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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第53話 隣国からの依頼

 ローン王国王立魔法学園での代理教師を無事務め終えたズークとリーシュ。

 再び冒険者ギルドのキャッシュ支部に戻って来た2人は、2階にあるファウンズ支部長の執務室に居た。

 正確に言えばカラミティピークス戦後に何度か訪れているが、それは報告や手続き等が目的であって帰還ではない。

 2ヶ月に渡る教師生活から解放された2人は、それぞれの報酬についての話を聞かされていた。


 リーシュの方は上乗せ金も付いて合計1400万ゼニーが、ズークの方は1800万ゼニーが報酬額として支払われる。

 もちろんズークの方は、そのまま借金の返済に充てられるが。一般的な感覚で言えばかなりの額だが、ズークの借金額を考えれば全く足りていない。

 とは言え高位貴族に勉強を教えるだけあって、結構な収入になったのも間違いではない。

 平民に向けた普通の学校で働く教師なら、年収が500万ゼニー程だ。それよりも大きな額を、1ヶ月目だけで稼いでいる。


「この調子で稼いで貰うぞズーク」


「え~~たまには娼館ぐらい行きたいんだけど」


「ズーク、貴方も懲りないわねぇ」


 こんな状況さえ作らずに、正しくお金を管理出来ていたらこうなってはいない。だがその当たり前の事が分かっていない残念な赤毛であった。

 当然ながらファウンズ支部長にしっかりと怒られて、次の仕事を与えられる。

 そちらも指名依頼であり、東の隣国であるカーロ共和国から呼ばれていた。

 大昔は内戦を繰り返す小国の集まりだったが、後に初代国王が統一した事で共和国となった国だ。

 そんな歴史を持つ故か、武闘派の者が多く傭兵稼業が人気の国だ。闘技大会が毎年行われ、大陸中から猛者達が集まって来る。


「カーロの首都、アディネラードの闘技大会に行って来い」


「え、俺が出場して良いの?」


「ダメに決まっておるだろうが! エキシビションマッチに出てくれという依頼だ」


 Sランク冒険者であるズークが出場してしまえば、もう優勝が確定した様なもの。

 大陸に数名しかいない人類最強格を相手に、勝てる者など殆どいない。

 やる前から優勝が分かっている闘技大会など、興醒めにも程があるだろう。


 普通の大会はどこでもAランクまでしか、出場する事は出来ない。そのAランク冒険者にしても、先ずシード枠が確定で予選は免除される。

 決勝に進むのは、大体Bランクの中でも上位の者からAランクに相当する実力者ばかり。

 だからこそ良い戦いとなり、試合だって盛り上がるのだ。勝ち確定の超越者はお呼びではない。


「そう言えばそんな時期よねぇ。私も着いて行って出場しようかしら?」


「君が行くなら、こやつの監視役を頼めないか?」


「……放っておくのも不安ですしね」


「俺の自由は?」


 そんなものはどこにもない。黙って働けとファウンズ支部長に言われ、隣国へと向かう用意をしろと命じられた。

 ローン王国の東にあるカーロ共和国までは、馬車で1週間以上の時間が掛かる。食料や諸々が必要となるので、すぐに準備に移る必要があった。

 だがそれには1つ問題があった。ズークはこれまで、エレナのヒモをやっていたり学園で生活したりしていただけ。

 だから食費や光熱費などは必要無かったし、住む場所にも困っていなかった。

 しかし隣国行きとなると、宿泊費や食費などが絶対に必要となってしまう。だがズークは一銭も持たない借金野郎だ。


「俺、どこで暮らすの?」


「はぁ……依頼が終わり次第、報酬から引く。請求書を貰って来い」


「あと装備はどうすんの?」


 幸いにも装備に関する問題は無かった。見栄えを意識した大会運営より、装備類の一式を貸し出しされる事になっている。

 カーロにはかつて異世界人が作った、頑丈なだけで無駄にエフェクトが出る武具があった。

 剣を振ると音が鳴ったり、マントが翻る度に輝いたり。何の意味があるのかは不明だが、見た目だけは派手になるので、良く大会の目玉として使用されて来た。


 ズークはアディネラードの闘技大会に興味が無かったから、そんな事は知らないし見た事も無かった。

 以前に呼ばれた時も、興味がないので断っていた。今回ズークが招待されたのは、先日のカラミティピークス討伐の報があったからだろう。

 今話題のSランク冒険者が戦う姿が観られるとなれば、集客力は相当なモノになると踏んだと思われる。

 そして今のズークは借金があるので、興味が無いと断る権利が無い。


「分かったら準備をしろ」


「へいへい」


「不安ですから、私も同行しますね」


 買い出しで余計な事をしない様に、リーシュの同行が決まった。もちろんこれはデートでは無く、ただの監視である。

 駄目な弟の面倒を見る姉の様な態度で、ズークはリーシュに連れて行かれた。ついでに1階に降りた際には、カレンをデートに誘うも当然撃沈。

 いつも通りおバカでアホなズークは、いつも通りの姿を晒していた。こんな(ズーク)ながらこれから隣国へと向かい、もう1人の招待されたSランク冒険者と戦う。


 派手で見応えのある試合を魅せねばならないのだが、とても普段の姿からはそんな事が出来そうに見えない。

 しかし戦闘だけはまともな男なので、それなりの結果で終わりそうだ。この時はファウンズも、無難に仕事を終えて来るだろうと思っていた。

 しかし残念ながら、ズークはアホでバカでマヌケである。当然ながら普通に仕事だけをやって来る筈も無かった。

■今回の収入(国の報奨金含む):3億1800万ゼニー

■借金総額:5億5290万ゼニー


代理教師の報酬ですが、ズークの1ヶ月800万(色付く前)は500万が指名料です。特に戦闘らしい戦闘も行わないし、衣食住保証の状態で1ヶ月使うのでこの程度で済みます。

これが未開のダンジョンを調査せよ! とかになると1000万を平気で超えていきます。デアゴの洞窟が数日で2000万の報酬になったのは危険度の差です。

残る300万は実力ベースで出来る授業内容のレベルに合わせています。Cランク相当の元騎士や元宮廷魔導士が教師になった場合は月収が100万前後です。

貴族の子供や優秀な平民の育成という国の未来を背負う責任があるので、その役目に見合った高い報酬が得られます。この世界における上級公務員的な存在です。官僚の偉い人ポジション。

本文に入れる必要のある話ではないかなと思ってここで開示します。


隣国カーロの地名はスペイン語を使っています。

国名のカーロ(caro)は高額という意味で、アディネラード(adinerado)は裕福という意味です。

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