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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第1章 (借金が)10億の男
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第14話 手配された斥候役

 メンヘラに刺されかけるという自業自得な展開の後、一夜明けた翌日にズークはリーシュと共に冒険者ギルドに居た。

 やや顔色の悪いズークを見て、リーシュはどうしたのか問う。

 真夜中まで続いたメンヘラのメンタルケアが原因で寝不足なのだが、そこは黙っておいて寝つきが悪かったと返す。

 そういう配慮は出来る癖に、何故この男はこうなのだろうか?


 この世界最大の謎としてカウントしても良いのかも知れな、いやそんな下らない事はどうでも良い。

 2人が待機している所に、ベテラン受付嬢のカレンが現れた。

 身長は平均的だが泣きボクロがセクシーな茶髪の美女と、金髪ポニテの高身長な美人。

 まさに両手に華と一瞬喜んだズークだったが、そう上手くは行かないのが世の常だ。


「女性が良いって言ったじゃないか」


「このアタシが、アンタに将来有望な若い女性を託すと思った?」


「そうだよ。ズークはすぐ手を出すんだから」


 ズークに靡かないまともな感性の持ち主2人から、至極当然のツッコミが入る。

 カレンが連れて来た斥候役は、ベテラン冒険者の男性だった。彼はスカーフで口元を隠している中年の男性で、その道20年以上の熟練者だ。

 平凡な茶髪は一般人に紛れ込み易くする為に染めたもので、顔の見えている部分には特徴がない。

 一度見てもあまり印象が残らない様に、意図的な誘導をしている。薄緑の外套に身を包んだ彼の名はバックス、中肉中背の40歳。

 変装や探索、索敵能力に優れたAランクの冒険者である。彼もまた特定のパーティーに所属せず、指名の依頼を受ける形で仕事をしている。

 主に国や貴族からの潜入捜査や、護衛を依頼される事が多い。


「よりにもよって、バックスのおっさんかよぉ。全然喋らねぇし退屈じゃないか」


「アンタ、何しに行くか分かっているのよね?」


「分かってるけどさ、せめて楽しく働きたいじゃん?」


 バックスは殆ど喋らない事で有名なのだが、理由は声を極力覚えられない為だ。

 潜入捜査を主として動いている関係で、声音を知られていない方が有利だ。

 もちろん元々あまり人と話したがらない性格なのもあるのだが。


 それを下らない理由でもって、ズークは同行を渋る。3人で楽しくキャンプに行くのではなく、異変が起きたダンジョンの調査が目的だ。

 当然ながらそんな申し出は却下される。ズークもバックスの実力は認めているものの、あまり相性が良い相手とは言えなかった。

 せめて楽しく会話が出来る相手なら、ズークとしては最悪男性でも構わなかった。


「良いから行くわよズーク! バックスもよろしくね」


「えぇ~」


「シャキッとしな! 結果次第じゃ追加報酬も出るんだから!」


 まだごねるSランク(笑)を2人の女性が無理やり連れだして、冒険者ギルドから出発させる。

 今回は冒険者ギルドからの依頼である為、入り口でギルドが手配した馬車が用意されていた。

 用意された馬車は、最高クラスの金属で作られた頑丈なものだ。


 マナ鉱石と呼ばれている、濃い魔力に晒され続けた鉱石が変質した特殊な石がある。

 魔力が通り易く、魔法による加工がし易いのが特徴だ。この馬車にもその性質が活かされており、魔力を通すと防御壁が展開される仕組みになっている。

 またそのわりに一度加工すると高質化し、鉱石の状態よりも遥かに頑丈な金属となる。

 かつてAランク時代にズークが使っていた剣も、このマナ鉱石から作られた高級品だった。


「送り迎え付きってね。有難い事で」


「いつまでも不貞腐れないの」


「分かってるよ。よろしく頼むぜ、バックス」


「……」


 一言も話さずバックスは会釈だけで返答する。3人が馬車に乗ると動き出し、デアゴの洞窟に向かって進んで行く。

 今回乗っている様な高額な馬車は、サスペンションやベアリングと言った技術が組み込まれている。

 その為、重い筈の金属製でも馬2頭でも十分な速度が出せる。


 この様な馬車は、遥か昔にタナカと呼ばれる男が最初に作ったというのが通説だ。

 その当時は画期的だと大層騒ぎになったらしいが、今となってはそう珍しい造りではない。

 大きく揺れる事もない快適な移動で、馬車は王都を出て草原を進んでいく。


「初心者用のダンジョン行きで、こんな馬車を用意してくれるのだからカレンさんも優しいわよね」


「どうだかなぁ? 早く行って早く帰って来いと言われている気分だが」


「そんなのズークがいつもカレンさんを呆れさせるからでしょ」


 ズークの予想もリーシュの予想も両方当たっている。リーシュとバックスについては、依頼を頼むのだから快適に過ごさせる意図がある。

 そしてズークに関しては、お前は良いから早く働いて稼げという意味だ。日頃の行いというのは、こういう所で現れるのである。

 監視役兼友人兼お守り役のリーシュと、異変が起きたダンジョンで斥候役を務めるバックス。


 そして今日も変わらずおバカなズークを乗せた馬車が、デアゴの洞窟に向かって草原を走る。

 ダンジョンと言っても初心者用で、それ程遠い距離にはない。特に道中でモンスターや盗賊等に遭遇する事もなく、快適な馬車の旅は僅かな時間で終了した。

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