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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
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第130話 新米騎士と潜入調査⑥

 王都シェントロにある阿漕な商売で有名な大商会カッティーヴォ。

 その本店へ様子見に来たメアリーとエリオットは、商会主のヴィルターと遭遇した。

 この国では珍しい短い金髪と、ネズミを思わせる顔立ちが特徴の中年男性。如何にも胡散臭い雰囲気を纏っているが、2人は敢えて普通の対応をする。

 複数の悪い噂についても知らないフリだ。美人であるメアリーへ、不躾な目線を向けられている。

 しかしそれについても一旦スルー。大陸の中央から来たのかという問いに答える。


「ええそうです。私達はローン王国から来ました」


 メアリーの返答を聞いてヴィルターは更に笑みを深くする。何か思う所があるのかと、メアリーとエリオットは注意深く反応を見ている。


「やはりそうでしたか、明るい髪色は中央に多いですからな」


「……貴方も髪色が明るいですよね?」


 エリオットは先ず無難な話題から攻めてみる。何かボロを出さないか期待して。

 平民だと思われている間なら、多少なりとも口が軽くなるだろうと。もちろん腹の内を全て話してくれるとは思っていない。

 ただメアリーがローン王国の名を出した時の反応が気になった。単に商取引があるだけかも知れない。

 もしくは阿漕な商売をしているのかも知れない。2人にはそこまで分からないが、何かがあるのなら知っておきたい。


「ええまあ、私も生まれは中央ですから。ところで君は?」


「私の弟です。姉弟でこの街を見て回っていまして」


 特に珍しくもない無難な回答。ヴィルターもこれと言って2人を怪しんではいない。ごくありきたりな雑談を交わしていく3人。

 こんな話の為に商会主がわざわざ話しかけて来たのかと、メアリーとエリオットは疑問に思う。

 ただフレンドリーな会話をして、詐欺でも働くつもりなのか。それとも他に何かあるのか。警戒されない程度に2人は腹を探りに行く。


「ここは商会主さんがいつもこうして接客を?」


 メアリーがあくまで対応の良いお店に当たったと思って居る一般人を装う。内心ではかなり怪しんでいるが。


「ええまあ、情報は色々と知っておきたいので。商人ですから」


「情報ですか、例えばどんな?」


 エリオットが少し踏み込む。この程度なら腹を探っているとは思われないだろうと。

 これぐらいならただの雑談に過ぎないのだから。すると一瞬だけヴィルターの目が輝いた様に見えた。

 決してエリオットの勘違いではない。まるで自分の狙い通りに会話が進んだと言わんばかりに。


「そうですね、例えば王都キャッシュで良い土地はないかなと。支店を出したいと思っておりましてね」


 今度はヴィルターの方が少し踏み込んで来た。支店を出したいというのが本音かどうかはまだ2人には判断出来ない。

 別段おかしな発言ではないが、本当にそれだけかという疑問も残る。ヴィルターは支店を出してどうしたいのかを語っている。

 中央へ進出する理由としては、そこまで破綻していない。ただ何故それでローン王国を選んだのか、という点が微妙に軽い。

 やや無理矢理感が少しある様に2人は感じた。ならばとメアリーは少し餌を撒いてみる事にする。


「実は私達、王都から大陸東部へ引っ越そうかと思っている所で」


「ほう、どの辺りにお住まいなのですかな?」


 メアリーは大通りに面した商業区の近くだと答えておく。もちろんそんな所に2人の家なんかない。

 彼女は騎士団の詰め所の話をしているだけだ。嘘は言っていない。2人が利用する建物だという事は本当なのだから。

 この話題になるなり、ヴィルターの食いつきが嫌に良い。


「もし家を売られるというなら、是非とも私に売っていただけないかと」


 今までにないくらいグイグイと踏み込んで来るヴィルター。これは何かあると、メアリーとエリオットは感じている。


「そんなにローン王国へ興味が?」


 今ならもう少し話してくれそうだと感じたエリオットが、もう少し立ち入った事を尋ねてみる。

 支店を出す意外にも何かあるのかと。すると気を良くしたのか、ヴィルターは更に話を広げる。


「ローン王国には優秀な調教師が多いですからね。うちもモンスターですが、管理しておりますから。意見交換などが出来たらなと」


 少し着いて来て欲しいと、ヴィルターは店の2階へと連れていく。商談に使うと思われる別室の案内された2人。

 暫く待っていると、ヴィルターが1冊の雑誌を手に戻って来る。それはケイバに関する様々な情報が書かれた専門誌だった。


「こちらの記事に王都キャッシュの牧場特集がありましてね。内容を読んで感銘を受けたのですよ」


 ヴィルターは饒舌に語りながら、2人へ物件の売買について熱く語りかけた。もしその気があるのなら、相場よりも高く買い取ると随分積極的だった。

 これまでの話に筋の通らない所は特にない。しかし拭いきれない怪しさが、メアリーとエリオットの中から消えなかった。

 暫くはこの国に滞在するからと、本契約までは至らず話し合いは終了する。もし家を売る気になったら、直接指名してくれとヴィルターは言い残して去って行った。

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