第26話 バレないわけがないだろう
裏の賭場で儲けたズークは、元手分の借金を完済。やった事は卑劣というかズルに近いが、そもそも裏の賭場なんてのはそういう場所だ。
イカサマやズルを見抜けない様な人間が居て良い場所ではない。そもそも程度の差はあれど、ズークに負けた者達も使う時は使う。
実力の差はあっても、人間性については同レベルだ。そんな事よりも金貸しの分だけとは言え、ズークが借金を完済した事の方が大問題である。
この男にそんな真似が出来たのかと、驚かずにはいられない。そんなズークが次に向かった先は…………娼館だった。仕事に行く? ハハハそんなまさか。
「あらズークじゃないの!」
「よっ! 久しぶり」
「最近全然来てくれないから、噂のダンジョンにでも行ったのかと思ったわ」
ここで言う噂のダンジョンとは、デアゴの洞窟ではない。ここ1年ほどから盛り上がっている、他国にあるダンジョンの話題だ。
今稼ぐと言えば先ずはそこが候補に挙がるホットな場所だ。キャッシュの街から遠征に出ている冒険者も多い。
リーシュの様な冒険者なら、十分に稼いでいるので別に無理して行く程ではない。
だが一山当てたいBランクパーティやCランクパーティ、そして成長を目指すDランクから下のパーティはこぞって参戦している。
ズークも行けば結構な稼ぎになるのだが、流石にソロで潜るのは厳しい。浅い位置でなら余裕だが、現在攻略中の層まで行くと人手が足りない。
「それより、今なら誰がいける?」
「ちょっと待って、見てくるから」
「おう」
娼館の受付から、オーナーの女性が娼婦達の様子を見に行く。特にズークは急いでいないので、のんびりと待っていた。
確認が終わったオーナーの女性が戻り、今から遊べる女性が告げられる。まだ昼間なので寝ている者も多く、働いている女性は少なかった。
アリシャという21歳の女性と、シャンディという22歳の女性だった。ズークが10代に興味が無いのをオーナーは知っているので、今出せる20代を提示した。
ベテラン揃いの20代後半や、30歳前後の女性は夕方からしか出て来ない。
「うーん、年下かぁ」
「ちょっと安くしとくからさ、新人の面倒も見てくれない?」
「まあそういう事なら、2人共行くか」
「流石ズーク、太っ腹ね!」
いやこの男は今、多額の借金を抱えてガリガリです。ズルで得た汚い金を手に、娼館に来たアホな奴です。
そんな事実を知らないオーナーは、2人の新人娼婦を呼びに行く。ソバカスが特徴的な茶髪の女性がアリシャで、小柄な青髪の女性のシャンディが姿を現す。
娼婦になるだけあって、2人共スタイルは抜群に良い。そして有名なSランク冒険者が相手とあっては、彼女達も期待に胸が高まる。色々な意味で。
だが残念ながらこの男は、どうせまた暫く来られない。今後の稼ぎに期待している2人には可哀想な現実である。
「本当にこの店、ズーク様が来て下さるのね!」
「私はシャンディと申します。宜しくお願います」
「宜しく2人共」
それから2時間程に渡って、ズークは楽しい時間を過ごした。用意された部屋のベッドで、2人の女性が肌かでダウンしていた。
Sランク冒険者になれるのだから、当然体力も尋常ではない。そしてこの男はモテるので、無駄に女性経験だけは豊富だ。
つまりそっちの方もSランクで……この話は果たして必要だろうか? いやない。超どうでも良い事なので割愛し、物語に戻ろう。
2人の女性に挟まれたズークは、それなりに満足していた。ズークの好みにどストライクなカレンや、リーシュ程ではないが2人共十分に魅力的な女性だ。
これで文句を言う様では、価値観がおかしいと言うほかない。幾らズークでもそこまで馬鹿ではない。
「さ、流石ですねズーク様」
「お姉様達の言っていた通りでした」
「2人共まだ若いからな、まだこれからだよ」
新人冒険者に指導をしたかのな雰囲気でズークは語るが、ここは娼館であり相手は娼婦だ。正直言ってあまりカッコイイ絵では無い。
どちらかと言えば、娼婦に説教おじさんに近い絵面であった。娼婦達が嫌がるような行為をしたのではないので、迷惑なおじさん達ほど酷くはないが。
それからも少しのスキンシップを挟んだ後、シャワーを浴びて部屋を出る。料金は前払いで、既にチップも込みで全て支払った後だ。
オーナーの女性からまた来て欲しいと頼まれながら、ズークは娼館を出る。
気分爽快といった表情で表に出たズークは、思わず笑顔が固まった。
「ズーク! 働きなさいって言ったでしょ!」
「アンタ、随分と良い度胸してるじゃないの?」
「いやこれはホラ、必要経費ってやつ?」
全然仕事を受けに来ないので怪しんだカレンがリーシュに話を聞き、恐らくここだろうと当たりを付けて娼館の前で仁王立ちしていた。
当然弁解など許されず、冒険者ギルドに連行された。もちろん賭博で得た残りのお金は全額没収となり、僅かに残っていた50万ゼニーは返済へと充てられた。
それからは王立魔法学園に向かうまで、きっちりと仕事をさせられる事となった。
最初からそうしていれば印象も変わるのだが、頭がアレなズークにはそんな事は出来ない。
キッチリと怒られたズークは、これから4日間に渡って働き400万ゼニーの返済が出来た。
■4日間の収入:450万ゼニー(50万は賭博の残り)
■借金総額:8億5250万ゼニー




