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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第4章 ダンジョンとクズ男
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第153話 馬車馬の如く

 ローン王国を拠点として活動しているSランク冒険者、ズーク・オーウィングは借金を抱えている。

 それも半端ではない程の高額な借金だ。カジノに娼館、酒場と言った場所で豪遊を繰り返した結果だ。

 仇のモンスターを倒した後、燃え尽き症候群を患った結果、余計な癖がついてしまった。

 

 それは大量の浪費と女遊びである。本来であれば、高い戦闘能力を持つ赤髪の美丈夫なのだ。

 しかし現在では、『黙っていれば』や『戦っている時だけは』という表現が付いて回る。

 まさに宝の持ち腐れとしか言えない彼は今、陽光の降り注ぐ街道で巨大な荷車を引いていた。


「ああ、なんでこんな地味な仕事を俺が……」


 どう見ても馬が引くサイズだが、ズークの腕力と体力があれば1人でも引ける。

 何故こんな事をしているかと言えば、正に馬車馬の如く働かされているのである。

 酒に酔ってギルドから借りた装備を、質に入れるという愚行に出た結果だ。

 あまりに馬鹿げた行動に出た結果、ギルドで強制労働をする羽目になった。


「馬は黙って足を動かしなさい」


 荷台には金髪のポニーテールが特徴の美女、Aランク冒険者のリーシュが乗っている。

 彼女は鎧を脱いで寛いでいた。何故リーシュが同行しているかと言えば、ズークの監視役の役目を負っているからだ。

 しかし彼女の目的はそれだけではない。現在向かっている行先に用事がある。

 それは今マニー大陸で一番ホットな場所、高難易度ダンジョンが賑わっている街だ。

 ズークの役目は、その街にある冒険者ギルドへの物資の運搬。そしてリーシュは、現地にいる友人に会う目的があった。


「幾らなんでもさぁ、本当に馬車馬として働かせるか?」


「ズークがそれだけ馬鹿をやるからでしょ」


 幾ら素晴らしい戦闘能力を持っていようが、借金の返済が遅れていれば冒険者ギルドも黙っていない。

 まともに働いて少しずつでも返していれば、こうならずに済む。しかしズークは事あるごとに余計な事をしている。

 支部長を怒らせてしまった以上は文句を言えない。素直に従って働く以外に道はないのだ。ズークには文句を言う資格などない。


「ほらズーク、ペースを上げないと到着が遅れるわよ」


「へいへい」


 ローン王国から目的の街までは、国を3つ程抜けなければならない。Sランク冒険者の足とは言え、のんびりしていればその分到着は遅れる。

 遅くなりすぎればサボったのがバレる為、吞気にしている余裕はない。人の手で引いているが、走る速度は馬と同等かそれ以上。

 人が異様に早い速度で、荷車を引く姿はあまりにシュールだ。すれ違う旅人や商人達が、思わず振り返っている。

 

 あまりのスピードが出ている為、引いている人間の顔がハッキリと人々の記憶に残る事はなかった。

 謎の赤髪の男が、荷車を引きながら爆走していた。そんな噂が広まるのは時間の問題だろう。

 もしかすると、詩人たちの詩になるかも知れない。それとも怪談として噂が広がるか。いずれにしても、変な話として話題になるのは間違いない。

 暫くそうして走っていると、リーシュがズークへと声を掛ける。


「ねぇお馬さん、どこでも良いから街に寄ってくれない?」


「ええ? 何で?」


 汗1つかかず爆走しているズークは、荷台に居るリーシュへと尋ねる。寄り道をする理由が分からなかったからだ。


「もうお昼よ、ズーク」


 リーシュは時刻を示す懐中時計型の魔道具を、ズークの方へ突き出した。

 彼女の持つこの魔道具は、止まる事が無く時差にも自動で適応する。登録した自国の時間と、今居る場所の時間を両方表示する事が出来る。

 現在地の時間表示は、丁度お昼を示していた。ズークはまだまだ走れるが、一息入れるというのは歓迎だ。

 Sランク冒険者とて人間であり、定期的な飲食は必要だ。飲まず食わずのまま戦う事もあるが、今はそこまで無理をする時ではない。


「どこでも良いのか?」


「この辺りの街なら、どこでも良いわよ」


 冒険者として様々な土地へ遠征していた2人は、色んな国々を回って来た。どこにどんな街があるかも、2人は熟知している。

 現在地から先にある街は4つの選択肢があり、どこへ行っても食の質はそう大きく変わらない。

 香辛料が売りの街と、串焼きが美味しい街。フワフワのパンが名産の街と、麺類が有名な街。

 どこにするか悩んだズークは、一番目的地へ近い香辛料が売りの街をチョイスした。


「マレーンの街でどうだ?」


「あら良いわね。久しぶりに寄ってみたいかも」


 行先を決めた2人は、マレーンの街へ向かう。ズークは少しだけ方向を変え、速度を落とす事なく走り続ける。

 マレーンの街へは、2人共行った事が有る。その時も同行していたわけでは無いが、それぞれ思い出がある街だ。

 懐かしい気分に浸りながら、心地よい風を感じつつ進んで行く。そしてその間も、すれ違う人々が驚いて振り返る。

 奇怪な存在として爆走するズークは、マレーンの街にある娼館の事を考えていた。幾ら考えたとて、リーシュが許す筈がない。

 おまけに現在は昼間である。どうせ行けないのに、意味のない思考を巡らせる懲りない男だった。

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