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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第58位 義賊のボスと裏レートマージャンの世界

 モーガンに連れられたズークは、この組織についてモーガンから説明を受けていた。

 こんな広い地下空間を有している彼らの組織名は『ロ・コレクト』という。怪盗がボスをやっている窃盗団だが、方向性としては義賊である。

 貧しき者からは決して盗まず、悪事を働くゲスからのみ物品を盗む。盗賊が中心の組織だが、そんな彼らを守る用心棒も沢山所属している。

 裏組織としては規模が大きく、そう簡単には潰せない。それだけに裏社会では多くの恨みを買って来た。

 疎ましいが全面抗争ともなればただでは済まない。それがロ・コレクトという組織のポジションなのだ。


「じゃあモーガンって、今はここに所属しているのか?」


「所属、とは違うな。雇われ用心棒って所さ」


「ふぅん、面白そうな事やってんな」


 冒険者への依頼の中には、一定期間の護衛任務も含まれている。もちろんそれは基本的に対モンスターが中心で、対人戦闘はそう多くない場合が多い。

 あくまで対人戦が目的ならば、雇うべきはカーロ共和国に多い傭兵達になる。

 ではロ・コレクトの中を見る限りどうかと言えば、どうやら両方を雇っている様子だ。

 明らかに傭兵と思われる揃いの装備に身を包む集団と、バラバラの統一感がない装備に身を包む者達が居た。

 そうなっているのはモンスターを(けしか)けられる事もあるからだそう。どうやら中々に敵の多い組織である事は間違いないだろう。


「さあ着いたぞ、ここだ」


「この部屋にここのボスが?」


「そうだ」


 地下施設内の最奥にある部屋に、モーガンとズークが立っていた。一際高そうな黒光りするドアは、恐らくマナ鉱石が使われている。

 高い硬度を誇る人気の素材であり、襲撃の危険がある要人の部屋に使用するのは定番だ。

 しかしその場合はかなり金額が嵩むので、資金的余裕が相当に無いと難しい。にも関わらず、部屋が全てマナ鉱石で作られているらしい。

 伊達に裏組織のボスが住む部屋では無いと言う事か。その様な厳重な作りのドア横にあるボタンを押す。

 するとその近くにあった四角い出っ張りから、若い男性の声が聞こえて来た。モーガンが来訪した事を告げると、ドアのロックが解除される音が響いた。


「ラドロン、連れて来たぞ」


「邪魔するぜ」


「やあ、良く来たねモーガン」


 室内で待っていたのは、黒髪黒目の若い男性だった。年齢は恐らく20代半ばだが、実年齢より若く見える東洋系の人物なので実年齢は不明だ。

 若く見えるのも合わせて、可愛らしいと判断されるタイプの顔立ちをしている。

 右目に着けているモノクルは、恐らくただのモノクルではない。安っぽい見た目ではないので、高級品か魔道具と思われる。


 執務机に軽く腰かけているが、真っ直ぐ立てば身長はズークと変わらないだろう。恐らくは180cmぐらいだと判断出来る。

 上下に着ているスーツ一式もシャツも黒で、真っ黒な男とという印象を受ける。それだけに胸元の真っ赤ネクタイが非常に目立っていた。

 線は細いが胸板は厚く、決して軟弱ではないと一目で分かる。そして何よりも、ズークから見ても一切の隙が感じられなかった。

 なるほどこの人物がボスだというのは納得出来るとズークは初見で感じている。


「ここでズーク・オーウィングを連れて来るとはね。ああすまない、僕はラドロン、よろしくね」


「ああ、よろしく」


「早速だが、本題に入ってくれ」


 ズークを良く知るモーガンは、雇い主のラドロンと気が合わないと思わなかった。

 さっさと本題を話してから、後は好きに友好を深めれば良いと判断する。今回重要なのは、何故マージャンの代打ちが必要であるかという話だ。

 そこについての説明に早速移る事になった3人は、来客用のソファに座って向かい合う。

 自己紹介はそこそこに、ラドロンに呼ばれた侍女の女性が紅茶の用意を持って来る。

 そこから今回の裏レートマージャン大会についての説明が始まる。どうやら色々と事情があるらしい。


「僕と最も敵対している組織が、代打ち使って参加するらしくてね。少々痛い目を見てもらおうかなと」


「アンタは打てないの?」


「ははっ! そうしたいけど、僕が出たら命を直接狙われてしまうからね」


 義賊としてやって来たラドロンは、多くの敵対組織から命を狙われている。

 彼自身はかなりマージャンを打てる人間だが、ラドロン自らが直接出場するのはリスクが伴う。

 元々裏社会が行う裏レートマージャン大会は、気に要らない組織に痛手を負わせる意味合いがある。


 全面抗争という最悪の事態に至る前に、ガス抜きをしましょうという事だ。それがメインの目的ではないが、そう言った事情も含まれている。

 こう言った事情もあって、直接出場するのは殆ど代打ちの人間達だ。裏組織のボスが直接出場する事は非常に稀である。

 そんな事情は流石にSランク冒険者のズークでも知らない情報だった。


「なるほどねぇ、こう言う所のボスも大変だな」


「取り分は一旦置いておこう。君は、手打ちも出来るのかい?」


「もちろん余裕だ。()()()()()()()()()()()()()


 この大陸でマージャンと言えば、どこも大体は全自動麻雀卓が使用されている。魔道具なので本来は不正行為が全く行えない。

 しかしそれも、裏レートの世界になると逆転する。卓自体に細工を施して、大会運営の都合で操作されてしまう危険性があった。

 主催者が毎回変わる為に、どこがどんな仕掛けをするか分からない。だからこそ裏レートマージャンでは、自動卓ではなく完全手積みの手打ち制だった。

 そちらであれば、実力者さえ用意すればイカサマも見抜けるし抑止にもなる。しかしそれは建前で、実際にはイカサマのオンパレードだ。

 よりイカサマも含めて実力が高く、目と勘も良い者を連れて来た組織が勝者となる。それが裏レートマージャン大会という世界だった。

ロ・コレクトはスペイン語で『正しい事』でラドロンは『義賊や盗賊』の意味です。

ネーミングをこの方向性にすれば悩まなくて良いなと気付きました。

そしてここから、ファンタジーマージャンバトルが開始します。この世界なら轟盲牌ぐらい簡単に出来る人間が滅茶苦茶居そう。


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