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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
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第146話 抗い続ける男

 魔族の戦士アザミナの猛攻を耐え続けるズーク。実力が拮抗している相手との戦闘は、装備による差が顕著に出る。

 武器の強度が高ければ高い程、より強力なスキルを使用する事が出来る。

 例えばアザミナが使う戦斧は、最上位の戦闘スキルを使用しても壊れる事は無い。

 まだアザミナが失脚する前に購入したダンジョン産の武器だ。特殊効果として、『不壊』という能力を持っている。

 ただ壊れないだけの武器だが、アザミナのような戦士が使えばそれだけで超のつく強力な武器となる。


「どうしたSランク冒険者! 勢いがないな!」


 アザミナの容赦ない攻撃は、地面を抉り衝撃を発生させる。ズークは借りている剣を壊されてしまえば、武器が無くなり終わりだ。

 実力者を相手に素手で制圧出来る程、アザミナは容易に倒せる相手ではない。


「無理矢理犯罪をさせられているアンタを、斬りたくはない!」


 もしアザミナが奴隷でなければ、犯罪行為を強要されていなければ。手合わせとして戦闘をするのはズークとて吝かではない。

 だが現状を鑑みれば、どうしてもズークとしては全力を出せない。装備差もあるとは言え、殺す気で戦えば勝利する事も可能だろう。

 高級な装備で身を固めている相手でも、絶対に倒せないほどの実力差はない。ただそれは、ズークの望む結末ではなかった。

 彼女が純粋な悪であり、校正の余地もないのなら腹も括れる。それでも美しい女性を斬るという行為は、進んでやりたい事ではない。


「ならば遠慮は不要だ。この戦いは、私の純粋な意思だ!」


 超高温の炎を纏った戦斧が、ズークに向かって振り下ろされる。対するズークは氷を纏わせる魔法剣、アブソリュートエッジで受け止める。

 刀身の冷気が、業火からズークの肉体を守る。様々なスキルを使用するアザミナの攻撃は、どれも危険なものばかり。

 豊富な魔法剣を扱えるズークでなければ、副次的な効果だけで死人が出ている。他の冒険者を下がらせた判断は、正しかったと言えるだろう。


「どうしてこんな真似を!」


「私に許された、唯一の自由だ! 貴様には悪いが、付き合って貰うぞ!」


 狂戦士、それがズークの感じたアザミナへのイメージだ。ただ戦いを求める者だけが至れる境地。

 戦闘でのみ幸せを得られる者達に送られる称号だ。事実アザミナの眼は、闘志に溢れギラギラと輝いている。

 美女から熱い視線を送られているが、流石のズークもこれは喜べない。ベッドの上でなら大歓迎だが、殺し合いの場で喜べる程に狂ってはいない。


「夜の試合じゃ満足して貰えねぇかな!?」


「……ふんっ、私を抱きたいというなら、勝ってからにするんだな!」


 当然ながらズークの軽口は通じず、アザミナの攻撃は勢いを増すばかりだ。雷撃が迸り、熱風が吹き荒れる。

 触れれば骨まで斬り裂く鋭い斬撃が、容赦なく振るわれていく。受け止めるズークは常に命懸けだ。

 脳筋に見えても、アザミナは多才な女性だ。様々な属性を切り替えて、的確な攻撃を繰り出す。全てをギリギリで防ぎながら、ズークは耐え続ける。


「な、名前ぐらい、教えてくれないかなぁ!?」


 どうにか突破口を見出そうとするズークは、思い付いた事をそのまま発する。特に意味なんてない咄嗟に出た質問だ。

 だがその一言は、名乗っていなかった事をアザミナに思い出させる。一方的にズークの事を調べて知っていただけだ。ふと手を止めたアザミナは、戦斧を担いで答える。


「アザミナだ」


「オッケー、アザミナさん。俺はズーク・オーウィングだ」


 一時的に止んだ攻撃は、ズークに少しだけ余裕を取り戻させる。リーシュはまだ戻って来ていない。瞬間的に生まれた沈黙は、すぐに失われてしまう。


「お前を殺す女の名前だ、最後の瞬間まで覚えておけ!」


「ちっ!?」


 その程度で止まらないと、ズークも分かっていた。再開される猛攻を、ズークは捌き続ける。

 どうにかして、殺さずに捕えたい。だが自分1人だけでは、どうにも厳しいとズークは理解している。

 腕や足の1本でも切り落とすという方法もある。だがこれ程に優秀であるならば、出来るだけ穏便な方法で止めたい。

 奴隷から解放して、冒険者や傭兵でもさせる方が良い。そう考えているズークは、強引に攻める事はしない。


「存外しぶといな、そんな貧弱な装備で」


「まだ死ねないんでね。アンタみたいな、まだ抱いてない美女が沢山いるからな!」


 わりと下らない理由を堂々と宣言するズークを見て、少しだけ面白い男だとアザミナは思った。

 しかし彼女が望んでいるのは容赦ない強者との死合いだ。そんな事で絆される事は無い。

 一層激しい攻撃を続けるアザミナと、ギリギリで耐え続けるズーク。


「ならばこれでどうだ!」


「くっ!?」


 身体を強化したアザミナが、今まで以上に素早い動きを見せ始める。ギリギリで回避したズークだったが、彼の頬が少し割けて血が一筋流れ落ちる。

 ろくな防具がないズークは、攻撃の余波を防ぐのが難しい。リーシュの帰還を待ちながら、ズークは抗い続ける。圧倒的な装備差に苦しめられながら。

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