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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第1章 (借金が)10億の男
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第21話 とあるギルドの鑑定士見習い

 僕はレオン、ローン王国の田舎に生まれたごく普通の人間だ。

 子供の頃に生まれた村に訪れた冒険者達に憧れて、友人達と皆で冒険ごっこなんてやった事もあった。 

 だけど結局僕達は、ただの平民に過ぎなかった。1人また1人と、冒険者になんてなれないと諦めて行く。

 最後に残った僕と幼馴染のレックスだけは諦め切れず、思い切って村を出た。

 王都のキャッシュまで行けば、何とかなると勝手な思い込みで上京してみたは良いものの結果は言うまでも無かった。

 当時はまだ15歳の成人前で、深く物事を考えられていなかった。


 そもそも僕は鑑定の魔法しか使えず、攻撃系の魔法を使う才能が無かった。魔力だけはそれなりだったけど、才能が無くてはどうにもならない。

 たまたまレックスと共にEランクのパーティに入れて貰ったけど、Dランクに上がろうという段階で限界が来た。

 剣の才能があったレックスと違って、僕はもう着いて行けそうに無い。自らパーティから脱退して、村に帰ろうかと思った。


 そうしたら受付嬢をやっていたカレンさんに、冒険者ギルドの職員にならないかと誘われた。

 もうすぐ20歳で成人するし、今更村に帰っても農業の事はあまり知らない。

 それなら4年と少しだけど経験のある所で働く方が良いかなと。


「レオン、悪いがこれ全部鑑定してくれ」


「分かりました!」


「なるべく早く頼む!」


 1年目から僕は鑑定係として働く事になった。早速先輩から渡された素材の鑑定を行う。

 冒険者の中には、嘘をついてワンランク下の素材を提出する人もいる。ゴブリンライダーの牙だと言って、ただのゴブリンの牙を出すとか。

 そう言った行為を防ぐ為と、本人が把握出来ていない価値の高い物だった場合に、正しい価値を把握する目的がある。

 それに見た目が分かり難い素材だって一杯ある。働き始めて1ヶ月目は、色々と覚えるのが本当に大変だった。今では2ヶ月目に入って、それなりに慣れて来た。


「フロストバットの牙と、オークの肉、それからファイアウルフの毛皮です」


「すまん助かった!」


「いえ、僕の仕事ですから」


 鑑定をする為の魔道具も売っているけど、高い上にそれなりに魔力を込める必要がある。

 一流の冒険者になれる人や、宮廷魔導士になれる人ならともかくただの職員では厳しい。

 その点、僕はそもそも鑑定魔法が使える。戦闘の才能は無かったけど、こっちの才能はあったらしい。

 鑑定魔法は使える人が少なく、魔道具と同様にそれなりの魔力が必要だ。結果的にこうして、冒険者ギルドの鑑定士見習いになる事が出来た。

 誘ってくれたカレンさんには感謝しかない。あんな綺麗なお姉さんが、僕の才能を見出してくれたなんて今でも信じられないけど。


「なぁレオン! 昼飯に行こうぜ!」


「あっ! はい! 今行きます」


「今日はどこで食おうか」


 この人は素材の換金係を担当している、2年先輩のマークさんだ。24歳の結構顔が良い背の高い先輩だ。

 160cmしかない平凡な僕からすると羨ましい限り。マーク先輩は女性の冒険者から人気があって、良く食事に誘われている。

 基本的に表に出る事がない僕には無縁の話だ。そんな先輩と一緒に、冒険者ギルドから近い喫茶店に入る。


 お互いに注文を済ませるとマーク先輩が雑談を始めた。内容としては、僕と変わらない時期に受付嬢として採用された女の子の話だ。

 ローン王国の北方にある田舎から出て来た17歳の女の子で、名前はミーシャ。

 今凄く人気のある受付嬢の1人だった。要するにどの職員が一番好みかという話題だ。


「やっぱ今はミーシャ一択だよなぁ。レオンもそうだろ?」


「えっ、いや、僕は別に」


「今は2人だけだぞ? 遠慮すんなって」


「…………僕はその、カレンさん、ですかね」


 おいおい嘘だろあんな年増と笑われてしまった。そうだろうか? 確かに僕とは10歳離れているけれど、綺麗な女性だと思う。

 だからああして受付嬢をやれているのだし。それに僕が冒険者になってすぐの頃は、カレンさんは一番人気のある受付嬢だった。

 ほんの数年でそんなに人の魅力ってなくならないと思うけど。でもマーク先輩を始め、周りの男性達は大体ミーシャが一番だと言う。

 それは冒険者達も同じみたいで、僕には良く分からなかった。ミーシャだって可愛らしい女の子だと思うけど、大人の落ち着いた女性の様な魅力はない。

 3歳しか離れていないのにこんな事を言うのもアレだけど、ちょっと子供っぽい。


「まだまだガキだなぁレオンは」


「そう言われると否定は出来ないです」


「そろそろ大人の階段を上っておけよ? 20歳だろ?」


 良く男性の先輩職員に似た様な事を言われる。だって僕は少し前まで、冒険者として成功する事しか頭に無かった。

 自分に出来る事を探して、必死に短剣術も身に着けようとした。それでも結局はEランク止まりの実力しか得られなかったけど。

 だから僕は、まだ女性とそういう関係になった事がない。恋愛とか結婚とか、あんまり良く分からない。


 ただもしも、そういう関係になれるとしたら。僕はカレンさんが良いなと、密かに思ってはいる。

 でもこれが恋心というモノなのかは、僕には良く分かっていない。綺麗だな、美人だなとは思っているけど。

 そんな僕の内心を知ってか知らずか、マーク先輩は女性とのお付き合いについて暫く語ってくれるのだった。

この子が主人公で良くないって?

それはそう。

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