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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第58話 地下に本拠地ってロマンがあるよね

 代打ちの座を譲って貰う事にしたズークは、モーガンに連れられてとある組織の事務所へ向かう。

 一口に裏社会の組織と言っても様々で、全てが悪人の集まりとは限らない。必要悪という言葉もある様に、彼らも含めて社会というものが成り立つ。

 昔から地域を牛耳っているマフィアが居るからこそ、国外のより悪質な組織が入り込めないという事は珍しくない。

 他にも国からの息が掛かった諜報組織も、当たり前に存在している。そして今回ズークか連れてこられたのは、そういった善寄りの組織の1つだった。


「ここだズーク」


「ここは……酒場か?」


「まあまあ、良いから着いて来い」


 外観を見た限りでは、どこにでもある木造の建物。裏通りにある常連が集まる趣深い隠れ家の様な印象を受ける。

 中に入ってもその印象は特に変わらず、ありふれた酒場の風景が広がっていた。木で出来たテーブルに椅子が数セット。

 複数の大きな酒樽が端の方に積まれていて、カウンターには沢山の酒瓶が綺麗に並んでいる。


 調度品は全て良い製品が使われているようだが、最高級品という程の物ではない。

 そこだけを見ればとてもではないが、高額な裏レートマージャンに関わる組織には見えなかった。だがしかしそういった組織は、自然と街に溶け込んでいるのが世の常だ。

 2人が店内に入って来た事に気付いた、店主風の中年男性がカウンターの奥から姿を現す。恐らくは魔道具か何かが作動したのだろう。


「ああ、アンタかモーガン。そっちは……オイオイマジかよ」


「まあちょいと有名人だが、俺の博打仲間でな」


「ズーク・オーウィングだ、よろしく」


 有名なSランク冒険者が登場した事に驚く店主だが、モーガンの代理だと聞かされて納得する。

 店主の案内で2人が店の奥に進むと、そこには鋼鉄製のエレベーターが設置されていた。

 流石に一流のホテルで使われている物とは違うものの、そもそもエレベーター自体が高額な魔道具だ。


 とてもこんな小さな酒場の経営だけで購入出来る代物ではない。つまりそれは、ここがただの酒場ではないという事。

 2人が乗り込むとモーガンがパネル操作し、鋼鉄の箱が動き始める。旧式だが魔道具としては優秀で、特定の操作をしないと目的地に辿り着けない。

 ただ地下1階や2階のボタンを押しただけでは、ダミーの地下室にしか行かない仕組みになっている。


「へぇ、そういう感じね」


「そういう事だ」


「結構デカい組織らしいな」


 最新式ではないので、地下へと移動する独特の感覚を味わう2人。結構な距離を移動しているらしく、5分程エレベーターは動き続けた。

 そうして到達したのは最深部、とある組織の本拠地になっている場所。エレベーターの扉が開いた瞬間に、高級なルームフレグランスの香りが漂って来た。

 酒場とは違い綺麗なカーペットが満遍なく敷かれており、華美な装飾が施された受付がすぐ目の前にある。

 そこには美しい大人の女性が立っており、ズーク達を見てニコニコと笑っていた。流石は本職というべきか、ズークに気付いても取り乱す事はない。


「モーガン様、本日はどの様なご用件でしょうか?」


「例の代打ちの件でな。ボスにこいつを紹介しに来た」


「……なるほど。少々お待ち下さい」


 もしこれが普通の組織であれば、入り口にデカデカと組織名が書かれている。しかしここは裏社会に関わる闇に生きる者達の住処。

 わざわざ組織の名前など、表示する必要はない。彼らが何者であるのか、知らずにここを訪れる者など普通は居ない。

 ズークの様な特別な理由でもなければ、表に生きる者達が関わる必要はないのだ。そんな組織の顔でもある受付嬢が、通信用の魔道具で連絡を取った。

 見た目では可憐な女性だが、彼女はBランク冒険者相当の実力を有している。本拠地で最初に顔を合わせる存在が、普通の女性な筈がない。


「通して構わないそうです」


「そうか。悪いな、急に来て」


「いえいえ、モーガン様ならいつでも好きな時にいらして下さい」


 ズークとしては受付嬢とも仲良くなりたい所だが、まだ良く知らない組織でいきなりナンパはしない。

 もしボスのお手付きだったとしたら、下手をすれば抗争に発展してしまう。それぐらいの常識はズークにも…………一応はあった。

 何故なら以前に一度、大きなやらかしをやっているからだ。とある街の領主を相手に、奥さんを寝取るというまさかの騒動を起こしてしまう。

 貴族を相手にまさかの不倫騒動となり、あやうく死刑になりかけた。そこで断罪されていれば良かったのだが、どうにかこうにか生き延びられた。

 不倫が発覚した事で、旦那からの扱いが悪かった事も判明する。その内容に奥さんの本家が大激怒し、それどころではなくなってしまったのだ。


 結果有耶無耶になってズークは罰せられず、元人妻貴族と恋仲になった。もちろんその女性との間にも子供は既に居る。

 なお扱いが悪かったとは言え、やはり不貞行為は外聞が悪い。仕方なく本家は娘から家名と剥奪した。

 一応本家からの支援も多少はあるが、基本的にはズークからの養育費を頼りに生活している。

 現状では養育費という名の借金でしかないが。ともあれそんな経験によって、裏組織を相手に抗争をする未来を回避したズーク。

 彼はこれから会う事になるのは何者なのか、面白くなって来たなと状況を楽しんで居た。

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