、4人がそれぞれ牌を引いた牌で順番が決まる。

 ズークが引いたのは北だったので、ラス親の立場をゲットした。最後に親をやれるのはメリットでありデメリットでもある。

 最後まで親の立場になれないので、全員のツモ上がり分を引かれた状態での親番だ。運次第ではまともに点棒が無いままスタートせねばならない。

 しかし同時にラス親である限り、連荘すれば逆転のチャンスを狙い続ける事が出来る。ただ結局は人によって認識が違うので一概には言えない。

 東家(とんちゃ)スタートが好きな人が居れば、南家(なんちゃ)スタートが好きな人も居る。


「対局中に話しかけられるのは嫌いかな?」


「いいや、俺は平気だ」


「そうか、なら少し質問をさせて貰おう」


 マージャンを覚えた時期や経歴、どう思っているのか等ラドロンから質問が行われる。無難に答えながらも、対局を順調に進めるズーク。

 彼がマージャンを覚えたのは1年半程前であり、経歴こそ浅いが実力は高い。ギャンブルというものは向き不向きがあり、勉学に強いかどうかはあまり関係が無い要素だ。

 多少バカでもギャンブルが強い者は一定数おり、ズークは典型的なそのタイプだった。


 ギャンブルでは運が良くても恋愛は恵まれない人や、ビジネスでは運が良くてもギャンブルは全くダメ。

 そんな人達が世の中には大勢おり、ズークはマージャンにおいてだけは殆ど負け知らずだった。

 ラドロンと会話をしつつ、手を組み上げて行くズーク。余った(はく)を切ってテンパイ。先ずは様子見で一旦リーチを掛けておく。


「リーチ」


「ポン」


 白を鳴かれて一発は消える。ただズークの目的は他の3人がどういうタイプか見る事だ。上がる事を目的としたリーチではない。

 モンスターと戦う時と同じ様に、それ以降の3人がどう動くのか観察する。リーチを掛けると手牌が変えられないので、裏を掻かれる危険性を孕む。

 しかしダマテンと違って裏ドラに期待出来るという利点がある。どちらを選ぶかは打ち手の拘りによって全然違う。

 3900点あればダマという人や、満貫(まんがん)からはダマなどそれぞれだ。今回は安手でリーチを掛けたズークに対して、3人はベタ降りを選び事態に変化は生まれない。

 結局最後まで誰も上がれず流局となる。親の東家はノーテンで終了し、残る2人も同様だ。


「ノーテン」


「ノーテン」


「テンパイ」


 しっかりとズークの当たり牌は他家に握られており、レベルの高さが証明されている。

 そしてズークは3人の打ち方を少しずつ把握し、凡その方向性や性格を読み取った。

 この分析力はズークが生まれながら持っている、冒険者としての高い才能と積み重ねた結果だ。

 こんな事ではなくもっと真っ当な方向で発揮して欲しい所だが、残念ながらこれがズーク・オーウィングという男である。

 恵まれた才能を、ギャンブルで無駄遣いをただ繰り返す。東3局目が終了し、ズークの親番が回って来た。

 丁度その4局目を行う為に、全員で牌を積もうとしていた時だった。


「ちょっと待った。アンタ、左手を見せな」


「……お見事です」


「やっぱりな」


 西家(しゃーちゃ)の男性が左手を開くと、イカサマを行う為の中が2枚握られていた。配牌の際にさも今取った牌であるかの様に装う常套手段だ。

 しかし僅かな動きも見逃さず、しっかりとイカサマを見抜いてみせた。かなり自然に行われていた行為だが、裏のマージャンも知っているズークには通らない。

 かなりの手練れを用意したラドロンだったが、この件で十分な目を持っていると納得した。

 ズークはそれからもイカサマを見逃す事はなく、順調に流れを掴んで行く。そして自分のイカサマもちゃんと挟んで成功させる。

 先ずはベタな手段として、他家(たーちゃ)の河と牌をすり替えるイカサマを行う。牌を取り自分の所に持って来る途中で、他家の河に捨てられた欲しい牌と交換する。

 一向聴(いーしゃんてん)だった手牌がテンパイとなり、3面待ちで親満(おやまん)確定の良い手になった。その手際の良さにラドロンは感心する。


「ほぉ」


「リーチだ」


 そのまま一発ツモを決め、裏ドラも乗って満貫から跳満(はねまん)へと手が伸びた。

 普通ならこれで半荘が終了となるのだが、ズークは上がり止めにせず連荘を選択。そこから更に連荘を続けて、最終的に南家が飛ぶまで勝ち続けた。

 もしもここで飛ばずに済んでいたならば、役満の1つである八連荘(ぱーれんちゃん)が成立していたかも知れない。

 単なるイカサマの上手さだけでなく、マージャンの純粋な実力も見せつけた。結局2回の半荘はズークの圧勝で終わり、ラドロンから正式に代打ちとして任命されるのだった。

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