表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第1章 (借金が)10億の男
16/131

第16話 デアゴの洞窟 後編

 未発見のルートが発見されたデアゴの洞窟を探索中のズーク達。

 どれだけ進んで行こうとも、大して変わらない難易度に妙なものを感じさせられている。

 多少敵の強さが上がったり、トラップが少し複雑になったり。内装がただの洞窟から砂漠に変わる事もあれば、草原の様な景色に変わる時もあった。

 色々と変化はあるのだが、相変わらず区切りとなるボス部屋で手に入るのは謎の金属片のみ。

 対になっている様なものもあれば、何に使うのか分からない半端なサイズの金属板もあった。


「意味がわからねぇよ、なんだこれ?」


「手に入るのがこんなのばっかりじゃねぇ」


「……(頷く)」


 3人ともが悩まされ続ける謎の報酬は、ただただ増えて行くばかりだ。

 元々ダンジョンという存在自体が良く分かっていないとは言え、このデアゴの洞窟は随分と謎が多い様だ。

 確かに使途不明の出土品が見つかる事もある。だがそれはこれ程の頻度ではなく、たまに見つかる程度でしかない。


 こんな毎度の様に、不思議な金属片ばかり見つかるのは異常だった。元から異常を調べに来ているのだから、異常な物が見つかるのはある意味当然とは言える。

 しかし何もかもが良く分からない事ばかりである。もう70階層以上踏破しているのに、一向に現れない強敵も不思議だった。

 通常なら50層も超えればそれなりの敵が出て来る。しかし現れるのは、入り口付近と比べたらやや強い程度でしかない。


「何か、新人教育みたいなダンジョンよねぇ」


「そうかぁ? 新人にこんな金属片ばかり集めさせて、何になるって言うんだよ? なあバックス、この金属片に価値はあるのか?」


「…………(首を振る)」


 リーシュの目には新人教育に見えるらしいが、ズークにはそう思えなかった。

 まだ続きがあるらしいので、先に進むズーク達。最高位の冒険者達なので踏破する速度は速いものの、謎は更に深まるばかり。

 1日の内に200層を超えたが、難易度はやはりそう大きく変わっていない。


 200層を超えた辺りから、Dランク程度の強さと知識が必要になり始めた程度だ。

 100層以上もありながら、ここまで難易度が低いダンジョンなどズーク達は聞いた事が無い。

 そして相も変わらず、用途が分からない金属片だけは集まっていく。


「何層まであるんだよここは」


「深いわりには簡単よねぇ」


「……」


 2日目に400層を踏破した頃、いつもと違う変化が起きた。次へと続く階段ではなく、普通の家についている様な木製のドアが現れた。

 3人は一応警戒しながら中に入る。突入した先にあったのは、誰かが使っていたと思われる研究室の様な部屋だった。

 どういう仕掛けか不明だが、薄暗かった室内に突然明かりが灯る。3人は即座に周囲を警戒するも、誰も姿を現さない。

 暫くの沈黙が続いたのち、木製のテーブルに置かれていた謎の宝珠が光始める。攻撃的な空気が無かったので、ズーク達は離れて様子を見守る。


『やあ、初めまして。僕はマサオ。マサオ・タカミネという』


「これは映像記録、か?」


「どうやらそうみたいね」


 宝珠から投影された白衣を着た30代ぐらいの男性は、この辺りでは珍しい人種だった。

 あまり凹凸のない顔立ちに、短い黒い髪と眼鏡の奥にある黒い瞳。背が高いとも言えず、極端に低い事も無い。

 東の方にこういうタイプの人種が多い島国があったなと、ズークは映像の男を見ながら考えた。


 マサオと名乗った男は、このダンジョンの製作者であり異世界から来た事を明かす。

 自分の血を継ぐ子孫が8層をクリアすると、本当の姿を現す仕組みになっているらしい。

 恐らく最初に発見した教育中の新米パーティーに、彼の子孫が居たのだろう。なんとも回りくどい仕組みだなとズークは感じた。


『そしてボスドロのアイテム達だけど、なんと! 8層で手に入るショートソードに全てを装着すればロングソードになるんだ! いやーロマンだよねこう言うのって』


「はぁ? なんじゃそりゃあ」


「ズーク、それって貴方がギルドに借りている剣の筈よ」


「え、コレってここで手に入る剣なのかよ。だから山ほど中古があるのか」


 ここデアゴの洞窟は、新人冒険者が最初に鍛錬をする場所の1つだ。

 最初は使い古された物をギルドから借り、ここに挑んで新品を得る。新品を手に入れた新米が成長し、必要が無くなったらギルドが買い取り貸し出し品へ。

 どうにもならないレベルまで品質が落ちたものは、廃材として溶かされる。という循環が成り立っているのだ。

 そんなギルドから借りた8層で手に入るお宝に、これまでに手に入れた金属片を装着していく。

 すると最終的にはショートソードから少し短めのロングソードに生まれ変わった。

 どうやら何かしらの細工が施されていたらしく、剣が一瞬輝いた後には継ぎ目など無くなっていた。


「なんつーかさ。凄いのは凄いけど、結局品質的には微妙じゃね?」


「異世界人の考える事は理解できないわねぇ」


「…………」


 で、だから何なの? と首を傾げるズーク達。その背後では記録映像の中でマサオが熱弁を続けていた。

 ダンジョンでアイテムを収集して最後に合体、素晴らしいねぇと自画自賛を続ける。

 製作者本人曰くは、Cランクぐらいまでは通用する性能だと言っている。

 新米から始めて、Cランクを目指す為の鍛錬場だと思えば分からなくもない。


 分からなくもないが、あまりにも回りくどいので利用価値があまりない。

 そのせいでこの情報が後世に残らなかったのではないか? という結論に最終的には至る事となる。

 だが今はどうギルドに報告すべきか、3人は途方に暮れるのだった。

デアゴ〇ティーニな洞窟という事でした。

日本人の転生者とか転移者が居たら、1人ぐらいはこう言う事しそうじゃないです? というエピソードです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ