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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第57話 大会へのお誘い(ギャンブル)

 大会運営の本部で打ち合わせを済ませたズークは、リーシュと別行動を取る事に決める。

 大会へのエントリー等の私用もあったので、リーシュの方も単独行動を求めた。

 どうせズークは自由に使えるお金もないので、少々放置しても構わないだろうとの判断だ。


 マリーに会いに行くようにとだけ伝えて、リーシュは大会受付に向かって行った。そうして1人になったズークは、マリーの家を目指して王都を歩いて行く。

 ローン王国とはまた違った発展を遂げている街並みは、要塞の様なイメージを受ける。戦争が絶えなかった土地柄だっただけに、その様な作りになったのだろう。

 高い壁に囲まれた街の中では、武装した男女が多く見られる。武闘大会が行われるというのもあるが、元々傭兵業が盛んな国であるからだ。


「相変わらずだなぁ」


 ズークにはどうしても、むさ苦しいと思えてしまう。女性も沢山いるけれど、それ以上に男性達が多い。

 昼間にも関わらず、酒を飲んで騒いでいる者達も多い。しかしこれが夜になれば、傭兵を相手に商売をする娼婦達が現れる。

 現在とは違って、それなりの華やかさに包まれ雰囲気が結構違う。とは言え現状はそうなっていないので、ズークとしては微妙な気分だった。

 傭兵達は冒険者とは微妙に違う職業であり、位置付け的には軍隊や騎士に近い。騎士と冒険者との中間ぐらいに立っている。

 雇われれば冒険者とダンジョンに行く事もあるし、同じく雇われれば戦争にも参加する。


 戦う事を主目的としており、あまり冒険はせず同じ場所に留まる事が多い。冒険者との明確な違いは、傭兵団で共通の装備を身に着ける所だ。

 全員同じ鎧、全員同じマント。同じデザインの紋章を装備に入れておくのも特徴だろう。

 彼らを真似して似た様な事をやる冒険者も中には居るけれど、戦い難くなってしまう事が多く主流ではない。

 全員剣士であれば出来なくもないが、その場合はかなりパーティバランスが悪い。


「お? 何だ?」


 ズークが街中を歩いていると、何やら騒ぎが起きているらしい場面に遭遇した。どうやら喧嘩が起きている様子で、片方は酔っ払いの傭兵らしい。

 動き易い旅装束の人物に向かって、何やら大きな声でまくし立てている。衛兵を呼ぶべきか悩んでいる街の人々が、周囲から遠目に見守っている様だ。

 ズークが彼らに近付いていくと、肩がぶつかっただのなんだのと呂律が回らない口で叫んでいるのが分かった。

 絡まれているのが男性だと分かるなり、ズークはその場を離れようとした。しかしその後ろ姿は、どこか見覚えがあった。

 そしてその人物の正体に思い当たるなり、ズークは思わず名前を呼んでいた。


「お前、モーガンか?」


「ん? 誰か今俺の名前を……お? ズークじゃねぇか」


「何やってんだよモーガン? こんな所で」


 尚も叫んでいる傭兵の男が、無視されたと思ってズークとモーガンに近付いて行く。

 男を無視して向かい合い、楽しそうに会話をする2人は全く意に返していない。

 余計に腹が立った傭兵の男は、2人の肩を掴もうとしたが両者から足払いを受けてすっ転んだ。


 両足を弾き飛ばされて顔面から地面に倒れ込んだ男は、そのまま気絶してしまい周囲は静かになった。

 どうやら大丈夫そうだと判断した街の人々は、安堵して普段の生活に戻って行く。

 中にはズークの存在に気付いて熱い視線を送る女性も居たが、直接声を掛ける勇気は無く暫く眺めてから立ち去る。


「にしてもズーク、その格好はどうした? 修行か?」


「いやまあ、色々とあってな」


「色々ってーと?」


 このモーガンという男は、チョビ髭が似合うワイルドな外見をした男だ。

 ガタイもそれなりに良いのだが、彼は所謂細マッチョな体型でありズークと似た体格をしている。

 異国風の黒い髪が特徴で、やんちゃな田舎ボウズがそのまま大人になった様な顔立ちだ。


 額についた1本筋の傷跡が、勲章の様に威厳を放っている。彼こそがズークに色遊びやギャンブルを教えた張本人であり、リーシュから真似をするなと言われていた男だった。

 所謂悪友的なポジションだが、ズークよりも年上で今年30歳を迎えた。色遊びも含めて様々な意味でベテラン冒険者と言える。

 そんなモーガンに借金の話を伝えると、丁度良いとズークに相談を持ち掛けた。


「実は俺、マージャンの代打ちを頼まれていたんだが行けなくなってよ」


「つまり、代理をやれと? レートは?」


(……裏社会の闇レートだ)


 小声で囁いたモーガンの発言に、ズークは少しだけ驚いた表情を見せた。裏社会のマージャンと言えば、とんでもない額の金額が賭けられる。

 そしてマージャンにおける代打ちとは、裏社会に生きる組織が雇った代理としてマージャンを打つ事を差す。

 数百万は当たり前で、数千万が動く事も珍しくない。大規模だと億にまで届く裏社会の大会まであると噂されている。


 当然そんな事はズークも知っており、関わった事ぐらいは何度かあった。とは言えそれは数百万規模の小規模なマージャンでしかないが。

 そして今回ズークが持ち掛けられたのは、億が動く裏大会へのお誘いだった。借金を抱えているズークは、一発逆転を狙えるチャンスが巡って来たと考えた。

 借金を抱えた人間が、ギャンブルに行くと大体ロクな事にはならない。上手く行く場合もあるものの、破滅する方が割合的にはかなり高い。

 しかしそれでも、ここで出ないという選択がズークにはない。この時より冒険者ズークは、ギャンブラーズークとして生きる道を歩み始めた。

1章で麻雀ネタを入れたのは2章でこの展開をやる為でした。

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