表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第1章 (借金が)10億の男
49/133

第49話 激闘の果てに

 増援として参加したAランクパーティの銀翼の風を中心に、ズーク達の反撃が始まった。

 盾役のオルクがカラミティピークスを受け止め、他のメンバーが大技を叩き込む事で確実にダメージを与えている。

 彼が持つ大盾は、『衝撃吸収』という特殊な効果を持つダンジョン産のユニーク装備だ。

 オルクの盾で受け止めるとどんな衝撃も吸収されて、持ち手には一切の反動が来ない。


 この能力を活かして盾を地面の方に向けておけば、高所から飛び降りてもノーダメージに出来る。

 今の戦場にピッタリの戦士が到着した事で、戦いの形勢は徐々にズーク達に傾いて行く。

 対して怒り心頭のカラミティピークスは、全力の突進を慣行する。


「下がってろズーク、俺が止める! 後は頼むぞ!」


「任せた!」


「やるわよズーク!」


 銀翼の風に所属する斥候役のジャンが、目くらましに閃光弾を投擲する。元々ダメージを目的としない遠隔攻撃は、どうやら無効に出来ないらしい。

 突然の閃光で見事に視界を潰されたカラミティピークスだが、それでも構わないとばかりに速度を緩めない。

 同じく銀翼の風で後衛を務める魔導士のマージが、進路上の地面に向けて魔法発動し爆破。地面が抉れて凸凹が出来ていた。

 目が見えていないカラミティピークスは、足下が悪くなっていると気付かず全速力で突撃する。

 その結果体勢を崩して勢いが一気に無くなった。そのままオルクが大盾で受け止め、カラミティピークスは完全に停止した。


「……テンペストブレイド!」


「閃光刃!」


 ズークが使える魔法剣の中でも、最高峰の切断力を持つ風の魔法剣。大嵐を超圧縮した暴風の刃が、ズークの剣に纏わりつく。

 同じくリーシュも切れ味に特化した大技を用いて斬りかかる。両方とも発動までタイムラグのあるスキルだが、これだけの隙があれば問題無い。

 2人の刃がカラミティピークスの双角を捉えた。3メートルはある大きな角は、根本からすっぱりと切断される。


 あれだけ自信満々に誇っていた猛牛の双角が、2人の攻撃で呆気なく地面に転がった。

 他のAランク冒険者達も大技を放ち、雷を纏う戦斧や螺旋を描く炎の槍などが一気に襲い掛かる。

 身体強化を突破した一撃は、明らかに大きなダメージを与えていた。


「ブモオオオオオ!!」


「今度は悲鳴っぽいな」


「皆、その調子よ!」


 精鋭達の攻撃が、更に追加で殺到した。総勢15名と少ない人数だが、全員がAランク以上の戦闘力を持っている。

 どの一撃もカラミティピークスの肉体に突き刺さり、真っ赤な血液を噴出させた。流石にカラミティピークスも黙ってされるがままではない。

 未だ視力が戻らなくても、全力で暴れ回る。がむしゃらな攻撃が危険と判断したオルクは、再びシールドバッシュで吹き飛ばす。

 再び向かい合うズーク達と、激昂したカラミティピークス。この様な小さな生き物達に、良い様にされたのが気に入らない。

 おまけに自慢の角まで斬られてしまった。このまま逃げ帰るなど、彼の王者としてのプライドが許さなかった。


「ブモオオオオオ!!!」


「オルク!」


「任せろズーク!」


 再び慣行した全身全霊の突進だが、もう同じ手は通じなかった。閃光弾は目を瞑って躱し、足下にも注意を怠らない。

 これまでで一番の体当たりを決めたカラミティピークスは、意地でも負けないと全力で前へ出ようとする。

 衝撃吸収の効果を持つ大盾だが、効果の限度を超えたのかオルクの体が押され始めた。

 すぐ側に居たズークとリーシュが、急いで後ろからオルクを支えて援護する。

 巨大な猛牛と3人の冒険者が、全力の押し合いで勝負を行う。他の冒険者達は3人を信じて、更なる大技の用意に入った。


「ぬおおおおおおおお!!」


 オルクが雄たけびを上げながら全力で押し返す。これまでも銀翼の風の盾役として、戦い続けた矜持が彼にはある。


「くうぅぅぅ!」


 女性の身でありながら、ローン王国最強の剣士と呼ばれたリーシュ。彼女はここで絶対に負けられない。

 何故なら彼女が守らねばならない、多くの人々の命を背負っているから。


「止まれええええええ!!」


 何だかんだ言っても、理不尽に大切な人々を奪われる辛さを知っているズーク。

 彼が強くなったのは、カラミティピークスの様なモンスターを倒す為。災害級だろうが天災級だろうが、絶対にこの手で倒すと決めたから。

 あの日ズークが決意したのは、心の底から湧き出た怒りがあったからだ。モンスターと言う、人を襲う存在が許せなかった。

 力を合わせた3人の押し返しは遂に拮抗し、完全にカラミティピークスの動きが止まった。すかさずオルクが合図を出す。


「今だ行けぇ!」


 後はオルクに任せて、ズークとリーシュも攻撃に回る。リーシュも他の冒険者達と同様に、自分に使える最も強力な技を繰り出す体勢に移る。

 そしてズークは絶好の機会である今このタイミングで決める為に、自分が使える最強の魔法剣を使用する。

 今から使用するのは憎き相手との決戦の際に編み出せた、ズークだけのオリジナル魔法剣。


 分類としては上位を超えた更に上、最上位スキルに位置する人間の領域を超えた者だけが扱える技。

 かつて抱いていた、強い怒りと憎しみと憎悪の感情。それは今もズークの中に残っているが、普段はコントロールしている。

 日常では出さない様に蓋をしていた、暗く淀んだドロドロとして気持ちを心に蘇らせる。

 強い負の感情を刃に変える、闇属性の魔法剣。全てを失った男が、起死回生の一撃としてこの世に生み出した必殺の技。


「オーディウムエッジ」


 憎悪に塗れた怒りの刃が、漆黒の闇となって刀身に纏われた。全てを切り裂く漆黒の焔が、カラミティピークスの首元へと吸い込まれる。

 首に沿って1周する様に振るわれた一撃で、巨大な猛牛の頭部が地面に落ちた。

困った時はラテン語にって以下略

オーディウムは憎悪を意味する言葉です。憎悪の刃って所ですね。

結局一番怖くて恐ろしいのは憎しみだよねって言う。

次回で1章が終わります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ