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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
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第129話 新米騎士と潜入調査⑤

 王都シェントロで情報を集めながら進むメアリーとエリオット。

 情報を持っていそうな人物や人が集まる場所を中心に回っていく。酒場や冒険者ギルド、市場や飲食店などで話題を集める。

 それらの情報の中で目立っているのは、カッティーヴォという名の大商会に関する話。

 不人気、というよりも悪評と表現する方が、いっそ正しいぐらいに評判が悪い。


 最初に聞いた花屋での話がまだマイルドなぐらいで、あくどい取引や不当な契約を結ばされた話まで出て来た。

 国を頼っても複数の貴族がバックにおり、中々摘発まではいけていないらしい。

 商売の方も国外の顧客をメインにしている為、王都で悪い噂があっても意に返していないという。

 2人は裏通りの陰で収集した情報について話し合う。


「やはりカッティーヴォという商会が調査対象でしょうか?」


 弟役の仮面を外し、エリオットは先輩騎士であるメアリーと相談する。今のところ何か悪質な行為をしそうな相手はそこが一番有力だ。


「ええ。他にも幾つか気になる相手もありますが、やはりそこからでしょうね」


 エリオットの意見と同じ判断を下したメアリーは、カッティーヴォから調査する事を決める。

 何せ問題の商会について、到底見逃せない情報が得られているからだ。


「モンスターの貸し出しと販売事業。その中にユニコーンやバイコーンも含まれる。十分怪しいと言えるでしょう」


 メアリーが目を付けた部分はそこだった。もし大陸東部での高騰を利用して利益を上げているなら、他国から奪ってでも利益に変える可能性はある。

 転移で素早く逃げてしまい、早期に売り捌けば痕跡は最低限で済む。あとは適当に捏造した取引記録を残しておけば、自分達はただ仕入れた商品を売っただけと言い張れる。


「では一旦様子見に?」


「先ずは何も知らずにやって来た、カモの観光客として接触してみましょう」


 メアリーとエリオットは髪色や外見から、大陸中央から来たとすぐ分かる。東部では淡い緑の髪や、爽やかな蒼い髪を持つ人種は居ない。

 本当に観光客を騙す悪徳商会なら、必ず反応するだろうと動き出す。 2人は再び姉弟の仮面を被り、表通りに出てカッティーヴォの運営する本店を目指す。

 華やかな大通りを進んで行くと、如何にも儲かっていそうな大きな木造建築物が見えて来た。

 予め聞いていた通り、悪趣味な成金主義を前面に押し出した建物だ。

 金で出来た魚を屋根に飾り、華美も過ぎるド派手な装飾が随所になされた壁面。高級感よりも、資金力を見せ付けようという印象が強い。


「如何にもって雰囲気だね、姉さん」


「店内では表現に注意するのよ」


 2人は何も知らない観光客を演じながら、自動化されたドアを潜る。

 儲かっている商人達が好んで採用する自動ドアは、かつて異世界人が齎した発明品だ。

 セキュリティ面に問題があるので重要な場所には採用されないが、店舗の入り口程度なら採用される事が多い。儲けているというアピールも併せて可能だ。


「いらっしゃいませ~」


 入るなり胡散臭い笑顔を浮かべた、中年の男性が出迎える。カッティーヴォの本店では、傭兵等のサービス以外にも、様々な魔道具を販売している。

 観光客向けのお土産も売っており、一旦はそちらを購入してみる予定だ。お土産コーナーに並べられている品を確認する2人。


(……なるほど、これは酷い。桁が1つ多いのでは?)


(こんな粗悪品を良くもまあ売りつけるわね)


 2人は小声で会話しながら、噂通りである事を確認する。売られている商品が、偽物やガワだけ高級に見せた品である事はすぐに看破された。

 メアリーは騎士として様々な事件と関わって来たし、エリオットは本物の高級品を知る貴族だ。

 見た目は平凡な平民を装ってはいても、中身まで平凡ではないのだ。適当に平民が買いそうな粗悪品を1つ手にし、メアリーとエリオットは店内を物色する。

 魔道具のコーナーまで来た所で、メアリーはとある品に目を付けた。


「これは……」


 それは騎士団の調査で候補に挙がっていた、モンスターの転移に使われたと思われる魔道具だった。

 少なくともこの商品では、普通に販売しているらしい。また1つ疑うべき理由が追加された。

 しかしこれだけでは状況証拠だけ、首謀者と断定するには弱い。カッティーヴォではなく、付き合いのある貴族が犯人だという可能性もある。


「おや、アナタ方は中央の方から来られたのでは?」


 細身で背の高い中年男性が2人に声を掛けて来た。どこかネズミに似た顔立ちに、少し薄くなり始めた金髪。

 如何にも成金と思われる派手な格好をしている。じゃらじゃらと宝石を身に着け、金で出来たアクセサリーを過剰なまでに見せびらかしていた。


「えっと、貴方は?」


 既に色んな人から聞いているので、この男性が誰かメアリーには見当がついている。しかしわざと知らないフリを通す。


「ああ、これは失礼美しいお嬢さん。私はヴィルター、この商会の主ですよ」


 嫌らしそうな目でメアリーを見ながら、大商会の主が調査員の2人と接触した。

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