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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第1章 (借金が)10億の男
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第48話 戦場に吹く追い風

 強靭な肉体を持つカラミティピークスは、3時間に渡る戦闘を続けてもまだ倒れていない。

 どうやらリーシュの鎧と同じ様に、何らかの遠距離攻撃への耐性を持っているらしい事が分かった。

 本来ならそんな能力を持っていない筈だが、この個体は何らかの方法でそんな能力を得ていたらしい。


 それがこの個体の体質なのか、独自の強化魔法の一種なのかは不明のままだが。

 これはアテム大森林で何十年もインフェルノエイプと戦い続けた結果なのだが、そんな事はズーク達が知らない情報だ。

 どうやら全く効かない訳でもないらしいが、少なくとも弓は一切効かない事が判明している。


「こいつ硬すぎるだろ!」


「まだ魔力が尽きないのかしら!?」


「消耗を狙うのは厳しいか?」


 通常この様な大型のモンスターと戦う場合は、膨大な所有魔力を消耗させて肉体の強化を失わせる。

 その為に大勢で交代を挟みつつ、チマチマと地道に削るのが対大型のセオリーだ。

 対ドラゴン戦などはこの更に大きな規模での戦闘になるが、それぐらいの想定が必要だったかも知れない。

 ズークとリーシュはその様に考え始めている。つまりそれは、圧倒的な人員不足を意味していた。


 この体格差を埋められる盾役を複数用意し、相手を抑え足止めをして強力な一撃を叩き込む。

 そう言った戦いをする必要があり、回避優先の立ち回りでは火力が足りていない。

 ここまで強力な個体を想定しておらず、速度を優先して集まったが故のピンチだった。


「このままじゃあこっちの消耗が大き過ぎる。Bランクは全員一旦下がって休め!」


「ですが!」


「良いから行って! 私達ならまだ大丈夫よ!」


 ズークとリーシュを中心に、最高位の冒険者だけが残って時間を稼ぐ戦闘に切り替えた。

 戦場での正確な情報を迅速に共有する為に、魔道具を利用して騎士団長に連絡を入れる。

 全員に配られているイヤーカフス型の魔道具は、こう言った戦場で必ず使用する必須アイテムだ。


 少しの魔力で通話が可能になる為に、リアルタイムで逐一戦況を伝えらえる。

 弓が効いていない話も、既にこの方法で伝えてある。人員不足だという判断もズークが伝えて、撤退するのか応援を待つのか判断を仰ぐ。

 まだ追加の冒険者が来る事は連絡が来ているので、現状維持で耐えて欲しいとの連絡が来た。


「現状維持と来ましたかっと!」


「中々人使いが荒いじゃない」


「誰が応援で来るのかは知らないけど、仕事の出来る奴で頼むぜ」


 今やカラミティピークスと対峙しているのは、10人の最高位冒険者だけ。

 先程まで50人程が参加していたものの、Bランクパーティを下げたので1人当たりの負担がグッと上がった。

 しかしそれでも問題無く戦えるからこその、AランクでありSランクの冒険者だ。

 Bランクならばそろそろ死傷者が出始める頃合いでもあったので、どの道この判断は下すしかなかった。

 現在までに蓄積した肉体的疲労と精神的疲労は、常人ではとても耐えらえるものではない。

 ここからは普通ではない者達の戦場となる。人類最高峰の戦士達が、巨大な猛牛と命を削り合う。


「こいつの革、良い値段つくんじゃないの? じゃないとやってられないぜ」


「新しい防具の素材に欲しいぐらいよ!」


「そいつは良い、俺もそうして貰いたいねっ!」


 上位に分類されるスキルを使って、ズーク達が攻撃を続ける。近接攻撃はそこまでの耐性が無いのか、ギリギリダメージを与えてはいる。

 しかしそれは若干の被害しか出せておらず、足を止めさせるだけのダメージではない。

 カラミティピークスにしてみれば、かすり傷程度でしかない様だ。全く勢いが衰えておらず、大きな体と筋力を活かして様々な攻撃を続けている。


 再びの突進攻撃を回避したズーク達だったが、振り返るとカラミティピークスは止まっていない。

 この突進はズーク達を狙ったのではなく、砦を狙っているらしかった。どうやらそちらに居る人間達の方が弱いと悟ったらしい。

 先に鬱陶しい羽虫を殺してしまえ、そんな判断をしたかの様に。


「不味い!」


「皆逃げてー!」


「お前ら! 早く逃げろっ!」


 突如狙いを変えたカラミティピークスが、スピードを上げてどんどん砦へと迫っていく。

 そちらには近接戦闘が苦手な後衛達や、先んじて足止めをして疲弊している騎士団しか居ない。

 今回は後半戦まで待機中の盾役達が何人か居るものの、彼らでは10トンを超える巨体を相手に抑えるだけの能力がない。

 急いでズーク達が追いかけるが、スタートしたタイミングの差があるので追い着くのが難しい。


 巨大な破城槌と化したカラミティピークスは、速度を落とす事なく猛烈な勢いで突進を続ける。

 その巨体が砦に直撃するかと思われた次の瞬間に、轟音が戦場に轟くが破壊音はしない。

 砦の数メートル手前でカラミティピークスは止まっている。いやむしろ、それ以上前に進めないという方が正しい表現だ。

 カラミティピークスが力の限り前へ進もうとしているが、踏みしめた4本の足が地面を抉るのみ。


「何? どういう事ズーク!?」


「……()()()!」


()()()()()。何の為に冒険者になったのか、大切な事を思い出せたかよっ!」


 突進して来たカラミティピークスを受け止め、シールドバッシュの要領で5メートル程後退させた男。

 彼はかつてSランクだったパーティ、【銀翼の風】で盾役をやっていた巨漢の戦士だ。

 追い付いたズーク達の目の前には、オルクとかつてのパーティメンバー達がそこに居た。

後2話で1章は完結です。

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