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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第1章 (借金が)10億の男
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第39話 ノーマ・フトゥー

 ズークが学園で代理の講師を始める10年程前、とある貴族家で1人の男子が目を覚ました。

 より正確に言うならば、前世の記憶を取り戻した。日本に生まれて平凡な高校生をやっていた、そんな記憶を鮮明に思い出す。

 彼の最後の記憶は、通学路で交通事故にあった所で終わっていた。死んだのだと思っていたら、まだ生きている。

 しかしそれは、元の自分では無かった。今は既にノーマという、フトゥー子爵家に転生していたらしい。

 まさかそんな、流行りの漫画やアニメみたいな事になるなんて。驚きはしたものの、それならばと定番の行動に出る事に決めた。


「ねぇ、本が読みたい」


「坊ちゃまはまだ、字の読み方が分からないでしょう?」


「じゃあ読み方を教えて」


 まだ3歳だったノーマには、この世界の文字が読めない。最初から知らない言語が読める様なチート能力はなく、神様に会ってもいない。

 どうやら文字を覚える所から、自分は始めないといけないらしい。ただ前世でのノーマでは、勉強がそれほど嫌いでは無かった。

 小説や漫画も読んでいたから、読み書きを覚えるのも吝かではない。むしろ今の内から言語をマスターして、知識チートなんて悪くないかと考えた。

 それから1年間を掛けて文字を学んだノーマは、4歳にして大人相当の言語能力を得ていた。

 結果的にノーマの両親は、我が子が神童なのではないかと大喜びだ。


「凄いじゃないかノーマ!」


「これなら我が家も安泰ですわ」


「あ、ありがとう」


 ベタ褒めしてくれる両親に喜び、更なる結果を出す為に新たな知識を得ようとするノーマ。

 先ずはこの世界について勉強して、現代知識無双をやる事に決めた。早速この世界にない地球の文化や食べ物、道具や思想について調べていく。

 フトゥー家にはそれなりの書庫があったので、本だけでもかなりの量があった。


 先ずはこの国の事からスタートだと、ローン王国の歴史について調べ始める。

 そこまでは良かった、そこまでは。書物を読み進めるにつれて、徐々に流れが変わっていく。

 何故ならこの世界には、明らかに日本人らしき人物の名前や聞き覚えのある道具などが存在していたからだ。


「え、えぇ。マヨネーズは……ある、じゃあポテトチップス……あるじゃん! え、車や銃まであるの!? じゃあもう無いよ出来る事!」


 ここに来てまさかの展開に、ノーマは思わず書庫の床で大の字に寝転がる。

 良く考えてみればこの4年の生活で、妙な既視感を覚える事があったのをノーマは思い出す。

 中世ヨーロッパ風の世界なら、地球と似た料理や道具があってもおかしくはない。


 その程度は有り得ると思っていたし、まんま日本語と同じ名称だとは思わなかったのだ。

 この世界の言葉で言えば、同じ意味になるのかと。だが実際は地球の食べ物や道具等を、この世界の言語に合わせて翻訳しただけだったのだ。

 現代知識チートは既にやり尽くされており、ただの高校生に過ぎなかったノーマに出来る無双はもうない。


「あ、いやでも、魔法があるか! じゃあ子供時代からの努力無双だ!」


 色々調べた過程で、魔法や魔法学園の存在を知る事が出来た。

 冒険者ギルドもあるらしく、上位の冒険者になればかなりの収入が得られるらしい事も分かった。

 幸い自分は子爵家に生まれたので、お金に困る事はない。でもどうせ異世界に来たのなら、元現代日本人としては何か結果を出したい。

 そう考えてノーマは、現代知識無双から方向を転換した。前世で運動はあまり得意では無かったが、それは幼い頃から鍛え無かったからだ。

 そう考えたノーマは、体力作りに魔法の練習などを4歳の内から力を入れた。

 それは別に悪い事では無かったが、ノーマは元高校生故か浅はかだった。その程度の事を、誰もやらない筈はないと気付かなかった。


「ノーマはもう魔法が使えるのか! 息子は天才かも知れぬ」


「ノーマは宮廷魔導士になれるわね!」


「お父様、お母様、気が早いですよ」


 幼くして魔法が使えて頭も良い、その程度なら異世界人で無くともわりとある話だ。

 この程度であれば、異世界人だとバレる事は無い。そして何より、現代知識無双を早期に諦めたのが良かった。

 いや本当の意味で良かったと言えるのかは、正直微妙なラインではあるが。


 なんであれノーマは、異世界人としてのボロを出さずに済んでいた。ローン王国の王立魔法学園にて、試験中のやらかしをやってしまうまでは。

 現代日本人にとって、的当てで的を破壊は定番である。その様な展開が含まれる物語は沢山あった。

 だからノーマは、特に何も考えずに実行に移した。かなり強力な魔法を、ズークの前で使ってしまったのだ。

 異世界人がやりがちな行動を知っていた、ズーク・オーウィングの目の前で。


「君って、異世界人じゃない?」


 これまで誰にもバレた事が無かったのに、ノーマはこの現状にただ混乱するばかり。

 ちょっと強い魔法を使っただけなのに、他にも中位魔法を使った子も居るのに。

 何故どうして自分がピンポイントでバレた? 理由が分からないのでノーマは驚くしかない。

 もうちょっとこの世界について調べておけば、そうすればこの事態は避けられた。

 何か結果を出す事に注力してしまったので見落としたのだ。この世界に知れ渡っている、異世界人特有の行動として知られている言動の数々を。

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