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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第3章 ユニコーン×バイコーン×借金男
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第128話 新米騎士と潜入調査④

 プロスペリタ王国の王都シェントロは、ローン王国の王都キャッシュと変わらない発展度合いだ。

 水道は完備され沢山の魔道具があちこちで使われている。街灯が等間隔で設置されており、夜になれば自動で灯火する仕組みとなっている。

 ローン王国と違う点は、建物に使う建材だ。ここプロスペリタ王国は木製の建物が多く、街の中でも自然を感じさせる。

 ただし使用されているのは普通の木材ではない。森に生息するモンスターの代表格、木の化物であるトレントから取れた木を使用する。

 一度魔力を通すと非常に堅牢な木材となるので、普通の木で建てるよりも頑丈に仕上がる。


 その硬度は分厚い石材にも劣らず、生産コストもそう高くない。軽いというのも大きなメリットだろう。輸送コスト削減にも効果的だ。

 ただしデメリットも当然あり、火に弱いという欠点がある。その為火災が起こると全焼してしまう可能性が石材より高い。

 火災の対策を重ねるとなると、結局石材で建てた場合と費用的にはそう変わらない。

 ただし建築速度は非常に早いので、どちらを選ぶかは国によるだろう。この国は大昔から木造建築を採用しており、どこへ行っても木材の香りが漂っている。


「これが王都か……」


 平民と身分を偽って、潜入調査をしているエリオットは王都の街並みを眺めている。

 見慣れ始めた木造建築で統一された街並み。壁や屋根の色は塗装が施されてカラフルだが、どれもこれも木で出来た建物だ。


「さあ、早速街の人に聞いて回りましょう」


 先輩騎士であるメアリーがこの場を仕切り、エリオットを伴ってシェントロの街を歩き進めていく。

 流石に王都だけあって、他のどの街よりも歩いている住人達が多い。2人の様に旅行者らしい異国風の人物もかなり見られる。

 恐らくは国王の誕生祭が行われるからだろう。街の活気は非常に高く、祭りの前の期待と盛り上がりが感じられた。

 街の様子を察したメアリーが、小声でエリオットへと囁く。


「これだけお祭りムードなら、口が軽くなる人も多いでしょう」


「ええ、情報が集め易そうです」


 2人の目的はあくまで情報収集だ。建前通りに観光をするつもりはない。あくまで旅行を楽しんでいる様には装うが。

 王都の街並みを眺めている風に見せつつ、その実周囲の様子を注視している。噂が好きそうな人物や、昼間から酒を飲んでいる者。

 そして明らかに素人ではない動きをしている怪しい存在など。情報源になりそうな人物をしっかりと探っている2人。


「姉さん、あそこの花屋なんてどうかな?」


「どれどれ」


 エリオットが指差す先には、恰幅の良い中年の女性が居る。客と話し込んでおり、会話するのが好きそうな明るい見た目をしている。

 この国では珍しくない黒い髪と、同じ色をした瞳。典型的なプロスペリタ王国の住民だ。

 話し掛けてみる相手としては申し分なさそうに見える。2人は目的の花屋へと向かい、客が離れたのを見て店主らしき女性にメアリーが声を掛ける。


「こんにちは、ここのオススメは何ですか?」


「あらいらっしゃい! ウチのオススメはこれ、ムゲットの花よ!」


 女性が見せてくれたのは、茎から小さな白い花が複数垂れ下がった植物。ローン王国では見られない珍しい花だった。


「へぇ~珍しい見た目ですね」


「でしょう! 見た所貴方達、中央の人だろうからさ。知らないだろうと思って」


 実のところメアリーは知っていた。薬物関連の知識に明るい彼女は、様々な植物にも詳しい。

 このムゲットの花も知っていた。しかし会話をスムーズに進める為、わざと知らないフリをした。


「ええそうなんですよ。私は弟とローン王国から来ました」


「どうも、初めまして」


 エリオットが紳士的な態度で女性に挨拶をする。彼は容姿に優れた若い男性で、女性からの受けはかなり良い。

 花屋の女性からの印象は当然良く、初対面ながら早くもメアリー達のペースだ。エリオットが選ばれた理由には、こういう効果も期待されての人選だ。


「あらローン王国から!? ローン王国は私の姪っ子が嫁いだ先なのよ~」


「まあ、そうなのですね! どちらにお住まいで?」


 これは都合が良いとメアリーが女性と会話を進める。彼女の姪が嫁いだ土地の話で盛り上がり、花屋の女性は随分とテンションが高くなっている。

 情報が集めたい2人にとって非常に好都合な状況だ。何度も使っている東部へ引っ越しを考えている話も伝えた。オススメの店や最近の噂についても質問する。


「オススメねぇ……まあ大体どこも良い店だけど……あっ!」


 何か思い当たったかの様に、女性は少し大きな声を上げた。すると今度は2人を近くまで寄る様に手で招く。どうやらあまり大きな声で言えない話題らしい。


「カッティーヴォって大商会がるのだけど、あそこだけは近付かない方が良いわ。観光客からは平気でぼったくるし、裏では怪しい商売をしているって噂よ。悪い噂ばかりある胡散臭い商会だから注意してね」


 まさにそういう情報が聞きたかったメアリーとエリオットにとって、いきなり当たりを引いたらしい。調査対象の1つとして2人はこの情報をしっかりと記憶した。

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