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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第1章 (借金が)10億の男
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第17話 真相の報告と次の仕事

 デアゴの洞窟の真実を知ったズーク達は、キャッシュ支部に戻って報告を入れた。

 詳細を教えろとファウンズに呼び出された3人は、見て来たもの全てを伝える。

 ついでに新品のロングソードに変化した、ギルドの貸し出し品は証拠品として没収となった。

 起きた事を考えれば当たり前である。そもそも貸し出し品であって、ズークの所持品ではない。


 ただし一応の追加報酬は得られたので、指名依頼である事と合わせてこの依頼で1人2000万ゼニー分の報酬となった。

 本来なら危険な任務であり、調査依頼にも関わらず最深部まで2日で踏破して来たという点で色が付いた形だ。

 実際にはかなり難易度が低いダンジョンだったので、結果的には破格の報酬だ。

 もちろんズークは借金が減るだけで、手元には何も残らない。リーシュとバックスが退室した後もズークは残り、ファウンズへの抗議をする。


「なあ支部長、まともな剣だけでもくれない?」


「立場を弁えて発言しろ馬鹿もん! まだ8億以上の借金があるんだぞ!」


「つってもさぁ、やり難いって流石に」


 なおも食い下がるズークだったが、ファウンズは取り合わずに追い出した。

 ファウンズとて馬鹿ではないので、せめて3億ゼニー辺りまで借金が減れば考えなくもない。

 だが現状半分も返せていない以上は、まだまだお説教期間は継続だ。

 キャッシュ支部の冒険者は優秀な者が多く、利益も潤沢なので8億の立替えで潰れる事はない。


 だが無視は出来ない額なので、ズークにお灸を据える意味でも暫く許すつもりがファウンズにはない。

 反省を促す意味で甘やかさない。もっともそれでズークが真人間に戻るかは、正直怪しいと言うほかない。

 追い出されたズークはギルドの1階に戻り、再びリーシュと遠征の相談をする。


「次は何を受けようか?」


「そうねぇ、フレイムワイバーンの依頼はもう無くなったみたいだし」


「これは? ポイズンアントクイーンの心臓の納品」


「まあ、悪くないわね」


 ポイズンアントクイーンとは非常に厄介なモンスターであり、猛毒を持った大きな蟻の女王である。

 ポイズンアントの巣に入って、一番奥まで行かないと出会えない相手だ。

 大量のポイズンアントを相手にせねばならず、迷路の様な巣を攻略する必要もある。

 1匹ずつなら大した相手ではないが、大群ともなるとCからDランク程度の冒険者では先ず無理だ。

 全員Bランクで集まった規模の大きいパーティーならば、不可能ではないレベルになる。

 ただあくまで討伐だけなら、という前提が付く。最奥に居るクイーンとの激しい戦闘の果てに、心臓を破壊せずに倒すのは難しい。

 駆除なら可能でも、心臓を持ち帰るとなると話が変わって来る。故に報酬額も高く、1個で1000万ゼニーと提示されていた。


「クイーンの巣分け前のタイミングに当たれば2000万だ」


「この前決めた通り、報酬は6対4ね」


「オッケーそれで良い」


 ズークにしては珍しく、真面目に仕事の提案をしていた。しかし理由は簡単で、魅力的な女性であるリーシュと一緒だからに過ぎない。

 諦めという言葉を知らない男は、懲りずにアピールを欠かさない。

 だと言うのにリーシュがズークと組む事を嫌がらないのは、決して強引に迫る事はないからだ。

 あとは褒められる事そのものは悪い気がしないというのもある。


 そしてこんなアホな男ではあっても、女性が嫌がる事を無理強いしないのがズークのポリシーだ。

 何より戦力として頼れるし、根が悪人ではないのでリーシュはそこまでの拒否感を持っていない。

 気が多いだけで、基本的には紳士である。いや紳士か?


「ただちょっとシャワーでも浴びたいから、ちょっとだけ時間を頂戴」


「ご一緒しましょうかレディ?」


「お断りよバーカ」


 この通り結構仲は良いのだ。やはり命を懸けた戦いの中で、共に何度も戦って来たからこその間柄だ。 

 特にリーシュはカレンと同じく、復讐に全てを賭していた頃のズークを知っている。

 当時のズークは今と比べ物にならないぐらい、殺意と闘志に満ち溢れていた。

 その頃を思えば、リーシュとしては今のズークの方が人間味を感じられて好きだった。


 復讐の鬼と化していた頃のズークは、モンスターを狩る機械の様になっていたから。

 もちろん異性としての好意ではなく、仲間としてだけだが。やっぱり結婚相手としてはノーであるし、恋人候補にもならない。

 体の関係なんて当然論外である。一緒に戦うのは構わなくても、一緒にシャワーなど断るに決まっている。


「今はエレナの家に居候しているのよね?」


「そうだけど」


「じゃあ準備が出来たら迎えに行くから待ってて」


 居候というかほぼ寄生である。寄生虫でないのが辛うじてマシかと言うレベルの。

 ニートよりはギリギリ存在価値のあるヒモ男は、相棒であるリーシュの準備が終わるのを待つ事となった。

 ちょうどお昼前であったので、何か作ってエレナと食べる事を考えながら、ズークは一旦エレナの自宅へと向かう。

 漸くまともに借金の返済が始まった様に見えるが、いつまでこの調子でやって行けるのかやや不安が残る。

 もう少し頑張れば、8億の壁を超えられる所まで来ている。このまま7億台まで突き進むのか、そうではないのか。全てはズークの行動に掛かっている。

■本日の収入:2000ゼニー

■借金総額:8億6500万ゼニー

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