表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第1章 (借金が)10億の男
25/131

第25話 真面目に働く? ハハハそんなまさか

 流石にファウンズ支部長とリーシュに怒られたから、ズークも真面目に働くだろう。

 なんて事は当然ある筈も無く、ズークは今賭場に居た。どこにそんな金があったのか? 答えは簡単な話で借りれば良いのだ。

 借金に借金を重ねるアホが、一体どこに居るかと言えばここに居る。そして悲しい事に、わりとこの様な行動をしている者達は居るのだ。


 世の中には豊富なギャンブルがある為に、深くのめり込んで借金地獄に陥る。

 これは良くある話で、最終的には地下闘技場送りになる冒険者やゴロツキなんて山の様にいる。

 そして裏通りにある隠れた賭場には、そういう連中が集まり易い。


「おいテメェ! 今のはイカサマだろ!」


「はぁ? どこに証拠があるんだよ?」


「なんだとぉ!? ふざけやがって!!」


 当然そんな場所ではイカサマを使う者もおり、ポーカーで勝負をしていたテーブルで喧嘩が始まった。

 この賭場では主にトランプと呼ばれるカードを使用した賭け事が行われている。

 表向きはただのバーであり、賭け事を行っているのは秘密となっている。

 国に正式な営業許可を貰っていないので、バレたら違法賭博として摘発されてしまう。

 だからこその、すぐに隠せるトランプなのだ。最悪ただ遊んでいるだけだと言い張れる。やや強引ではあるものの。


 その為に直接現金のやり取りをせず、店内で専用のコインと交換する。

 コインは木製なので、賭けごっこだと言い張るに丁度良いチープさがあった。

 最終的な換金はバーのカウンターでバーテンが行ってくれる。今までもずっと子のスタイルで、10年以上バレずに営業をしていた。

 そんな店内でズークは、ブラックジャックというゲームに興じていた。トランプの山を目の前に置いて、ズークは1人の男性に声を掛ける。


「アンタはどうする?」


「ヒットだ!」


「へぇ、良いんだな?」


 ブラックジャックはトランプの絵札を全て10、2から10は数字通り、そしてAだけは1か11として扱う。

 そして最初に配られた2枚と、追加で1枚を貰うヒットか受け取らないスタンドを選択して合計21を目指す。

 最終的に一番21に近かった者が勝利となる。また最初の2枚で21だった場合は、ゲーム名でもある『ブラックジャック』という役になりただ21を作った人よりも上になる。

 ただ合計21を超えてしまうと失格なので、なにも沢山貰えば良いというものでもない。


 そんな勝負事でズークは親を、つまりディーラー役をやっていた。プレイヤー側は4名の男性達だった。

 全員が1枚目を公開しており、1人目の小太りの男はダイヤの7。2人目のやせ細った男はスペードの9、3人目のゴロツキ風の男はクラブの5。

 そして4人目の老人がハートのキングで、親のズークはスペードの10だった。


「ぐっ!?」


「次のアンタは?」


「スタンドだ」


 追加で1枚を引いた1人目の男性が、悔しそうに表情を歪めた。恐らくは21超え、つまりバーストをしてしまったのだろう。

 2人目はそのまま手を変えず、3人目も1枚だけ引いて終了。4人目も何も引く事無く終了となった。

 現状で最も有利なのは、絵札のキングが1枚目の老人と同じく10が1枚目のズークだ。

 2人目の9を持つ男もスタンドを選んだので最大で19か20の可能性があった。

 そして老人とズークの場合は、21のブラックジャックである可能性が考えられる。だがここでズークは、スタンドではなくヒットを選ぶ。


 1枚引いたズークは更に、もう1枚を追加で引く。4枚もの手札を持ったズークを見て、2人目の男と4人目の老人がほくそ笑む。

 ブラックジャックでは、3枚以上引くとバーストの確率が跳ね上がる。

 そして4枚目を欲したという事は、元々の手持ちが弱い可能性が高い。


「さあ、どうする? アンタ達?」


「勝負だ!」


「ワシもじゃ!」


 そもそもバーストして勝負になっていない2人目の男は降りる。

 3人目のゴロツキ風の男は一瞬悩んだが、自信を持てる手では無かったのか同じく降りた。

 自信満々な2人を相手に、ズークは勝負する事となった。2人目のやせ細った男から順番に手札が公開されて行く。

 彼の手札は9とAで合計20と中々の強さだ。続いて4人目の老人だが、キングと10でこれまた20。


 両者ともにかなり強い手であり、傍から見ればズークは非常に不利である。

 親の欠点として、勝負から下りるという選択が出来ない点がある。プレイヤー側である子の方は、降りさえすればダメージは少ない。

 1回分の参加費が没収になるだけだ。その降りる選択が出来ないズークの手札は、1枚目の10と2枚目の3。

 そして更に公開された3枚目は6で、ここまでの合計は19だ。つまりズークが引いたのが2かAで無ければ、ズークの敗北となってしまう。


「悪いね、21だ」


「なぁっ!?」


「なんじゃと!?」


 ズークによって公開された4枚目はハートの2。10+3+6+2で綺麗に21となっていた。

 公開する寸前までズークは自分の前に置いた山札に、一切手を触れていない。

 公開の瞬間にカードをすり替える事が出来なかったのも、ここに居る全員が見ている。

 イカサマを疑う余地と証拠がない為、勝負に出た2人は何も言えない。


 使用されているトランプは裏社会で良く使われている、魔力を一切通さない代物。

 今更騒いだ所で、降りた2人から白い目で見られるだけだ。しかしこの勝負、実はフェアなものではない。

 それはズークの特殊技能が使用されているからだ。【完全記憶(パーフェクトメモリー)】というズークだから使える記憶能力を使った。


 カードの傷や僅かな汚れ、使いこまれたからこその1枚1枚で違う手触り。それらを全て把握している為に、次のカードが何かなど見えているのも同じ。

 実質イカサマと同レベルであるのだが、勝負は勝負としっかりと勝ち抜くズークであった。

 普通に出禁レベルをかましていて、正直終わっているとしか言いようがない。

完全記憶(パーフェクトメモリー)】…トランプ等の記憶力がモノを言う勝負事において、非常に有利になれる特殊技能。これについては戦闘でも活かされる事が多い数少ない技能。ただしどう考えてもイカサマの類である事に違いはない。ズーク本人は記憶力だからズルではないと主張し、未だに卑怯とは認めていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ