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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第1章 (借金が)10億の男
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第43話 アテム大森林の異変

 ズークとリーシュが学園都市ライアーで教師をやっている頃、アテム大森林の奥地では異変が起きつつあった。

 非常に広大な森であり、ここマネー大陸でも屈指の危険度を誇っている。

 緑が豊かで植物が育ちやすく、水源も豊富な為にモンスターが成長し易い。

 それ故に離れた位置に農村が幾つか点在している。もちろんそんな森があるからには、ローン王国も無策で放置はしていない。

 王都であるキャッシュの街までの間に、幾つかの砦を建造済みだ。もしモンスターの大群が押し寄せて来たら、そんなまさかの事態に備えている。


 ただし砦の外にも新たに出来た農村が増えているので、アテム大森林のすぐ側にも砦を作るべきだという意見も出ている。

 実際そうすれば農地として使える範囲が増えるので、砦を構えるメリットは大きい。

 しかし如何せんアテム大森林が広いだけに、建造するならば前代未聞の規模で作らねばならない。

 建材と資金をどうするかという問題が、ここ20年以上に渡って議論されて来た。


 最早砦というよりも、歴史に残るレベルの大要塞としてプランだけは一応ある。

 だが実際には作られておらず、既存の砦しか現在のローン王国にはない。

 そんな状況下で発生したのが、上位捕食者達の争いだった。アテム大森林の最奥、少し開けた花畑で2体の巨獣が遭遇した。


「グルルルル」


「ギィッ! ギィッ!」


 体高だけで10メートルはある、4足歩行の禍々しい牛の様な魔物が威嚇する。

 相対するのはほぼ変わらない体格をした、醜悪な猿型の魔物だった。前者はカラミティピークスというモンスターであり、後者はインフェルノエイプ。

 どちらも人間の間では災厄級と呼ばれているSランクモンスターだ。この2匹が現在のアテム大森林で、最強格を誇る二大巨頭。


 そんな彼らも、最初からこれ程強かった訳ではない。どちらも成長の過程で、徐々に力を増して来た個体だ。

 今では最強クラスでも、最初はDランク程度の魔物だった。それが野生における闘争に勝ち続け、進化を続けてここまで来た。

 Sランクに至るのはどれも、軽く100年は生きている個体ばかりだ。故に知能も高く戦略的な戦闘も行う事が可能である。


「ギィッ!」


「ブモォォォッ!」


 インフェルノエイプが放った灼熱の炎を、カラミティピークスが華麗に回避し突撃する。体高10メートルもある彼の角は、非常に巨大で堅牢である。

 3メートルはあると思われる双角の根本は確実に1メートルを超えており、こんな角が刺さればインフェルノエイプとて無事では済まない。

 角を除いいた体長だけでも15メートル近く、この大きさなら体重は10トンは確実にある。


 そんなカラミティピークスは時速100キロ以上の速度を出せる為、物理的な攻撃力はSランクでも最高クラス。

 また魔力で体を強化しており、防御力も高く走り出しの初速もかなりの速度を誇る。

 インフェルノエイプも非常に強力なモンスターだが、防御力に特別優れている種ではない。

 カラミティピークスの巨体から繰り出される、猛烈な突進に掠るだけでも負傷は確実。

 彼の突進に耐えられるモンスターなど、そう多くはない。硬い鱗を持つドラゴンや甲羅を持つタートル種の最上位ぐらいだ。


「ブモォ!!」


「ギャッ!?」


 躱しきれなかったインフェルノエイプは、右肩に突進を喰らってしまい吹き飛ぶ。

 周囲の木々が単なるハリボテに見える程に簡単にへし折れ、巨大な肉塊が砲弾の様に宙を進んで行く。

 木々を破壊する激しい音が、周囲に響き渡っている。幹が5メートルはありそうな巨木にぶつかった事で、漸くインフェルノエイプは地面に落ちた。


 頭脳戦を活かせる環境であれば、インフェルノエイプも十分戦える同格だが、この様な開けた場所での遭遇戦では相性が悪い。

 どちらが森の王か、それを決める戦いに終止符が打たれようとしている。

 何十年にも渡って続いた争いは、カラミティピークスの待ち伏せの成功が決め手となった。

 吹き飛んだインフェルノエイプに向かって、巨大双角が高速で接近する。


「ブモォォォ!」


「グギッ……ギィッ……」


 双角が立ち上がったばかりのインフェルノエイプを貫いた。胸元から背中に向けて飛び出た角は、しっかりと心臓を突き破っている。

 永きに渡って争い続けた森の王者を決める戦いは、カラミティピークスの勝利で終わった。

 この様な争いは、自然界で当たり前の様に起きている。大小あれども様々なモンスター達が、縄張りを巡って争い勝者と敗者を決めて来た。

 そして勝ち続けたモンスターがこうして、最強の座に昇り詰める。だがしかしそれはあくまで、この森でというだけだ。

 1つの場所を制した者は、更なる高みを目指して次の狩場と好敵手を探し求める。


「ブモォォォォォォォォ」


 もちろんその場に留まるモンスターだって少なくない。外敵の居ない最高の狩場とも言えるからだ。

 だがこの個体はまだ満足していない様で、次の強敵と成長を求めて移動を開始した。

 何処を目指すかなんて、その個体次第だ。特に法則が決まっている訳では無い。

 南に行くのか、それとも北か。そしてカラミティピークスが向かったのは、アテム大森林の東側。

 その進行方向にあるのは、ズーク達が暮すローン王国がある。かつてSランクのモンスターと命を懸けた戦いを繰り広げた男の下に、またしても新たなSランクモンスターが向かい始めた。

ネーミングに困ったらドイツ語がラテン語を頼れってじっちゃんが言ってた

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