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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第2章 幻想闘牌浪漫譚
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第52話 ローン王国の第1王女

 ローン王国の王城は、大陸でもトップクラスの大きさを誇る。大国として相応しい規模を誇っており、床面積だけで15万平方メートルもある。

 それ故に敷地内を移動目的で馬や馬車が、各所に用意されている。最近ではスライドボードという名の、最新式魔道具が配備され始めた。

 東方の国から伝わった代物で、人が2人ぐらい乗れる120cm程の長細い長方形の板だ。

 起動させると板の前方から腰の辺りまで、細いポールとハンドルが形成される仕様となっている。


 あとはそのままハンドルの根本についた、赤いボタンを押せば板が数センチだけ浮かびあがりスイスイと地面の上を移動出来る。

 搭乗者の魔力が必要となるが、人並みにあれば十分動かす事が可能だ。ただし荷物を運ぶには向いていない。

 あくまでも人間の移動用の魔道具に過ぎない。たまたま使用していた使用人に使い方を聞いたズークは、スライドボードに乗って王女の執務室へと向かう。


「へぇ、これは便利で良いな。街中で使いたいぞ」


 まだローン王国では王城にしか配備されておらず、一般販売までは発展していない。

 その内流通が始まれば、都市部でも見掛ける機会が増えるだろう。まあそうなってもズークには、購入するお金が無いのだが。

 どうやって買うつもりなのか、誰にも理解は出来い。呑気な考えでスライドボードを乗り回したズークは、王城内を移動して第1王女の執務室に到着した。

 一旦スライドボードを待機状態に戻すと、ただの板に戻ったのを確認して小脇に抱える。

 それからドアをノックして、中に居る王女に来訪を伝えた。


「姫様、ズークです」


「……入って頂戴」


「失礼します」


 豪華で美しい真っ白なドアを開けた先、王女の執務室の中には見目麗しい女性が居た。

 日差しを浴びてキラキラと輝く、父親に似た美しい黄金の様な髪。椅子に座っているので見えないが、彼女の頭髪は腰まで届く長さを誇っていた。

 誰もが羨む程の美しく長い頭髪は、富と権力の象徴と言われている。その言葉に偽りはないと確信出来る鮮やかな輝きを放っていた。


 整った女性的な柔らかな線を描く輪郭に、高い鼻とぷっくりとした唇。母親に似た宝石の様な碧色の瞳。

 意思の強さを感じさせる双眸と眉が、高い知性を演出していた。彼女こそが次期王妃であり、この国の第1王女。

 25歳の若き乙女、ネルシャ・ローン・ゼンリボである。


「久しいわねズーク。もっと会いに来てくれて良くってよ?」


「あまり頻繫に来ても、お邪魔ではないかと」


「あら、貴方を邪魔に思う事なんてありませんわよ」


 この2人、仲は良いのだが友達以上恋人未満な関係性を続けて来た。

 ズークの方は出来るなら抱いてみたいが、その道は次期国王が確定してしまう。

 流石に王様にはなりたくないと、ズークは考えている。そしてネルシャの方だが、こちらは王女として自分が1番の女性でないと嫌だった。

 例え子供を産んだ順番がどうであれ、ズークを婿にするなら正室は自分であり、残る女性達は全員側室。


 そうなるぐらいにはズークを、自分に惚れさせようと企んでいた。ネルシャは王者が複数の異性を囲うのは当然の権利と考えており、ズークが女性にだらしない事は容認している。

 王族に優秀な血を入れたいのは打算だが、そもそもネルシャにとってズークは好みのタイプだった。

 彼女は知に長けた女性である為、武に秀でた男性との婚姻を望んでいる。


「それで、またSランクモンスターを倒して来たのでしょう?」


「成り行きですけどね」


「今度はどんなモンスターでしたの?」


 ネルシャは狩りが好きな父親を見て育った為に、モンスターとの戦いについて聞くのが好きだった。

 自分には無い武力と武力の競い合い、それを聞くとワクワク出来た。特にズークは冒険者の軌跡が沢山あるので、様々なエピソードを聞く事が可能だ。

 こうしてズークから話を聞く度に、想像力が掻き立てられる。それが王女として日々忙しくしているネルシャにとって、細やかな楽しみの1つとなっていた。

 もし自分が王族ではなく、ただの一般人だったら。そうすればズークと冒険を出来たのだろうか。そんな有り得ない未来を想像する事だったある。


「激戦でしたが皆が居たので、前回ほど辛くはありませんでした」


「前回、ヘルハウンドでしたか。あの時は、4人でしたか?」


「そうですよ。最終的には俺達4人だけで戦いました」


 これまでに戦った相手と比べてどうだったか、そんな事を説明しながらズークは思う。ああ本当にこの人が王女じゃなかったらなあと。

 大人の女性としての魅力は満点であり、これまでに関係を持った誰とも違う良さがある。

 王族故の高貴さが醸し出す、ロイヤルな女性の魅力。王族であるからこそ美しく、王族だからこそ手を出せない。


 このジレンマに毎度ズークは陥っている。こんな残念な男だが、ネルシャが虎視眈々と狙っている事にズークは気付けていない。

 アホでバカな男のどこが良いのかは不明ながら、ネルシャは本気で外堀を少しずつ埋めて行く。緻密に、計画的に攻略を進めている。

 その先に待つのは、ローン王国国王のズークだがそれで良いのだろうか? 物好きっているからなぁと、納得するしかないのだろうか。

ネルシャは某ブランド名から取っています。

高級車好きの父親に、ハイブラ好きの娘。うーんこの国。

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