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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第1章 (借金が)10億の男
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第27話 ローン王国王立魔法学園

 指名依頼の話から1週間後、ズークはリーシュと共にローン王国王立魔法学園に招かれていた。

 王都であるキャッシュから、馬車で西に2日程の距離にある学園都市、ライアーの街に魔法学園がある。

 豊富な自然に囲まれており、山や川も近くにある上に作物も豊富に育つ土地だった。

 正門を通り外壁の中に入ると、遠くに巨大な建物が経っていた。


 そこには立派な校舎が立ち並び、様々な専門分野に分かれた3つの棟と教員達専用の校舎の大まかに分けて4つの校舎があった。

 学園から少し離れた位置に学生寮もあり、沢山の貴族家の子息達が通っている。

 そんな学園の職員棟の学園長室で、2人は学園長のメリーナと挨拶を交わしていた。


「久しぶりメリーナ」


「お久しぶりですね、メリーナ学園長」


「すいませんね、アナタ達2人を急に呼びつけて」


 豪奢な木製の執務机に座っているのは、優しそうな表情をした美しい女性だった。

 腰まである長い銀髪は艶があり、背後の窓から差し込む陽光を受けて輝いている。

 色の濃い紅い目が、色の薄い銀髪と対象的に見えていた。全体的にほっそりとした印象だが、出る所は出ている。


 美しい大人の女性として、かなりのハイレベルである事は間違いない。

 34歳というそろそろ40代へのカウントダウンが始まる年齢だが、全く老いを感じさせない妖艶な雰囲気が出ていた。

 つまりズークにとってはたまらない程に魅力的な相手だ。


「大まかな内容は既に聞いていると思いますが、以前の様に臨時講師をして頂きたいのです」


「俺は構わないよ」


「私も暫くは予定がありませんから」


「ありがとう」


 2人はこれまでにも何度か、ここ王立魔法学園で教鞭を取った事がある。

 こんなアレな男であっても、魔法剣士としてSランクになるだけの才覚を持っていたので実力は高い。

 そしてリーシュの方は、ローン王国で最も剣技の才がある女性と言っても過言ではない。

 王国騎士団の騎士団長にすら、膝をつかせたローン王国最強格の1人でもある。


 地道な努力の積み重ねによって登りつめた2人であるから、教師役としては十分過ぎるだけの知識を経験を持っていた。

 純粋な経験値だけで言うならば、下手な教師を凌駕している。

 剣技の教師はせいぜい王国騎士団を引退した者だし、魔法も元宮廷魔導士である事が殆どだ。頂点に辿り着いた者とは言えない。


「しかし教師が怪我とは、一体何があったのです?」


「それが……恥ずかしい事に増長している生徒が一部おりまして」


「ああ、そういう話な」


 王立魔法学園には、貴族の子供達が通っている為に横柄な者やプライドの高い者も居た。

 なまじ親元を離れて生活している為、嗜める者が足りずに勘違いしてしまう事がある。

 特にそれなりに高い爵位を持つ者が、そう言った状態に陥ってしまう。


 親の教育が行き届いている子供であれば、ちゃんと道理を理解している。

 だが貴族だからと自分の立場を勘違いして、平民の生徒や男爵家などと対立する者がたまに出てしまう。

 王立魔法学園では才能のある平民の発掘もしており、特別枠として入学出来る場合がある。現在も一部の生徒は平民出身の生徒だ。


「既に貴族かどうかと魔法の才能は関係がないと、歴史が証明しているのですがね……」


「今もまだ認めない人も居ますし」


「俺だって田舎の平民出身なんだけどな」


 未だに残っている貴族という階級の問題と、平民達との軋轢の数々。

 異世界人という存在がいるだけに、本当はその平民達も異世界人だったのではないか。

 そう主張して、貴族の血筋と魔法の才能を同列で考える貴族は居る。特権階級であるという、自意識の肥大が主な要因だ。

 もちろんそうではない貴族も沢山居るので、全ての貴族がそうだという事はない。


 派閥として別れているという状況で、ここローン王国では貴族全体の2割から3割程度が今も魔法と貴族の血を絡めて考えていた。

 つまり少数派ではあるのだが、国によっては5割と半々な国も中にはある。

 科学的な根拠があったとしても、自分に都合の良い情報を真実だと思い込む者はいつの時代でも居るものだ。


「そんな状況ですから、アナタ達を見れば彼らも現実が理解出来るでしょう」


「なるほど、だから私達なのですね」


「ふーん。そういうお守りね、了解」


 要するに現実を突きつけて鼻っ柱をへし折ってくれ、これはそういう類の依頼だ。

 高位の冒険者には、それなりの頻度で来る定番の依頼だ。増長した冒険者や、貴族を分からせるのが主な任務となる。

 若い冒険者や若い貴族には良くある話で、こうやって現実を知る事になるのだ。

 剣技の授業ではリーシュが、魔法の授業ではズークが少年少女達に世の真実を教える。


 片やAランクでも上位に入る剣士で、もう片方はこの大陸全体で見ても珍しいSランク。

 文句の言い様もない程に、世界の広さを知る事になるだろう。それはそれとして、しっかりメリーナを夜のデートに誘うズーク。

 もちろん丁寧に断られていた。子供達よりも前に、先ずこの男に常識と節操を知らせる方が良いのではないだろうか。

ライアーはライアビリティから取った地名です。義務や負債と言った意味があります。

定期的に残念なボンボンや箱入り娘が来るという意味では負債ですね。

貴族の責務や義務と言った意味も込めています。

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